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第36話「魔術の大会マアニャVSケティ②」

 ケティの栗毛色の髪の中から小さな子猫みたいなのが出てきた。

 それは、大きなあくびをして、マアニャとベリに視線を向ける。


(ちっさいし、可愛い)


「この子があたしの使い魔です。普段は基本寝ていますが、あたしが本気で戦う時のみ目を覚ましてくれます」


「ふぁああ、お腹空いたぞ。ご飯くれぇ」

 子猫は自分の体を舐めまわす。


「この試合が終わったら、たらふく食べさせてあげるから」


「事後か。まったくめんどくさい……んっ、ベリ様。だよね、あれ?」


「知ってるの?」


「知っている。戦う……ベリ様と……なぜ?」


「あっ~、話すと少しややこしくなるから、魔術の大会中でマアニャちゃんがベリちゃんの主」


「ベリ様、主を見つけたんですね!」


「あっ、こら。今は敵なんだから、親しくするのは禁止」



「ベリちゃん、あの小さい子知ってるの?」


「はい。彼女はエリン。ベリと同じで、主の力を増幅させるタイプの使い魔です。少し面倒を見ていたことがあります。会うのは本当に久しぶりですけど。ママ、油断しないように、構えてください」


「力を温存していて勝てそう?」


「いえ、先を考えているとやられます。でも、なるべくベリの魔法力は温存しておきたいです。この後回復できる魔法力のみ使うとして1発だけ。やってみましょう、ママ」


「ちょっと待って。まだこっちの4発使ってないの。あの使い魔ちゃんが力を使ったときどれほどの物か見極める」


 マアニャは右手の手首を左手で抑え、ケティに狙いを定める。


「癒し増幅のお姉ちゃん+第三の炎! いっけえ!」


 人差し指と薬指の先に集めていた炎を放つ。


「これ、裏魔法じゃないか! 彼女、自力で門を開けたのか?」


「そんなことより、エリンちゃんストロングシールド!」


 ケティは両手を合わせリングに両手を置く。分厚い、分厚い強固な砂いや、土の盾が完成し、その表面に彼女の使い魔の顔が浮かび上がる。


 マアニャが放った第三の炎は壁に衝突し、貫くどころか砂地獄に飲み込まれたように消え砂の壁はびくともしない。


「硬い。さすがケティの本気ね」


「マアニャちゃん、攻撃もできるけど、こっちはとりあえず最強の防御だよ。最強の攻撃でこの防御を破れなかったら、マアニャちゃんに勝つ術はないよ。でももし敗れたなら、少なくとも攻撃力はあたしと同レベル以上ってことになる」


 マアニャは人差し指と親指の炎を消す。


「わかりやすいわね。よおし、ベリちゃんやるよ」


「はい。ママなら絶対破れます。パパがいつも力を貸してくれます。ベリも微力ですがそれに上乗せします」


「うんっ。ありがとう」


 マアニャの頬が赤くなった気がした。赤毛の女の子は静かに目を閉じ、両の手をくっつけた後、その手を砂の壁に、正確にはその先にいるケティに標準を合わせたようだ。


 ベリはマアニャの伸ばした両の手に自分の小さな手(肉球)をくっつける。


「今の全力、全開で行くよ~!」


 見ているこっちにまでマアニャの炎の熱気が伝わってきた。顔が熱る感じで熱い。けどどこか心地いい温かさだ。


 炎の塊が、火力を増していく。


「この想い、届けえ! マラザボムゾ!」


 この前タロムコロムの病院で見たときより大きさがデカい、不死鳥の形を作るその魔法はより生きているように感じるほどの姿だった。


 マラザボムゾが分厚い、分厚い壁、いや、砂を抉っていく。少しずつ姿が小さくなりながらもどんどん砂を押し込むように、その炎が消える直前に壁に小さな穴が開いた。


 その穴を待っていたかのように、リング状で燃えていた炎が再度塊って小さな不死鳥の姿になり、その穴目掛けてケティとその使い魔に向かっていく。


 2人に直撃する寸前に、マアニャたちが放ったそれは角度を変え、はるか頭上でふぅと消えた。


「はあ、出来たわ。マラザボムゾの改良版! コツもつかんだ。次はもっと行けるわ。ケティ、ありがとう」


「……いいえ。う~ん、愛されている女の子の力はおそるべしだよ。こんなところかな……マアニャちゃん、一つだけ質問、まだ何か閃きや思い付きがあったりする?」


「もちろん」

 マアニャは右手を広げ、指先に炎を点灯させる。


「恐ろしいな、まったく。カグヤさんはほんと強いからね。心してかかって……負けました」


 ケティは右手を上げて、潔く負けを宣言した。


「ちょっと待ってよ! なに降参してるの! まだ全力出してないでしょ。もっともっと成長できそうだったのに」


「全力は出したよ。カグヤさん以外にあのシールド破られたことないし。マアニャさんにはあとは口頭でのアドバイスで十分かな」


 ケティはマアニャを手招きし、ごにょごにょと何かを伝え、それが終わるとにっと二人とも笑顔になり離れる。


「いい試合を期待してるからね」


 マアニャは今回もふふふ~ん。と超ご機嫌にリングを下りてきて、ぎゅ~と俺にハグする。


「優斗、ちゃんとあたしだけを見てた?」


「目をそらさずにな。門を開けたってどういう意味?」


「ああ、それはね。カグヤ嬢と戦うのに必要なこと」


 甘えるようにぎゅっと抱きしめられる。


 ミイニャとクレアがぷるぷると震え、


「お姉ちゃん、次、私が戦うんだから邪魔どいて!」


 ミイニャは強引にマアニャを引きはがし、がばっと俺の腰に手を回す。


「絶対に負けられません。お姉ちゃんがバカみたいに本能丸出しになりつつありますから、観戦してるときも優斗君気を付けてください」


「ん、おお……」


「クレアにもですよ! 私の集中力を削がないように」


「よく言うわ。クレアもミイニャも優斗と手つなぎしながら見てたくせに!」


「ちゃんと応援する。しっかりな」


「……あのっ、例のセリフを私にも言ってください」


 顔を上げ、俺を見上げるミイニャ。


「えっと……ミイニャが怪我すると、俺が困るからな。重度のケガはしないようにな」


「はいっ!」


 いいお返事をしてミイニャは俺から離れ、両手をぐるん、ぐるん回す。


「なんであんたは言っちゃうのよ!」

「優君、クレアにも。もう事後でもなんでもいいから!」


 マアニャとクレアに詰め寄られ、揺さぶられる。


「ミイニャちゃん、しっかりね」


 アルカは我関せずというふうな感じで応援オンリーだ。


「勝ってきます!」


 こっちを振り返り、力強く頷きミイニャはリングへと上がった。

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