第23話「剣技の大会(優斗の1回戦)」
キイラは戦闘開始の合図を聞いても飛び込んでくることはせず、俺の目をじっと見ていた。
女の子に見つめられるのは嫌いじゃないが一応試合開始されたしなあ。
「来いよ、てめえ」
キイラは睨み顔で人差し指をクイックイッと動かす。
喧嘩上等の番長かよ!
ぐっと膝を少し落とした俺は、一気に加速してキイラの後ろに回り込んだ。
「稽古をつけてやるって言っただろ。実力に不満を持っているのかもしれないが、俺はどの騎士団団長より強いぞ」
キイラは冷や汗をかいたようにゾクッとし、慌てたように剣を抜き、シュンという音を立て回転しながら剣を薙ぎ払ってくる。
避けてもよかったのだが、人差し指と中指でその剣の刃を捕まえた。
「今のは、ダメだ。動きが見えなくて回り込まれたのがわからなかったなら、まずは距離を取るのがベスト。俺が敵で剣を抜いていたら、キイラが剣を抜いた時点で振り下ろされて敗北、下手すれば命を落とす」
「えっ、偉そうに言うな!」
「もっと視界を広げろ。前だけじゃなく、周りに気を配るんだ。いい速度を持ってるってことはそれを使用すれば攻撃力も上がる。自分の得意なことと苦手なことを把握すればそれだけで強くなれるんだ」
「うっ、うるせいよ! 剣を離せ!」
俺は言われるまま剣から指を離す。
「おっとと」
いきなり離されたもんだから、キイラは体勢を崩した。
「今度は受け止めないから、息の続く限り連続で振ってこい!」
「いちいち命令するなぁ!」
ヒュン、ヒュン、ヒュン。
ブン、ブン、ブン。
振り下ろしと薙ぎ払いをあえて紙一重のところで避ける。
「どうしたよ、返しは苦手か? それじゃあ連撃にならないぞ」
「だっ、黙れ!」
なんで当たらないんだ? 的なイライラした表情でなおキイラは剣をブンブン振り、徐々にはあはあ息が上がり、最後にはふらふらになり両ひざを追って呼吸を整える。
「まだ体が小さい。だから戦闘のスタミナが足りないんだ。格下ならともかく、同等の相手、ましてや格上の相手にはどんな戦術を用いても勝利することは低い。けど、素質はピカ1だ。なんで騎士団員になっているか知らないけど、将来的にはいい使い手になりそうだぜ」
「ちくしょう、てめえ騎士団長クラスなら、大会出場するんじゃねえよ!」
よっぽど悔しいのか涙目になり悔しそうにこっちを睨む。
負けん気の強い子だ。ある意味、俺と似ている。
「事情があるんだよ、こっちにも」
「勝てねえ、絶対勝てねえけど……降参させたいなら、お前の力を見せろ!」
「力ねえ。けど本気でやらないと約束しただろ」
「あたしにじゃねえ。後ろに白と青の胴衣着た剣士がいる。今来た馬鹿だ。寝坊してたんだ。そしてまだウトウトしてやがる。そいつを完全にここから起こせたら、負けを認めてやる」
俺は後ろを振り返る。
たしかにコックリコックリしてる剣士風の奴がいた。う~ん、強さの判断が出来ない。弱くはなさそうだけど、強いのかもわからない。
「てめえでも、奴の強さがわからなくて当然だ。戦闘態勢になってない。無駄な力出してないんだ。起こしてみな! 死なないしケガもしないから安心しろ」
やれやれ、なんで小さな子に命令されなあかんのだ?
それに、もはや違う相手との闘いじゃねえか。
まっ、俺も『ウトウトしてるやつ』に興味はあるからな。
左右の2本の剣を抜き、クロスに構え斜めに勢いよく振り下ろした。
その剣圧弾がウトウトの髪がはねたやつに向かっていく。
接触しそうなところでぱっと目を開けたそいつは右肩から出た刀で俺の剣圧弾を涼しい顔で被害のない上に方向転換させた。
シュオオンと、ただ音だけがこだまし、キイラは満足したようで降参を宣言する。
「どうやらはねのけないとダメージを受けると思ったらしい。負けたぜ。あいつがてめえの決勝の相手になるはずだ。お前の方を応援しといてやるよ」
不気味ともいえる予言めいたことを小声で放つとキイラは満足したようにリングを下りた。




