第13話「優斗と3人娘との鬼ごっこ2」
自信満々、気合の乗っている可愛いクレア。
ダメだ、視線を合わせたら本気を出せない。
前に少し屈んだ。くるっ!
クレアは俺との距離を詰めてくる。元からの速度に足に妖精の力で速度上げしてるな。だがそれだけじゃ俺はとらえきれない。
斜め後方に移動した俺の動きを読まれているかのように、クレアは笑顔を浮かべ迫ってくる。
「優君、おとなしくクレアに捕まって、今夜は二人きりで話そうよ」
「別に捕まらなくても二人きりでは話せるだろ。わかってきたぞ、クレアがやっていることが」
「さすがは優君先生。でも、捕まえるよ」
(ち、近い。しょうがない、妖精の力をフルに)
と、思ったら、
「マラザボムゾ!」
マアニャとベリのコンビが最強魔法を唱えてきやがった。
(あれ、クレアがいない……なんて逃げ足の速さだ)
二本の剣を抜いて、捕まらないことも視野に回転して、なんとか炎から身を守る。
煙が出てるけどこのくらいなら平気。
「マアニャさん、邪魔する気ですか?」
「まさか。今のでも捕まえるのは無理よ。1対1じゃまだ捕らえるのは難しいと思わない?」
「むっ~、もうちょっとだったのに……たしかに優君、余力隠し過ぎですからね」
「そのくらいでないと、ナイト君としては役不足だけどさ」
「お姉ちゃん、マラザボムゾ、アンコール!」
ミイニャが俺の背後からそんなことを言う。
「あんたこそミナザブレスを撃ちなさいよ! この前みたいに連携すれば何とかなるかもしれないでしょ」
「いえ、これは個人戦なので。もし合わせているときにクレアが迫ったらクレアにご褒美が」
「そっか。マアニャさん、ミイニャさんお二人の連携はものすごいです。ぜひとも優君に見せてあげないと。もちろんそのすきにクレアが捕まえても卑怯じゃないですよね?」
たくっ。何をしてるんだ。
俺は軽くステップして、クレアに高速で近づいておしりとお胸の両方をおさわりする。
「ひゃん! 優君のエッチ!」
ひゃんが聞こえるころにはすでに一定の距離を保っていた。
「おお、まさにお兄ちゃんやりたい放題だ。お姉ちゃんたち、せっかく3対1なんだから生かさないと、お兄ちゃんがただのスケベに見えちゃうよ」
アルカのやつ、失礼なことを。
「アルカは妹みたいだからそんなのんきなことが言えるのよ!」
「こっちは必死も必死なんです」
「絶対にクレアが捕まえる」
「鬼ごっこですか?」
ピンク色のショートカットがいつの間にかアルカの隣にいた。
「さすがにいい動きをしますね。越谷優斗さん」
「今は集中している最中だ。君にはあとで話がある」
「集中ですか。これって飛び入りもいいんですよね?」
「えっ、まあ……アルカちゃんも参加するつもりだったし」
「では、代わりにわたしが」
剣を抜いたセシスは一蹴りで攻撃射程へ侵入してくる。速度は一人前だな。あの幼い3人娘を見たときも思ったが……左手で剣を抜き、その太刀を防ぐ。
「まだ参加していいとは言ってないぜ」
「いいじゃないですか。ここ、わたしより強い剣士は一人しかいなくて、すぐどっかに行っちゃう人で、対戦回数少ないんですよ。だから稽古をつけてくださいよ」
なかなか強いなぁ。騎士団副団長くらいか。
「稽古なら暇なときにつけてやるよ。今はそれどころじゃないんだ」
やばい、一瞬セシスの剣を止めるんで目を切ってしまった。
「2本の剣を抜いて、見せてくださいよ。二刀流」
「だから今はそれどころじゃないって言ってるだろ」
(マアニャたちはどこ行った?)
すたっと背後に着地した気配がした。
「ふっ、飛べること忘れてた? それともその子の剣を抑えるので、大好きなあたしから目を離しちゃったのかしら?」
(やばい……)
がばっと後ろから抱きしめられ、いい匂いが。
「はい、捕まえた!」
左右からもがばっ、がばっとミイニャとクレアが勢いよく抱き着いてくる。
「お姉ちゃんが抱きしめるより、私の人差し指が優斗君に触れる方が速かったです」
「クレアの、クレアの胸が先に優君の肘に触れてます」
「ふっ、どう見ても捕まえたのはあたしでしょ!」
「こんなこともあろうかと、アルカちゃんがちゃんと見てたんだよ。際どいタイミングだったのは間違いないけど」
「どうでもいいですけど、剣を交えているときに危ないじゃないですか! いったい何をそんなに」
「あなたのおかげよ。ありがとう」
「いえ、お礼はいいんですけど」
セシスは首をかしげながら、剣を鞘に戻し、
「大会を楽しみにしています。越谷優斗さんにクレアさん」
やっぱりセシスも剣技の大会に参加するのか。
「で、アルカ。誰が最初に優斗を捕まえたのよ」
「お姉ちゃんだよ。おめでとう!」
「やったぁ。ほら、見なさいよ。優斗覚悟しなさいよ。今夜はあたしと二人きりだからね」
そんなに俺との2人きりが希望とは光栄だぜ。
「そんな!」
「マアニャさん、勝負強すぎます」
ミイニャは驚きと落胆でがっかり、クレアはわなわなして俺の方を見た。
「明日は大会のリングと同じ広さでまたやるから」
それを聞いて、二人はニンマリとする。
「さすがは優斗君。救済措置があったとは」
「明日は絶対にクレアが捕まえるよ」
もう少し時間をかけたかったのに。セシスって子が飛び入り参加してきたのは予想外だったな。
俺は剣を戻し、ふうっと息を吐いた。




