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第28話「剣技の大会(グランドの準々決勝)」

「クレア、最後の一撃何を込めた?」


 クレアはふっと口元を緩め、


「愛……っていっても、優君だけじゃないよ。マアニャさん、ミイニャさん、アルカちゃん、ベリちゃん、レイラ(妹)、おばあちゃん、グランドさん……応援してくれているみんなの気持ちを一振りに乗せた感じ。優君への愛だけを込めるのはまた今度にしておく」


「よく、短期間でそこを会得できたな。元々クレアはいい子だから」


 俺はクレアの頭をなでる。


「あっ、頭を撫でられるのは私のはずですよ」


「ミイニャには魔術の大会で毎回勝ってきたら、その都度なでなでしてやるよ」


「さすが優斗君。私のソウルに響きます」


「ちょっとあたしには?」

 肘をついて不満そうにこっちを見たのはマアニャだ。


「お前もなんかしてほしいの?」


「当たり前でしょ。ぎゅうハグとか!」


「おほん、僕はリングに行くよ。優斗、もちろん僕を応援してくれるんだろうな?」


 俺たちを通り越し、リングに上る直前でグランドは振り返る。


「もちろんだぜ。相手も相手だ。この試合楽しみだよ。負けるなよ」


 グランドは力強く頷いてリングに上がった。



「僕は力の騎士団副団長のグランド、あなたは?」


「クロガネ。今は騎士団に正式に入っているわけじゃないねえけど、騎士団長以上の力を欲したいと思ってるやつだ。そこにいる越谷優斗ってやつと俺ははやく戦いたい」


 指を差されました。


「僕も優斗と戦いたいんだ。その権利譲るわけにはいかないな」


 審判の女の子が戦いの開始を宣言する。


 グランドとクロガネはゆっくりと剣を抜き構えた。

 グランドの方から仕掛ける。目にもとまらぬ連撃のラッシュ。


 キン、キンッ、キーン。


 それをクロガネの方は余裕を見せるように涼しい顔で防いだ。


(あいつ、甘さも克服しているようだな。全部急所狙いか)


「いい動きと剣の威力だ。副団長と名乗るのにふさわしいが、それだけじゃ不十分だな。団長クラスにはそれぞれ個性的な武器がある。特別な何かを持っていないとそこまでは達せないんだぜ。例えば」


 クロガネはリングの外にいる俺を見据え構えを取り、素早く剣を振った。


 シュ―ン! と鋭い剣圧が勢いよく飛んでくる。


 周りを確認し、素早く左手で剣を抜きその一撃を止めた俺は、上にそらすことはせずちょっとずつそれを消滅していった。


「ひゅう、やるねえ。優しくて手本にしたい剣だぜ。びりびり感じるぜ、あ~、早く戦いてえな」


 まっ、俺も最初にやったから文句は言えない。


「グランドが今のお前の相手だぜ」


「おお、そうだった……とまあ、今のわかったか。特別な何かを持っているかって話。さっきの女の子は素質十分だ。あれはこの先もっとすごくなる」


「特別な何か……優斗に出会わなければ僕はそれを持つことはなかったかもしれないな。優斗とマアニャ様たちが旅立ってから、僕がしたことは自分を見つめなおしたこと、剣の訓練動作の一つ一つに意味を持たせたこと、あとは団長との毎日戦闘したことくらいか」


 グランドはやる気になったようで、今度は左を前に出し剣の先端をクロガネに向けた。


「僕の剣はまだ未完成だ。だから試行錯誤している段階でね。でも段々優斗や団長の強さの秘密くらいはわかってきたつもりだ」


 速度を上げ、フェイントを交えながらグランドはクロガネに突きの連続を浴びせる。

 振ってくるのとは違い、突きは受けにくいから避けるのが基本。


 クロガネの奴はリズムを取っているかのようにグランドの突きを避け続けた。


「あの人すごいね。グランドさんだって速い攻撃なのに」


「クレアはなんで全部避けれると思う? クロガネって人のは、俺の危険感知とかではないみたいだな」


「どういうこと?」


「読んでるんだ。攻撃を。どっちかで言えばクレアのスキル使用に近い状態か」


(まあ、何度も見ればなにをしてるのかだいたい分かってきたけどな)



「スタイルを模索してると言っても、その構えでもそれなり以上にこなせるセンスを感じるぜ。強いな」


「当たらない……すでに優斗やバニア団長クラスなんじゃないか君は?」


「だから言ってるだろ。団長クラスだと。超えているかもしれないけどな。降参しろ。必要以上のいたぶりは失格にされるルールだ」


「断る! ベストな状態で降参するつもりはない」


「痛い目を見ることになるぞ。あんな上段構えじゃ俺には何のプレッシャーにもならない。仕方ないなあ。少し全力を見せてやるか、越谷優斗と戦う前に使いたくないけど」


 クロガネはリング上から消えた。


 正確には消えたわけじゃない。超高速のスピードでヒュン、ヒュン音をさせグランドの体を少しずつ斬りつけていき、同時に剣圧を浴びせ後退させていく。


(なにやってんだ、あのバカ)


「グランド、落とされるつもりか! 触れる瞬間に一撃かませよ!」


「そんなこと言ったって、僕には捕らえられない」


 鍛え始めて数週間か。加速的に伸びてるけど、まだ危機感が足りなかったか。

 当てずっぽうに、ブンブン振り回すがあれじゃあ当てられるわけがない。


 やがて、リングの端まで追い詰められ、胸のあたりを鞘に納めた剣で押されグランドの体は場外に落とされる直前に思いっきり剣を振り、その風圧でリング内へと戻った。


(しぶてえ……というか一撃の威力はかなり増しているな)


 安心していたとか、一瞬気を抜いていたグランドにクロガネは真正面から斬りかかり、それを剣で受けたグランドは足元を支えきれず、今度こそ場外へと落下した。


「あちゃあ」


 クロガネの勝ちを審判の女の子が宣言し、クロガネは手を伸ばしてグランドの体を引き上げる。


「いいものを持っていた。特別な何かの片鱗も見せてもらったよ。今回は越谷優斗と戦う権利は俺に譲ってもらったぜ」


「仕方ないさ。負けたという事実がある。優斗は強いぞ、僕は優斗が勝つと予想しておこう」


「予想か。ぜひともそいつは覆したいね」


☆ ★ ☆


 とぼとぼと肩を落として帰ってくる。


「グランドさん、惜しかったですね」

「いや、完全な実力不足。戦闘能力の差です、単純に」


「まっ、そう気を落とすなよ。確実に強くなってるんだから」


「あたしの召使い兼旦那様が仇は取ってくれるわ。いい戦いだったと思うし」


「お姉ちゃんはなにどさくさに紛れて旦那とか抜かしているんでしょう。優斗君が勝つというのには同意しますけど」


「一昨日の夜のことが嬉しくてつい……そりゃあもう楽しかったもんね、優斗」

 同意を求めるな!


「まあ、楽しかったよ、うん」


「優斗君、やっぱり襲われたんじゃ!」

「ダメ! クレアがいるでしょ」


 ミイニャとクレアに詰め寄られるのをマアニャは余裕な笑みを浮かべて眺めているのであった。


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