第2話「カフェ2号店を作るために」
俺を鍛えてくれたお姉さんは強く、そして綺麗だったことまでは思い出していた。
栗毛色の長い髪は甘い匂いがしたのも思い出したし、あの人スパルタだったけど、いい人なのもわかった。
不満があるとすれば、理由を言わずに俺をアイルコットンへ飛ばしたことくらいだな。今となっては……
「その昔、闇の教団に戦いを挑んだ人たちがいた」
「えっ!」
カグヤ嬢の言葉に思わず声を上げる。
「じゃあまさか、あの人……いや、人たちって言ったよね?」
「そう。優斗、君はその人たちとも少なからず繋がりがある」
「それって、マアニャやミイニャのご両親が呪いにかかっていることにも密接に関わってくるんじゃ……」
「その通りだ。大魔導士ソニア、マリ家のお二人、それにミラ家……みんなあの人のパーティーメンバーだ」
「でも闇の教団はまだ存続してるじゃないか! 俺の師匠でも勝てなかったってこと! そんなはずない!」
「私もそこのところは詳しくは知らない。ただ以後、君の師匠は公には姿を消し、大魔導士ソニアも同様だな」
「ちょっと待ってよ。それがもし、ターゲット、危険分子にされるって理由でそうしたなら……なんで? ……まさかマアニャたちがいたからか!」
「そう考えるのが、筋が通りそうね。そして、彼女はその後君を鍛えた。その選定方法は知らない。だけど、君が闇の教団との戦いの切り札になるからだ。いや、君たちと変更しようか」
「切り札も何もぶっ潰すこと、ぶっ潰さなければならないことは決定事項。で、あの人どこにいるの?」
「こちらから会いに行く必要はない。その時には向こうから来るさ。優斗ならその辺わかっているだろう」
「……敷かれたレールの上を走っている感じでムカつく!」
「あの人が持っているのはそういうスキル何だと思う。優斗、アイルコットンからここまでと師匠との二年間で不幸を感じたことはある?」
「最初、スキルが進化しないときは、何で俺だけとは思ったけど……あのお姉さんにはほんとに感謝している。俺がこうしていられるのは、師匠のおかげだし。今は守んなきゃならない人、大切な人たちのために闇の教団を壊滅させたい」
「その為に信頼できる戦力は必要。そして自然と集まってきている。焦らなくていい、今は気分転換と思って町づくりをしなさい」
初めて命令口調を使われた気がする。
「わかってる」
「じゃあ私はクロガネとパトロールに出かけてくる」
「それじゃあ俺も一緒に」
「ダメです。優斗君はカフェ2号店の内装を考えるという使命があるんですから!」
ミイニャが話を聞いていたようで、俺の腕を引っ張っていく。
まあ、二人の邪魔をするつもりはない。社交辞令で言っただけだし。クロガネはありがとなと俺に声を掛け二人仲良くパトロールへと出かけた。
「では、優斗君。カフェ『グランデ』の内装どのようにしたいですか?」
「基本的には前と同じ感じがいい」
「なるほど。さすがです。私と同意見」
どうやらミイニャはジャンケンでマアニャとクレアに勝ったらしい。
悔しがっている二人とVサインを作って勝ちの余韻に浸っているミイニャ。
「優斗、あたしとはどんなお店がやりたい?」
「優君、クレアとは?」
おっ、おう、まさか俺は3店舗で働かないといけないのか? 過労死しますよ。ただでさえ闇協討伐という任務があるのに。
「カフェをみんなでやるんじゃだめなの?」
「それだとミイニャが勝ち誇るじゃない」
「じゃあ、カフェと書店とかにするとかは? そっちをマアニャとクレアが担当するみたいなかんじだけど」
「なるほど。それなら二人を常に監視できます」
クレアの言葉を聞いて、マアニャは力強く頷いた。
「あのう、盛り上がっているところ悪いんだけど、持ち家建造は特に規制とか申請、ここではいらないんだけど、営業する店舗の場合申請しないといけないからね」
ケティの言葉にマアニャたち3人は顔を見合わせ、
「それって審査みたいなものがあるということですか?」
「そう。この土地は優斗君たちが自由に作りたいものを作っていいんだけど、カグヤさんとあたしたちでナルブルタンの町づくりしながら、治安とかも考慮しながら開発していったの。全部のお店このメンバーでカバーできないから。オーナー制度っていうのを作って、一応の責任を持たせるのと、不祥事起こさせないように保険てきなことね。カフェとかなら営業目的さえはっきりしていれば審査通らないわけない。カジノとかお酒飲める場所は、それなりの審査基準があるかな」
☆ ★ ☆
家の骨組みを作った後、ケティと一緒にナルブルタンに戻り、建築物審査基準場所という役所のようなところへ出向いた。
すげえな、ナルブルタン。ただ作らすだけじゃなくあとで揉め事にならないように、色々取り決めてるんだな。
ミイニャが申請用紙に必要事項を記入し、窓口のお姉さんのところへ持っていく。
「カフェ(喫茶)営業ですね……営業時間が11時から17時になっていますけど、これは間違いありませんか?」
「間違いありません!」
「……席数は30席。従業員、お二人ですか!」
「はいっ。後ろの乳でかコンビがおそらく邪魔してくるので雑用させると思います」
「こらっ。変な言い方しないでよ!」
「クレアだって……優君と相性のいいお店を」
「営業目的の幸せのためとは?」
「はいっ。働く優斗君と私が幸せになるためにカフェ二号店が必要ということです」
お姉さんはそれを聞いて固まった後、
「申し訳ありませんが、この申請は却下させていただきます」
「……」
ぱちぱちと無言でミイニャは瞬きを繰り返した。
なんだよ、カフェでも審査通るの難しいのか!
「ここにもいましたか、私の幸せを妬む輩が!」
ぶつぶつとつぶやくミイニャさんは暗黒のオーラを纏っているような気がしました……




