第20話「マアニャに2つ褒められた」
ツンツンなマアニャお嬢様が、召使いである俺の就業時間を決定した。
午前7時から午後1時までマアニャのお世話。
午後2時から午後8時まではミイニャに聞け! と妹に丸投げ……
午前7時から午後8時まで拘束されるのかよ……滅茶苦茶ブラック労働じゃないか。
「ふっ、そんなにあたしに仕えるのが嬉しい? あなたずっとあたし見てるじゃない。惚れた?」
小悪魔的な笑みを浮かべ、マアニャはクレア特製野菜スープをスプーンですくう。
「はは、嬉しいですよ。雇っていただいて……」
俺は朝同様にマアニャの向かいに座り、パンをちぎる。
「棘のある言い方ね。腹が立つやつ……」
「ところで、妹はなぜこの邸にいない? 結婚してるのか?」
「げほ、げほ……」
「何咽てんだよ?」
「あんたが変なこと言うからでしょ……ミイニャは自分の意思でミラ家から離れたのよ。結婚も婚約もしてないわ」
「ほう……じゃあ俺が義理の兄弟になるかもしれないな」
「あんた、ほんとに馬鹿じゃない! 黙って食べなさいよ! クレアやバートンみたいに」
執事とメイドさんは食事マナーいいなぁ。育った環境の違いか?
「お前だってめちゃ喋ってるじゃないか」
「あんたが余計ことや、要らないこと言ったりしたりするからでしょうが!」
「人のせいにするのは良くないぜ。お嬢様」
「なにがお嬢様よ! そう言える口があるなら、毎回そうしなさい」
「食事中はお静かに!」
「腹立つわねぇ、あんたが言うな!」
「お食事も賑やかで楽しくなりましたね、お嬢様。越谷君が来て」
バートンさんは絶妙なタイミングで言葉を発し、穏やかな表情で俺とマアニャを交互に見る。
「……やかましいだけよ。あとうるさい……1つだけ褒められるとしたら料理が上手なところと馬鹿なところだわ」
いやいや、2つ褒めてるからな、一つじゃなくて。
突っ込もうとした俺に、無言の睨みの圧が襲い掛かり言葉を飲みこむしかなかった。




