第12話「強制的に飛ばされたあげくに……」
話は少し戻って、2ヶ月前。
高速過ぎて目を開けてもいられない。
現在の状況は抗うことのできない、強制お空の飛行。耳からは移動音というか、風を切り裂くような音だけが聞こえる。
時間は午後7時くらいだったはず。
さっきまで一緒だったお姉さん……顔が思い出せない、名前も……
なんだ、なんでだ、なんでなんだ!
せっかく不幸スキルを覚醒させたのに……もう辛い修行の日々と、きつすぎる雑用は終わる瞬間だったのに……なんでこんなことに!
剣でこのスピードを落とせないか必死に考える。痛いが目を少しだけ開けると、えらい伸びている大樹が見えた。
「とりあえず死は回避する。生きてれば何とかなる!」
剣を抜き、大樹に刺すか、食い込ませるつもりだった。最悪勢いだけでも殺せると踏んでいた。
肩から出ている剣の柄に手がかかる瞬間に、まるでそれを拒否するかのように、きちんと留めていたはずの留め具が左右2個とも外れて……俺の剣はゆっくりと俺との距離を開いていく。
さようならと声が聞こえてきた気がする。
あのお姉さん……いやあの女は、俺が抵抗するのを強制的に抑制できた。剣が離れたのも奴の仕業か。
「……やばい、本気でやばいからこれ! こんなことならあのお姉さんの寝込みでも襲っておけばよかった」
今のこんな状況を作り出したお姉さんが、すげえ綺麗だったのは覚えているな……都合のいいように操作されたか? スキルが覚醒する瞬間に油断した。
「お願いだ、神様死ぬのは嫌だ! 助けて」
体は急に降下を始めた。
「あの女、どっかに飛ばしてるのか……なら死なないかも……いやいや」
そんなお優しい性格ではなかったことも覚えているぞ。
恨んでやる!
もし生き延びたら倍にして返して、スキルの餌食としてやるからな。
地面が急に近くなり、怖さは増していく。
諦めているわけじゃないけど、どうにもできない。せめて剣さえあれば……
ここまで誰かと衝突しなかったのはせめてもの救いか……
まあお空を飛んでいるのは魔法使いくらいだけどな。
この世界でも俺は不幸なのか! 進化から覚醒させたハーレムスキルを味わうことなく死んじゃうのかよ!
こんな最後か、俺は鍛えただけでまだ何もしてないのに!
地面とこんにちはする寸前に、ぴたっと勢いがゼロになった気がしたのは、錯覚なのか、本当だったのかわからない。
感覚では完全に静止、それからまた引き寄せられた気がして、俺は顔から激突して意識を失った。




