第38話「次の目的地は?」
お風呂に入り、俺がベッドにやってくるとクレアは嬉しそうに微笑んでくれたが、さっと書いていたノートを後ろへ隠した。
例のマル秘ノートだろ? 見たことあるんだし、何も隠すことはないのに。
「いいですか、猫ぎつね。優斗君はお姉ちゃんのではなく、私の旦那様です。勘違いしない様にお願いします」
ベリを座らせ、ミイニャはベッドの上で身振り手振りを交え説明している。
「猫ぎつねですが、名前はべリグドです……ミイニャさん」
「そんなのどうだっていいんです! わかったんですか、私の言ってることが! ネコぎつね!」
殺気があふれ出ていますね。
「はい……です」
「なに怖がらせてんのよ。ベリちゃんはあたしの使い魔なんだから、あたしの味方して当然でしょ。悔しかったら、あなたも使い魔を呼びなさいよ」
ベッドに寝転がりながら、魔法使いの書を読んでいたマアニャは妹に注意した。
「……自分のとこに来たからって調子に乗ってる……お友達に私の使い魔候補いないですか?」
「……わかりません……すいません……」
ベリは申し訳なさそうに謝罪する。
「優君のマッサージ担当今日はクレア、やります」
「クレア疲れてないの? 今日は俺、戦闘もあんまりしてないし、そこまで気もはってないし……」
マッサージは必要ではないかも……
「クレアのマッサージはもういらないの?」
「そんな悲しそうな顔するなよ。してくれるなら喜んでやってもらいます」
俺は顔を枕に埋めて、うつぶせ寝の状態になる。
「では肩の方からほぐしていくね」
「うん、よろしくです」
毎晩、美少女にマッサージをしてもらえるなんてなんて幸せなこと。
クレアのマッサージは強すぎず弱すぎず、すげえ気持ちがいい。
「なあクレア、今何か悩み事ないか? 恋愛がらみいがいで」
「えっ?」
クレアの手が止まる。
「どうして?」
「いや、なんとなくだけど……カスラニクスに来てから何か元気無さそうだからさ」
「……さすがは優君だなぁ」
「何かあるなら話せよ。闇の教団はどこにいるかわからないんだし、何か目的があるなら共有する。剣のことで不安なことでもあるならいくらだって聞くし、何とかするつもりだよ、俺は」
「うんうん、いいの。今はまだ……話さなきゃいけない時になったら、クレアから優君に言うから」
「そっか。わかったよ」
腰のあたりに重量が加わった気が……首を少しひねるとベリが乗っている。
「パパ、ママと一緒に寝ないのですか?」
「子供がそういうことを気にするんじゃない。2日前に寝たばっかりだ」
「夫婦なら毎日一緒じゃなきゃダメです。浮気と言うことに……」
「ミイニャさんの話聞いてなかったのかな? 優君とマアニャさんは夫婦じゃないの。パパママって呼ぶのは勝手だけど、無理やりくっつけようとかクレアが許さない。もう子供は寝なさい!」
「はい……です」
ベリはクレアの気迫に圧倒されたようだ。女の子は怖いなあ。
俺の顔の方に近づいてきて、そのまま丸くなった。
「優君とはクレアが今夜は二人きりで寝るのに。猫ぎつねさん……嫌いになりそう」
「おい、ママと一緒に寝ろよ」
俺はうつぶせ寝のまま、手を伸ばしベリの眉間の辺りを軽く押す。
「ミイニャさんがダークです。あそこに寝たら、起きるころに毛が無くなってしまいそうです。それにベリはパパの匂いが好きです」
その予測は間違っているとは言えないのが、ミイニャの恐ろしさを知っている俺なのだぜ。
隣のベッドから話しかけられる。
「次は魔法都市に行きましょうよ」
「お姉ちゃんが得するだけな都市でしょ、どうせ。僧侶の村々を希望します。あと、私の使い魔を一緒に探してほしいです」
「地図が欲しいな。出発前に手に入れよう。それから誰か物凄い高い木がある場所知らないか?」
3人に聞いてみる。
「なによそれ? 優斗の故郷?」
「いや……あのお姉さんと居た場所を特定するうえでヒントになりそうだから……クレアはどっか行ってみたい場所とか、見たいところとかないか?」
「クレアは……特に……」
この時、もうちょっと話を聞いてあげるべきだったと、俺はすぐに後悔することになる。
短期間で俺の予想をはるかに超える成長を遂げた3人。
このままずっとこのメンツで旅を続けられると思ったのだが……
それは俺の浅はかな考えだったと思い知らされることになった。




