第32話「剣技の大会決勝戦(優斗VSクロガネ)」
リングを下りることなく、俺はクロガネが上がってくるのを待った。
剣士との戦いで負けは許されないし、奴があのお姉さん以上とは思えない。
勝って、あの三人になんでも言うことを聞いてもらう。この上ないご褒美だ。
「いいわね、優斗、絶対勝つのよ!」
「ふっ、優斗君なら勝つに決まってるじゃないですか」
「優君、ファイト~」
「お兄ちゃん、頑張れ」
気持ちを落ち着かせて、上がってきたクロガネを見据える。
「お~、お~,羨ましいね。可愛い子たちからの応援を多数受けられるなんて」
こいつ、ケティとコウコって子と上がってくる前に何か話していたな。
「セシスも幼女剣士も俺を応援してくれてるみたいだ。人気者はつらいぜ」
「声援は量より質だぜ。1人が応援してくれてればそれでいいんだよ」
クロガネはカグヤ嬢の方を見る。なるほど、そういうことか。
「遠慮はしないぞ。お前は女の子じゃないからな」
「そっちこそ、集中しろよ」
クロガネは剣の柄に手をかける。
さて、まずはこいつの力をこの目で確かめないと。
「決勝戦、始めてください」
(こっちから行ってやる)
左右の剣を抜きながら、間合いを詰め、動きを確認しながら左右の薙ぎ払いと振り下ろしで斬りかかる。
左の薙ぎ払いを剣で止め、右の振り下ろしは触れる瞬間に数センチ動いて避けられた。
「やっぱりな」
俺は予想していたその動きを目の当たりにし感想を発する。
「なにがやっぱりなんだよ?」
「お前、雷を身に纏えるな。最初に俺が放った剣圧に直前で反応したのもクレアの攻撃をかわしたのもその力を発動してのこと。神経に雷を電気みたいに流して、反応速度を急激に高めている。そいつが高速反応の正体だろ」
「ひゅう。すげえ分析力だ。で、どうするこの反応を超えられるか?」
「もちろん。行くぜ!」
左右の高速連撃を開始する。
キン、キンッ、キーンと剣同士がぶつかり、火花が散る。
もう一段階か!
「おらっ!」
踏み込みを強くし、剣を粉砕する勢いでさらに剣速を上げていく。
(込めろ! 想いを)
クロガネの剣を持ち上げ、体ごと浮かせ、そこを逃さずに80パーセントの一撃をお見舞いしてやった。
リング上を勢いよく加速しながら、クロガネの体は場外に向かっていく。
「こんなもんかよ?」
勢いをリングに剣を差して落ちる寸前で踏みとどまったクロガネは嬉しそうに俺を見る。
「こっちのセリフだけどな。全力で来いよ! 俺はどの剣士よりもつええぞ、たぶん」
「嬉しいね」
剣にバチバチと雷を纏いやがったか。なら、
(ファイラァ)
「こっちも魔法剣だ」
高速なスピードですでに俺に向かって剣が振り下ろされていた。
(雷で速度もアップしやがった)
二刀流でクロスしてその一撃を防ぐ。それだけで剣圧がとどろき、俺の両足がリングにめり込み、両手をその剣圧で斬られた。
「すげえ一撃だ」
「当然だ。技だからな一応」
小さなモーションでもう一回振りかぶられる。
(ティーゼ、全開で力を貸してくれ!)
魔法剣を解いて、妖精の力を纏った力で今度は止めてみた。
「さっきの子も使っていた力か。おもしれえ」
右足を引いた。
(蹴りか!)
剣でその蹴りを止めるが、すぐ目の前に左拳が握られていた。もろに左ストレートを顔面に受けた。
俺は回転しながらリング上を転がり、何とか体勢を整え着地した。
「いってえ……」
口の中を切った。こんなことあのお姉さんと訓練してた以来だ。
こいつほんとに戦い慣れしてやがる。
「どうしたよ、誰よりもつええ剣士」
「ふう」
どうも調子が出ないな。ぶら下がっている4人の可愛い表情のぬいぐるみを見る。
「ふっ、負けられないよな。これ斬られるわけにはいかないしな……よしっ」
左右の血の付いた手を見て、さらに気合を入れる。
「見てろよ、クレア!」
妖精の力を纏った左足でリングを蹴り、大振り気味に左手で剣を振り下ろす。
「動きが鈍ってるぞ」
剣を止める前に奴はそんなことを言った。
「これでいいんだよ!」
案の定、その振り下ろしは防がれたが、そこからさらに押し込む。
「クレアには教えてるだけじゃなくて俺も教わってるんだよ!」
剣が折れると思ったのか、クロガネは足を引く。
(逃がすかよ!)
「みぎっい!」
奴のわき腹に手加減なしの一撃をかましてやり、さっき左の拳を食らったので左足で顔面に蹴りを浴びせてやった。
「手ごたえあり!」
「おええ、おえ!」
(おう、おう、痛かろう。なんせ俺が師匠に食らったときは3日間ご飯が食べられなかったからな。飢えた獣モード……敵は必ず狩るイメージだったか)
「降参しろよ」
「はあ、はあ……馬鹿言え。まだ奥の手を出してないんだぜ」
(はったりに聞こえない)
クロガネはわき腹を抑えながら、俺から距離を取った。
「タフだなあ」
「戦術、剣圧、剣速、勝負勘、これほどかよ。すげえ奴がいたもんだ。でも勝つのは俺だ」
あくまで降参しないつもりか。
奥の手っていうのは奴の必殺技……
(もちろん力をフルパワーで出せば粉砕出来るけど、あれは加減できないからな。距離を取ってくれているし、あれやるか!)
左右の剣の持ち手を逆手持ちに変えて、右手を前に左手を後ろに構える。
「なんだよ、そっちもまだ隠してるのかよ。かわった構えをするな」
「まだまだ隠してるっていうのが正しい。いい腕だ。滅茶苦茶強かった」
「おいおい、終わってねえぞ、まだ」
「負けられないんだ、絶対に。色々背負ってるんでね。まあ根底にあるのは自分の幸せっていう自己中なものだけどな」
クロガネはパチバチと電流を流しているみたいに体からそれが漏れ出ている。
やがて剣の先を俺に向け、突きの姿勢で構えた。剣を覆ったバチバチ少しでも体に触れた感電しそうだな。
(さすがにまとめに食らったら、やばいな……かといってガードはしないけど。攻撃は最大の防御。そのための2本だしな)
「行くぜ!」
「来い!」
全身の雷を剣先に集中して、俺の急所目掛けて突っ込んでくる。
(体を左に!)
危険感知で勝手に細胞が反応し、体に触れる前に右の剣で奴の突き方向と威力を吸収しいなしながら、逆手に持った左の剣で真横にフルスイングする。
「逆手二刀流、ソードストライク!」
俺の剣はクロガネのみぞおちにめり込み、その体ごと弾き飛ばした。
リングに何度か体をこすりつけながら、場外に出て体を壁に激突してクロガネは止まる。
「ふう」
俺は逆手から持ち手を直し、左右の鞘に剣を戻す。
キンッ!
まあ優秀な僧侶がいるみたいだし、あのくらいなら大丈夫だろ。
「クロガネさん場外により、優勝は越谷優斗君です」
見ていた人の歓声が耳に届き少し照れ臭い。
「優君!」
真っ先にリングに上がってきてクレアが俺に抱き着いてくる。むにゅむにゅが……
「さすが優君先生、ちゃんと弟子の仇を取ってくれるなんて」
「可愛い女の子のお願いは聞く主義だからな」
「優勝おめでとう、優斗」
俺の右手を思いっきり引っ張り、マアニャはクレアと俺を引き離し、がしっと俺を捕まえる。
「さすが優斗君です」
ミイニャの方は背中の方から抱きしめてくる。
「2人とも頑張れよ。俺は信じてるからな」
「うんっ。あたしを見ててね」
「はいっ。私だけを見ててください」
やれやれ……ものすごく心配だ。




