第27話「プロポーズを待ってます」
クレアがホットケーキを美味しそうに食べている間、俺は2ヶ月前このアイルコットンに飛ばされてきたことを思い出していた。
クレアとは仲良くなったし、ミイニャとはビックリするくらい親しい関係となり、マアニャは……ようやくデレ始めて来てくれたか……
このまま時が過ぎて行けば、それはそれで幸せだと思うし、もし分岐しそうなとき、それを選択することも出来るかもしれない……
闇の教団っていう悪の組織のようなものと魔王なんて存在がいなければな……
「ごちそうさま。美味しかったわ」
クレアが食べ終わってから少しして、マアニャは立ち上がる。
「ありがとうお姉ちゃん、お店に来てくれて」
「ミイニャが単体でやっているときは来ようとも思わなかったけど」
「むっ」
「いや、酷かったからな。カフェぼったくり」
「グランデです。名前を間違わないでください」
マアニャはクレアの分もきちんと支払いを済ませて、
「じゃあまた明日ね、召使い」
「おうよ。何か困ったことがあればいつでも俺に言うといい。絶対に助けてあげることを約束する」
「当たり前でしょ。あたしの召使いなんだから!」
完全なるつんつんに戻ったマアニャは俺に背を向け外に出る。
「優君、またね。夜とか遊びに来てもいいからね」
クレアのその誘いは飛び上がるほど嬉しいね。
「うん」
結構長居していた二人が店を後にし、また俺たちは二人きりとなった。
冷静に考えてみると、マアニャとミイニャ限定の召使いは楽しく、全然ブラックでもない、カフェは5時で閉店なのだ。
「お姉ちゃんとクレアが来てくれたのがそんなに嬉しいですか!」
ミイニャは俺に横目視線を向け、
「明らかに私と二人きりでいるよりも楽しそうでした」
「みんな一緒の方が楽しい……ていうのとはちょっと違うかな。俺、2年間あのお姉さんと二人きりだったからな。常に気を張ってないと殺されると思ったし……温もり、優しさに飢えがあるというかなんというか、今、滅茶苦茶幸せなんだよ。この瞬間も」
「2年間のことを話題にするとはズルいです。同情してしまうじゃないですか……それにつけ足して、私といると幸せだと言ってくれるのは嬉しいです」
「ミイニャは優しいからな」
「なんですかそれ……聞いてはイケないことを聞いてもいいですか?」
「それが命令で、真実で答えなきゃいけないって言うなら、俺は本音を言うよ」
「……やっぱりいいです」
グラスやホットケーキに使った食器を持って流しへ。一枚一枚丁寧に洗いながら、
「今日、マアニャは会合を開いた。相手、誰だかわかるか?」
「いきなり真面目に……カフェにいる私がわかるわけがないじゃないですか! お姉ちゃんは1人で抱え込み、背負い込むタイプです」
「ですよね、やっぱり……」
「随分と気に入られているのが、態度や話し方でわかりました。わざわざ優斗君に会いに来るなんてビックリです。それからクレアもちゃんとたぶらかしていたことも……」
「誤解しないでほしいのだが、クレアとは最初から結構仲良しなんだ。マアニャはまあよくわかんないけど」
「私が一番想っています! そう思いますよね?」
ミイニャは果物ナイフをさっとこちらへ向ける。
刃物を人に向かないでくれ! 俺は敵ではない。
「そうなんでしょうか?」
「聞こえません!」
ミイニャ、ある意味マアニャより怖えぇからな。
「その言葉にはありがとうございますと答えるべきかな」
「……いえ、プロポーズを待ってます。1秒でも、1時間でも、1日でも、1週間でも、1カ月でも、1年でも、待っています」
1秒はもう過ぎましたぜ、ミイニャ様……




