第9話「ナルブタンの町を見学」
数時間の訓練を終え、4人は下着を購入したいってことで、長くなりそうなので俺はベリとナルブタンの町を見学(体験)することにした。
空を見上げると、太陽が元気にまだ上っている。
おかしいと思うのは、この町、外と比べて全然過ごしやすい。快適な温度なんだ。
「ベリ、この町ってさ」
「温度管理されていますね。町全体を大きなドームで覆っているような感覚です。風魔法最高の使い手カグヤ令嬢なら可能なことですニャ」
「すげえな。クーラーいらずだ。そうしているからこそ、この町に人が集まっているっていうのもあるんだろうな」
ベリは俺の右肩に着地し、
「この町は作りそのものが他の町と異なっているようです」
「どういう意味だ?」
「ベリの感覚では、ユニークという感じでニャ」
「ユニークねえ」
確かにこの町にしかないものが沢山ありそうだ。
例えば目の前にあるプラネタリウム……これ、俺の記憶にあるぞ。
「パパ、ベリはあそこに行ってみたいですにゃ」
ベリが肉球を向けた先には巨大な図書館があった。
「でけえなぁ」
近づいて、その大きさと作りに驚愕する。大図書館。
そういえば俺、この世界で図書館みたことがないな。
ミラ家の書物保管庫もデカかったけど、それとは規模が違う。
自動ドアを通り、そこで立ち止まった。
「おい、こっから先はゲートをくぐらないといけないらしいぞ。専用のカードが必要みたいだ」
「ベリなら浮遊したまま通れます」
俺が通れない……と、困っていると、手に後ろから何かが当たった。
「これを」
振り返ると幼い顔立ちで、博識そうな女の子が俺の手にカードを握らせてくれていた。
「君は?」
「カグヤ様のお友達です。越谷優斗様」
「俺の名前、知ってるの?」
「ええ。あなたは有名人ですから。先日のタロムコロムの戦闘も見事でした」
左右に緑とピンクのリボンを付けたその子はカードを通し、ゲートをくぐりこちらを見る。
同じようにしろと言われているみたいだ。
俺とベリはゲートを通って喋り声のしない館内へと踏み入れた。
「ご案内します。と言っても、あなたには少々難しい本ばかりかもしれませんが」
その通りだった。別に俺は本嫌いというわけではない。でもミラ家で読書熱が入らなかったのは、文字がなんとも読みにくかったからと言っても過言ではない。
(この子、どうしてこの前の戦闘を知ってるんだ? そういえばカグヤ嬢も俺のこと知っているふうだったけど)
「地下にならあなたの気に入る書物が沢山あると思います」
「ほんとに!」
女の子は口元を緩めて、地下への階段を下りていく。
「可愛い使い魔ですね。賢そうで、成長幅も高い。主が成長すればすごい力が解放されそうです」
「そんなことまでわかるの? 君、いったい……」
「この辺の棚などいかがでしょう?」
んっ、俺をうならせる本なんて……
「これは!」
そこには漫画雑誌が号の順番に並べられていた。
見た覚えがある。ていうか買っていた覚えがある雑誌……でも、こっちでこんな……
「やっぱり転移者ですね、反応を見れば一目瞭然です。越谷優斗様」
小さな声で彼女は俺を見る。
「君、何者なの?」
「コウコと言います。カグヤ様のお友達で博識僧侶です」
「僧侶……」
ミイニャと同じ……
色々質問をぶつけようとしたところで、ぶ~、ぶ~と彼女のスマホの振動が聞こえる。
「すいません。呼ばれてしまったので、話はまた今度」
(できるぞ、この子。相当に)
「待って!」
遠ざかろうとする彼女の背中を呼び止める。
「なんでしょうか?」
「君も魔術の大会に出るの?」
「はいっ。参加します。優斗様のお連れの方によろしくお伝えください」
会釈をし、ゆっくりと俺たちから遠ざかっていくのを見ながら、
「こりゃあ、勝ち抜くことすら難しくなったな。マアニャとミイニャは」
「今のままじゃやっぱり無理ですニャ」
ベリも同意見のようだった。




