第30話「地獄の2年を経て手に入れたスローライフ」
「う~ん、相手は大所帯で尚且つ戦闘能力も有している家柄と言うか、組織みたいなものですからね、何かしらの正当な理由がないと」
「もう一つ、マアニャは俺と違って馬鹿じゃない。ミイニャが言うように、はいそうですか。と婚姻なんて結ばないだろ。考えがあるのかもしれない」
「でもあのお姉ちゃんがそれを話してくれるとは思えませんけど」
「グランドの話だけで判断して、成り行きを見守った場合、または行動した場合……マアニャはザビア家の長男と婚姻する。これが見守った場合だ……で、何かした場合、退けられ長男と婚姻した挙句に、機嫌を損ねミラ家に被害が出てしまう。家を出たとはいえ、ここにもミラ家の女の子がいるわけだしな。ミイニャまで巻き込まれるかもしれない。今回は上手く退けても、そんな大人数相手じゃこの先身が持たないんじゃないのか……つまり何かやるんなら、理由がいるだろ」
「お姉ちゃんが考えを話してくれるとしたら……」
ちらりとまたも俺に視線が……
「おいおい、双子妹と仮団長さんだろ。俺より聞き出しやすいと思うが……」
「生憎だが、僕はお嬢さんに失礼なことは出来ないし、必要なことを聞けるところまで持って行ける自信がない」
それじゃあまるで俺がマアニャに失礼なことをしているみたいに聞こえるぞ!
「お姉ちゃんは私には絶対に話してくれません。あの女のことで私が責任を感じていることを知っていますから。自分のことで私には心配をかけさせまいとしているのはわかります」
「お前ら……俺はただの召使いだぞ」
「実際そうですが、ただのではないことを知っています」
「僕はこの目でその動き、そして捌きまでも見せてもらったよ」
「……あんまり信用しないでほしいな。このスローライフは楽しいのに、別れを告げないといけない気がしてかなり残念だ……マアニャには話をしてみるし、バートンさんからも事情を知らないか聞いてはみるよ」
「大丈夫です。ザビア家の件を片付けたら、私とスローライフを楽しみましょう」
ミイニャは俺の手をぎゅっと握りしめる。
「いや、もうすでに楽しんでるけど、俺は片付いたらこのままでいられないような気がして心配してるんだよ」
☆ ★ ☆
ミイニャとの夕食(豚丼と味噌汁にサラダ)を終え、俺は暗くなった夜道を時たまため息交じりに歩きながら、ミラ家のお邸に向かう。
月が綺麗だ。風も気持ちいい。平和だなあ……またミイニャと夜通し話をするのも楽しいだろ。クレアでもいい。お邸に泊まろうか……
マアニャをからかい、クレアと召使い業務、ミイニャとはカフェ。俺の地獄の2年からの手に入れた幸せスローライフ。
「闇の教団に魔王……邪魔だな、俺の幸せをすでに揺るがしてきてやがる……そんなのがいるから騎士団なんて作らないといけないんだろ……はあ、このままにしておくともっと大変な事態になりそうだしな……話を聞く限りザビア家とか最悪そうだし、もう知らんぜと投げ出したい。そもそも明後日に関しては、あのツンツンが相談しないのが悪いんじゃねえか。婚約するのかどうか知らんが、焦るにもほどがある。まだ10代……あれ、あいつ何歳なんだろ?」
見た目、俺とあまり変わらない気がするけどな。
ぶつぶつと考えながら歩を進めていたら、あっという間に邸に到着。
俺はあの二人の召使いだし、二人の頼みなら出来ることなら叶えてあげたいし、命は絶対だし、ベストは尽くすけど。




