第1話「幸せだと思う今この瞬間」
外れスキル『すれ違い』……とにかくすれ違うことが多くなる最悪外れスキル。
約束の時間を間違えられたり、好きな子との想いもすれ違い、両想いになれない最不幸スキル。
周りにも不幸をもたらすと言うのだから手に負えない!
だがそこまで落ち込むことはない。このスキルは誰もが羨む超レアスキルに覚醒できる可能性がある。
☆ ★ ☆
ユニークスキル「すれ違い」を手に入れてから2年2カ月後。
太陽の光が部屋に入り込んでいて、その眩しさに一度開いた瞼を閉じる。
カーテンの隙間が少し開いていたのは、昨夜隣のベッドで寝ている双子の姉妹の妹ミイニャとの会話が盛り上がり夜通し話していたため、寝落ちるときにはほとんど意識がなく、乱雑に引いたからだ。
「ふあぁ」
俺は上半身をゆっくりと起こして、欠伸をして両手を上げる。
「す~、す~」
気持ちよさそうな寝息が隣から聞こえる。赤みがかかった茶髪のウエーブショートカットの美少女ミイニャはまだ夢の中か。
ちらっと目覚まし時計で時刻を確認……針は7時30分を指していて……
「やべぇ、寝坊してる……ミイニャ起きろ! 仕込みをしておかないと、店が開けられないぞ」
「……」
ミイニャは今にも閉じそうな眼を擦り、こっちを見た。
「……おはようございます、優斗君。昨日は楽しかったですね……」
「ん、おお」
俺は見られているのを気にせずに、パジャマからジーンズと白のシャツに着替える。
「もうお出かけですか?」
「歯磨きと洗顔したらな。30分も過ぎてる。あいつにばれたらただじゃすまない」
あいつとは、そうミイニャの姉……奴は怖い。
「私をハグしてから行ってください。運の良さが上がって、バレないですから」
ミイニャはゆっくりと両手を広げ、俺に抱きしめてもらうのを待つ。
俺はゆっくりとウエーブのかかった茶髪の女の子に近づいていき、
「ハグをしてほしいのか、俺が怒られないように言ってくれてるのか、どっち?」
「両方ですよ」
ぎゅっと軽く抱きしめてあげた。
「トゥトゥルウルウ! 運の良さが上がりました。今日はお姉ちゃんをぎゃふんと言わせられます」
「それは良いことを聞いた。仕込み1人で平気か?」
「大丈夫です。優斗君が来るまで、1人だったんですから。淋しくなったら、プレゼントしてくれたスホマで連絡します」
「微妙に間違ってる。スマホだぞ」
「カタカナは苦手です」
「まあわかるから何の問題もないけどな」
「……ほっぺにチュウは要りますか?」
自分で言ったのに、ものすごく恥ずかしがっているミイニャを見ると可愛いと思うし、俺も少し恥ずかしい。
「いや、またあとで。どんどん遅刻時間が伸びていくからな」
「私としたことがとんだ引き延ばしを。またお昼過ぎに。今日も2人の時間を大切にしましょう」
「おう」
俺は2階の住居から身支度を整えて、1階カフェのドアを引き外へ出る。
「行ってらっしゃい!」
窓をあけ、こっちに手を振るミイニャ。ショートの少し赤みがかった茶髪が風になびいた。
やばい、幸せだと思う今この瞬間。
ここは異世界で俺が今いるのはアイルコットン。
剣士もいれば、魔法使いもいて、魔獣や敵も(たぶんいる)とんでもハチャメチャ世界だ。
優斗君と私をブクマや評価で応援してあげるという方が居たら、私は嬉しいです。お礼にうんのよさを上げておきます。トゥトゥルウルウ!