第22話「飛びぬけているうんのよさ」
「あなたの召使いにもなったらしいので、お店の手伝いとか買い出しとか任せてくれたまえ」
「はあ!」
「いや、だから召使いに……」
「何回も言わなくても聞こえています。なんでお姉ちゃんはあなたを召使いに?」
「俺がそうしてほしいと言ったからかな」
「ちっ、余計なことを……」
舌打ちしたぞ、この子……やべえ、マアニャの方が可愛いくらいで、この子の召使いは無理かもしれない……あのお姉さんに散々心を傷つけられたのを覚えていて、それをまた体験することになると、さすがにメンタルが持ちそうにない。
「何ができるんですか?」
「なんでもやるつもりです……あの、今日のお客さんの人数を聞いても?」
ミイニャはふっと口元を緩め、
「三人です!」
自慢げに右手を出して、人、中、薬指を立てて答えた。なんか可愛いなと思ってしまう。
「少ない……」
「はっ、何言ってるんですか? 3人ですよ。3人。普段は来ても1人もしくは2人なのに」
「それじゃあ完全赤字経営じゃないか」
「そんなことはありませんが……でもそれでも、いいんですよ。わたしは温泉を掘り当てているので、お金に困っているわけではないんですから」
温泉掘り当て……この子のうんのよさは飛びぬけているのでは。
「ミラ家の浴室にも近々繋げる予定です」
「それはいいとして、せっかくカフェをやっているなら、少しはにぎわっていた方がいいだろ?」
「いえ、人ごみは苦手なので!」
根本的に商売は向いてねえ!
「せっかく俺が手伝うのに、そんなに暇だと賃金が貰えない」
「あげません! 召使いは必要ないのでお姉ちゃんにそう言います」
「……」
そう、わかったわ。じゃああたしも要らないわね……とかあいつは言いそうだ。
「待って、待ってくれ! 俺はとりあえずノーマニーだ。いや、マアニャに少しもらったけど……ここになぜ来たのか理由を知るまでは離れたくないし、あのクレアって子ともう少し話をしたい」
「……クレアをたぶらかしているんですか? 100万年早いです」
「いや、たぶらかしてないけど。ちゃんと話をしてくれるから……」
「それだと私が話を聞かないみたいじゃないですか。遠回りに人となりを評価するのですか。低く見られているとは心外です……わかりました。では、半日様子を見てから判断することにします」
あれ、もしかして妹の方も優しいのか?
「それじゃあ役に立つために、抜本的な改革を行うぜ。人が来ないのには理由が必ずある。こんなに綺麗で切り盛りしているのは超美人ときているのに、人が集まらないとなると……メニューを見せてもらうぜ」
俺はカウンターに近づいて、ファイルされた1枚に目を走らせる。




