第31話「剣技の大会(優斗の準決勝)」
リングを下りると、マアニャたちが駆け寄ってくる。
「お姫様抱っこ! ずるいわよ、クレア」
「くっう、優斗君にそれをしてもらえる権利があるのは私だけなのに」
「お二人とも負けてしまいました。すいません……あの人を倒せれば、マアニャさんとミイニャさんも気力がさらに湧くと思ったんですけど」
「心配無用よ。優斗の応援のみでカグヤを倒すし」
「優斗君の応援は何物にも代えがたいですから」
「むっ、それだと応援してもらったクレアの想いが欠けていたように聞こえます」
クレアは見せびらかすように俺の首に手を回す。
「クレア!」
「それ以上は私の忍耐力が……」
「優君、ありがとう。おろして」
クレアは自らの足で立って、ふうと息を吐く。ミイニャが手の傷を治そうとするが、
「あっ、待ってくれ」
俺はそれを制し、クレアの両手を痛くないように軽く握った。
「クレアの気持ちを決勝で改めてぶつける」
「ありがとう、優君。もう大好き」
やや大げさにハグしてくるクレアをみて、マアニャとミイニャは俺を目いっぱい睨みつけた。
「あたしも血を流すから決勝戦にぶつけて!」
「優斗君、私も」
「2人はまだ戦ってないだろ」
審判の女の子が俺を呼ぶ。まずは決勝より準決勝だよな。
セシスはすでにリングに上がっていて、俺が対面すると怖いくらいの視線を向ける。
ものすごい気合入ってるな。
「本気で戦ってください」
ピンクのショート髪の可愛い女の子は剣の柄に手を触れ、俺を見据えた。
「二刀流では戦うよ。カグヤ嬢と夕食を共にしていたセシスだからな。実力認められているんだろうし、元団長の先輩からの伝言もあるしな」
「伝言?」
眉をひそめたセシスをみながら、俺は左右の剣に手をかけた。
試合が開始されても、セシスは突っ込んでこない。
「どうしたよ、来ないのか?」
「あなたの二刀流は攻撃射程が広いですから。うかつに踏み込んでも怪我をするだけというのは、鬼ごっこを見ていてわかりました」
あの幼女剣士たちと違って、この子は戦術面も基本も出来上がっている感じだからな。
「先輩からの伝言聞かせてやるのに」
「先輩とは誰ですか?」
「アキコ団長だよ。どうやら剣を教わった人が同じみたいでさ、だから先輩後輩だ。来い! カウンターで負けさせるとかしないから」
セシスは左右に素早く動き始め、フェイントを交えて背後に回り、斬りかかってくる。体を右に回転しながら剣を2本抜いて、その威力ある一撃を止める。
「おお、しびれるいい一撃だ! 基本が出来てるからな。先輩の教えか?」
「アキコさんからの伝言は?」
「まだ剣士をやっているかな……最後まで面倒を見切れなくてすまない。素質も向上心もピカ一だよ。短期間で自分を超える剣士になってくれ……てさ。連絡したければ俺がそれを知っている」
セシスは回転しながら剣をふるってくる。
それを右の剣で止め、左の剣で手加減して薙ぎ払う。
「さっきあの尖った頭が言ってたよな。団長クラスは特別な何かがあるって。セシスも基本はばっちりだから、この辺も考えて……」
なんだ、俺の周りになんかある……小さな糸が張り巡らされていた。
「もうすでに考えてる物質化の能力も得た」
剣+糸か。見えないような切れる糸が本命。剣は陽動に使いやがった。
「いい能力持ってるな。これスキルじゃないな。生まれ持った素質か」
「いくら優斗さんでもその糸は切れないでしょう?」
俺は二本持った剣を少し掲げる。それだけで張り巡らされた糸に数か所斬られるが我慢だ。
「二刀流、回転連撃」
張り巡らされた糸を回転した二本の剣でぷつぷつと斬っていった。
「最近、見えない糸みたいなものを切ったことがあったけど、それより強度はあった」
「……くっ、まだまだ訓練が足りないということですか」
セシスは一直線に飛び込んでくる。
「悪いな、セシスは参ったって言ってくれなそうだからな。二刀流小嵐!」
大振り気味に左右の剣を振り、時間差の剣圧で小さな嵐を作る。
セシスがそれに触れた瞬間にその体はリングの外へと吹き飛ばされた。
審判の女の子が勝ちを宣言してくれている途中で、セシスに駆け寄っていく。
「本気でと言ったでしょう。全力出してくださいよ!」
明らかに不満そうだけど……
「いや、全力は出さない戦闘スタイルだからな。女の子に怪我はさせられないし」
「……次はそんなこと言っていられませんよ」
「わかってる。本気が見たいなら、少しは見せてあげられるかもな」
セシスはお尻についた砂をはらいながら起き上がり、
「勝ってください。あなたに負けた身ですから、ちゃんと応援させてもらいます」
「おう、必ず勝つよ」
さあいよいよ決勝戦。




