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第19話「クレアを助けたということ」

 外に出ると近い距離に城が見えた。


(あれがアイルコットン城か……)


 邸の隣には大きな広場が。近づいていくと、掛け声と剣の交わる音が響いてくる。


「ここ、騎士団の訓練場?」


 ざっと見て、30人くらいの男が剣を振ったり、筋力トレーニングをしていた。


「うん……」

 

 1人だけ動きも見た目もやたらと目立つのがいる。


「あの真ん中の人が、一番強いだろ?」


 俺は金髪長髪のハンサム男を指さす。


「よくわかるね。彼はグランドさん。今、団長さんは不在だから、実質彼が仮の団長さん」


 へえ。俺は持っていた箒を無意識に握りしめていた。


「なんで騎士団なんて作ったんだ? そんなにこのアイルコットンは危険なの?」


「君、何にも知らないんだ……」


 すいませんねえ、何しろ2年もただひたすらに地獄を味わっていただけなので……

 ぶっちゃって言えば、この世界が平和なのかも知らない。

 猛獣や魔法使いは目にしたことがあるから、ファンタジー世界というのは理解してるけど。


「騎士団はある闇の教団に対抗する手段。アイルコットンのミラ家を含めて、4つの騎士団があるみたいだけど、クレアはその詳細を知らないよ」


「闇の教団……それはモンスターなの?」


「うんうん、教団にいるのは人だと思うよ」


 ハチャメチャ世界……悪人集めて教団作ったのか? 他に魔物のボスもいるんじゃね?


 突然、聞きなれない金属音がした。

 仮団長さんの相手をしていた奴の剣の刃が折れて、こちらに一直線に向かってくる。


「きゃあ」

 と、悲鳴をあげ、目を瞑り防御体勢なっていたクレアの前にすうっと出て、持っていた箒をタイミング合わせて振り下ろす。


 箒の先に刺さっている刃を取り、念のために確かめた。


(……力量の差があり過ぎて折れたようだな。プラスで剣の使用年数経過もあるようだが……どっちにしろ俺たちがピンポイントで狙われた可能性は低い)


「君たち、大丈夫か?」


 金髪のグランドがこっちに駆け寄ってくる。

 クレアはその声にようやく顔を上げた。


「あぶないだろうが! 稽古をつけるなら、錆びついた剣は使うんじゃねえ」


「ああ……すまない」


「謝ってすむ問題じゃなかったかもしれないんだぞ。クレアの顔に傷でもついたら責任とれないだろ! そんなことになっていたら許さなかったぞ。グランドか、お前の剣圧を受けられる団員はこの騎士団に居ないんじゃないのか?」


「返す言葉もないよ。団長は不在だから……」


「悪いけど言い訳にしか聞こえない。今はお前が仮の団長なんだろ……まっ、クレアがここに来たのは俺の案内で、根本的に俺が一番悪いんだけどな」


 あぶねえ。完全に八つ当たりするところだった。


「そんなことはない……僕の注意力と指導力不足さ」


「何事もなかったし、もう気にするな。俺も責めたりしない」


「……箒でよく刃を落とせたね……」


 見なくてもいいところをみてるな。


「ああ、偶然とは怖いもんだ。もしかしたら剣の才能があるのかも……俺、越谷優斗。マアニャとミイニャの召使いになったんだ」


「お2人の……グランドだ、よろしく。大ごとにならなかったお礼を言うよ」


「だから俺のせいもあるんだ。お礼は要らない。稽古に励めよ……クレア、ここはもういいよ。他を案内してくれ」


 中腰でしゃがみ込んでいたクレアに手を伸ばす。


「うん……」


 グランドはもう一度俺に礼を言って、離れて行く。


「……ありがとう。守ってくれて……」


 俺の手を取り、立ち上がったクレアは頬が赤く染まっている気がする。


「いや、女の子を守るのは義務だし。クレアみたいな可愛い子を守れるなら、喜んで危険に飛び込むぜ、俺は」


「もう……なにそれ。そろそろ戻って、お昼の支度しなくちゃ。続きの案内はまた今度ね」


「了解」


 さて事実としてクレアを助けたことになり、後にこれが布石となるのだが……この時の俺はまったくわからなかった。

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