第23話「吹き出さないように注意してください」
【真っ黒握りこぶし。君はこの拳を食べられるか?】
【限界への真っ赤な試練。試練を終えたとき、君は倒れる!】
【顔色真っ青、不細工にしわを寄せるんだ。これを飲み切れば、君は若返れるはず!】
それぞれ、超ド下手な絵が添えられている。
まず真っ黒握りこぶし黒い岩みたい……
次に真っ赤な試練。グラスが沸々と煮えてるように書きたかったのはわかるが……これじゃあ完全に血を連想させる。
顔色真っ青も……グラスだけはわかる。かろうじて……
「……なんなんだ、これは……」
「わかりませんか? 馬鹿ですね。握りこぶしは黒ハンバーグ超巨大サイズ。真っ赤な試練は、タバスコ5本と唐辛子をソーダに入れます。隠し味でバナナを。不細工にしわをは、酢にレモンをまるごと絞り……」
「わかった、もういい……他の品は? 紅茶とかコーヒーとか」
「ありますけど、出たことがありません」
当たり前ですとその顔はおっしゃっている。
「なぜ? ここカフェだろ」
「そのメニューをちゃんと見てください」
「……」
俺としたことが読み忘れたか……
以上のいずれかを完食か飲み切った方のみ、ドリンクを注文できます!
……言葉にならないとはこのことだ……
「ちなみにですが、その3品は開店以来いまだ調理すらしたことがありません」
と、涼しい顔で美人は衝撃の事実を告げた。
「はっ……あとの2つはともかく、黒ハンバーグは注文されるだろ」
「いえ、あまりの大きさに焼けません!」
その返答にしばらくしてから吹き出しそうになってしまった。どんだけデカいんだよ!
「……」
ここはカフェじゃない。
「ユニークなお店でしょう」
物凄い可愛らしい笑顔をミイニャは作る。
ユニークとかのレベルじゃない。完全にギャグだ、この店。
「黒ハンバーグは出せないなら、メニューではない。あとの2つはなぜ注文されない? 興味本位な人が頼んだりは……」
「何度か頼まれたことはありますが、そのたびに確認するんです。よいしょっと、重いですね……こちらの大きさですけどと……」
どこで手に入れたのかと思うほど、それはそれは馬鹿デカいジョッキだった。
「注文されるわけがない……まてよ、けど今日3人お客が来たって言っただろ。何を頼んだんだよ?」
「裏メニューがあるんですよ」
可愛らしく人差し指を立てミイニャは言う。
「なんだよ、そういうのは先に言ってくれよな……」
ファイルを裏返してみると……
なお3品がどうしても頼みずらいというお客様がいたら、
【お水があります】
一瞬思考が停止する。やはりこの店はカフェではない。




