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第29話「剣技の大会(優斗の準々決勝)」

 さて、俺の準々決勝。


 相手は……すでにリング上にいて、腕組みしてこちらを睨みつけている幼女剣士アカビア


 俺は軽く腕を回して、


「じゃあ行ってくる」


「しっかりね、優斗」

「優斗君、愛しています」

「優君、ファイト」

「お兄ちゃん、行ったれ!」


 4人の励ましを受けてリングに左足から上った。


「お前、負けてくれる約束だな?」


「違うだろ。手加減する約束だ」


 アカビアはすでに構え、開始の合図を待っている。

 やれやれ、ちゃんと話を聞いているんだろうな。


 審判のお姉さんの

「はじめ!」

の、はの字を口に出した瞬間にすでに地面を蹴っていた。


(はやい、1回戦で戦ったキイラよりも速度は上だな)


 俺が距離を取ろうとすると、それを見据えていたかのようにくっついてきて、剣の刃が目前に迫る。

 

 キーンッ!


 迷ったけど、俺は左手で剣を抜いていた。


「先手必勝だ!」


 アカビアの剣が風を纏う。魔法剣か。


 押される。それに風で頬が切られそうだ。押し切られたらダメージが……


 そう思った瞬間にオートで妖精の力が発動。剣と両足に纏っていた。アカビアの剣を振り払い、俺は改めて距離を取る。


(まったくご主人さまは甘いですね。手加減しすぎです。相手の力量からすれば2本抜くべきなのでは)


「ティーゼか。出てくると思ったぜ。足にだけ力を貸してくれ」


(それで大丈夫? 剣も覆ったままの方がよくない?)


「速度だけで圧倒する。剣も覆ったんじゃ手加減した気がしない」


(まったくお優しい。少しでも傷をつけられたら、その命に背きますよ。そのつもりで)


「了解!」


「お前、なんだよ、今の? 魔法剣とかと違うようだけど」


「妖精の力だよ。俺たちは妖精の森でその力を扱えるようにしてきたんだ」

(またすぐバラす!)


「アカビア、相当速度に自信があるみたいだから、俺がその速度を超えたらお前降参しろ!」


「勝手に勝負の詳細を決めるな! お前がお前言うな!」


 地団駄を踏む幼女剣士だが、勝負の詳細は納得したようで。


「3回回り込んだら、あたしの勝ち。10回回り込まれたらあたしの負け。それでいいな?」


 随分と数に差があるが、手加減含めてるからな……


「ああ。それでいい」


 俺の発言を聞き、早速アカビアはヒュンと消えたように動き出した。俺は両足でステップしてアカビアの動きを把握しながらシュンッと動き出し、まず一度アカビアの背後へ。


「まず1回な」


「お、お前、どんだけ早く動けるんだ!」


「まだ半分ってところだ。2本抜けばもっと速い」


 俺が話している最中にもう動き出す。


 ☆ ★ ☆


 数分後には、


「10回目だ」


 大粒の汗を垂らし、はあはあ言うアカビアに戦いの終わりを告げた。


「くっそう。なんて速度だ。あほだな、お前」


「追い込まれた訓練させられてきたからな。自然と身についた速度だよ」


 俺は剣を鞘へゆっくりと戻す。


「はあ、はあ。お前、剣士だよな?」


「ん、そうだけど」


「じゃあ負けを宣言してやるから、一つ頼みを聞いてくれないか?」


「後付けだな。なんだよ、出来ることなら聞くけど」


「あたしら騎士団の女性剣士をいつも笑いながら鍛えている大馬鹿野郎がいる。剣に相当自信があって、剣の勝負なら負けないと豪語しているやろうだ。そいつに上には上がいることを思い知らせてくれないか? 鼻っぱしをへし折ってくれ」


「それってさっき戦っていたやつのことか?」


「そうだ」


 俺は口元を緩め、


「いいけど。こっちも一つ条件を出す」


「なんだよ?」


「決勝戦、俺の方を応援してくれ。女の子の声援が多い方が燃えるからな」


「そんなことか。そのつもりだ。いいな、約束したからな」


 俺が大きく頷くと、アカビアは負けを宣言してくれた。


 今のクレアじゃまだあいつに勝つことは難しいだろうなと思いながら、リングを下りて5人と1匹の傍に近づいていく。


「さすが優斗だわ」

「かっこよかったです、優斗君」


「速度だけの勝負に持ち込むなんて、優君はすごいなあ」

「やっぱお兄ちゃんはつええぜ」


 と、各々出迎えてくれた。


「クレア、次の準決勝どうするつもり?」


「戦うよ。勝てるとは思わないけど、強い人と剣を交えれば今より強くなれる……でしょ、優君先生」


 クレアは考えることはせず、自分の想いを口にしてくれる。恐怖はない。あるのは成長する意思。


「じゃあ最初から目いっぱい全力で飛ばせ。防がれてもいい。全開でいけ」


「うんっ!」


「それとな、やばくなったら棄権しろよ」


「はい、先生」


 いいお返事で、可愛くお手本のような生徒だクレアは。


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