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第2話「でっちあげの誘拐記事」

 囲んでいる人たちの表情は敵意に満ちている気さえする。


 なんだ、突然……

 ぱさっと新聞が投げ込まれる。


「読んでみなさい」

 新聞を放った子が言う。


 君は3人にやられたAランクの方。俺は新聞を広げ記事に目を通し始める。


【マリ家の娘が誘拐されていたことが分かった。犯人は越谷優斗というミラ家で召使いをしていた剣士。サテランドヒルの騎士団はこの事件を早期解決すべくすでに動き出している。なお誘拐は禁固……】


「なんじゃこれは……」


「優斗君が誘拐の犯人……デタラメ記事もここまで来ると凄いですね」


「ミラ家の召使いって記載してる。ミラ家を陥れようとしてる人の仕業かしら……」


 双子姉妹は覗き込むようにして、記事の内容を読んだようだ。


 なるほど。クレアはこの記事を見てマリ家に戻らざるをえなかったのか……誤解を解くためか、あるいは記事の内容を提供した奴にでも心当たりがあったのか……いずれにしろ、これでクレアがマリ家の娘だってことがほぼ確定した。


「どうやら俺に本気で喧嘩を売りたい馬鹿がいるみたいだな」


 しかしまあ、カスラニクスの人たちさ、さっきまで感謝してくれてたんじゃないのか、たかが新聞記事ごときで評価を改めるとは悲しくなるぜ。


 カフェの従業員ジェシィと滞在者判定人カティが俺たちを守るように前に出てくる。


「優斗さまは誘拐犯ではありません。私を守って、このカスラニクスにはびこっていた悪。闇の騎士を倒してくれた方たちですよ。武器を取る時を間違えていませんか? 住人ではどうにもならないから、よその方をランク付けてして騎士を打とうとしたはず。それを果たしてくれた優斗さまたちになぜそんな行動が出来るのか理解に苦しみます」


「彼の優しさに甘えてはいけません。反撃されないと思っていませんか? 力は闇の騎士よりも上。状況判断力に乏しいとまたこのカスラニクスは危険に晒される。私たちは真実を見極める目をもう少し養うべきです。目の前の懸賞金などに目がくらんで、感謝の気持ちを失くしてはいけません」


 懸賞金……新聞を見ると確かにかけられていた。バカでかい金額が。


「まったく頭が高いんですよ。私の優斗君に武器を向けるなんて、全員蹴散らしてあげましょうか? この金バッジが目に入らぬか!」


 ミイニャよ……最後の一文、決め顔で言いたかったんだな。

 あれ、ミイニャはいつの間に俺が付けていたバッジを……


「あなたの優斗じゃないけどね。悪者が近づけない様に、結界くらい張っておいてあげるから感謝するのね。アイルコットンの騎士団にも巡回するようあたしが掛け合ってあげるわ。今の団長なら話を聞いてくれるでしょ。誰かさんのおかげでね」


 4人の女の子のお言葉を聞いて、住人たちは振り上げていた武器を下ろし始める。

 やれやれ。まあ大金に目がくらむ気持ちはわからなくはない。


「サテランドヒルっていうのはどこだ?」


 俺は地図を広げる。どうやらこの地図はこの世界全ての地図ではなく、周辺地図らしく、大きな木がある場所が見当たらなかった。


「ここよ。ここからだと馬なら12時間ってところかな。クレアはもしかしたら移動用アイテムを買ったか持っていたのかも」


 随分と時間が掛かるな。移動アイテムも移動呪文も行ったことない地域は行くことが出来ないはず……


「マアニャ、移動呪文でそのサテランドヒル地方には?」


「ごめんなさい。移動魔法は習得したけど、サテランドヒルは行ったことないわ」


 ですよね……やっぱり。


「じゃあマアニャとミイニャはこの街で待ってろ。王族の娘同士だとなんか面倒ごとになるのかもしれない。俺がクレアを連れてくる」


「待ちなさいよ!」

「待ってください!」


 息がピッタリの双子は同時に異議を唱えた。


「なんだよ?」


「なに1人でカッコつけてるのよ。優斗があたしを誘ったのよ。一緒に行くに決まってるでしょ。いくら強くても、あなた一人じゃ面倒ごとが増えるだけよ」

「お姉ちゃんの言う通りです。うんのよさが振り切れている私を連れて行ってください。それに優斗君、馬に乗れるんですか?」


「うっ……走っていくからいいんだよ」


「誘拐犯にされているのよ。サテランドヒル地方に入るのだって大変でしょ。戦略がなければ最悪もうクレアに会うことすら出来ないわよ。それともなに、あたしたちを置いて行って、クレアと二人きりにでもなりたいの?」

「そうなんですか、優斗君!」


 そんな顔で睨むな。


「天才児で美少女な双子姉妹、いいんだな、頼っても? こんなこと言っちゃあれだけど……嫌な予感がするんだよ」


「当たり前でしょ。クレアは友達よ。こんな別れ方気に入らないわ!」

「私は優斗君といつでも、どんな状況でも一緒です。クレアには会って言いたいことがあります。それに覚悟はできています」


「わかった。良い子だなぁ二人とも。惚れ直すぜ」


「もう振り切れるから惚れてるくせに!」

「一番惚れてくれて、感謝です」


 お互いに睨み合い不穏な空気が……


「好きな馬車を使ってください。こちらへ」


 カティについていって、街の入り口付近の牧場でマアニャとミイニャが元気の良さそうなお馬さんを選び、ジェシィが用意してくれた食料などを荷台につぎ込む。


「お気をつけて。連れて行ってくださいと言いたいのは、やまやまですが、人数オーバーのようですし、無事をお祈りしています」


「ありがとう。元気でね。何かあればスマホに連絡くれれば助けに来るから」


「はいっ!」


 どんどん女の子の連絡先が増えることはいいことだ。


 街周辺に結界を張った二人が戻ってくるのを待って、俺たちはカスラニクスを後にしてサテランドヒル地方に向けて馬車を走らせ始めた。



 待ってろよ、クレア。どんな問題を抱えているのか知らないが、俺が解決して連れ戻してやるからな!

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