第10話「双子姉妹とメイドさん①」
「いらっしゃいませ!」
条件反射的にミイニャが声を出し、会釈したのはわかったが、俺は固まってしまっている。展開早すぎだろ! なんでカフェに来たんだ……
「……この店じゃ、お客さんに挨拶も出来ないの? ああ、そっか。何か気に障ったら、ちゃんと話もしないで、即逃げる召使いが手伝ってるんだったわね」
いきなり先制のジャブか、こいつ……
マアニャは俺から視線を一度も逸らさずに、俺の目の前のカウンター席へ腰を下ろす。
「あの、私は戻っても……」
その雰囲気を察知してか、クレアは少し脅えて確認を取った。
「そっちのテーブル席に座って、好きな物食べてなさい」
「はい……」
「テーブル席は私が。優斗君はカウンター席のお客様をお願いします」
ミイニャはすでにカウンターを出て、クレアを案内しておしぼりを出している。
クレアの接客を俺に任せてくれればいいのに……なぜに俺がこの明らかに怒っているマアニャの接客を……
「……こちらがメニューになります……」
「あっ、そう」
マアニャは不機嫌そうに渡したメニューに視線を走らせる。その間に俺はおしぼりとお水をさっと手近なところへ。
早く戻れ、ミイニャ。何クレアと二人で楽しそうに話してる!
「ペペロンチーノがないけど……」
メニューを見て一言。
ランチタイムは11時30から2時までだから、2時を過ぎた今はメニューも変わっている。
ちなみにだが、俺がここでこうして働くまで、この店にランチメニューなど存在していなかった。
「もうランチタイムは終了しましたので……」
「それは残念ね」
食べる気なかったくせに何言ってんだ……
「よくわからないから、あなたのおすすめを戴くわ。飲み物とデザートね」
「……かしこまりました……」
俺は冷蔵庫に向かい、残っているケーキとゼリー類からマアニャの好みに合いそうなものを選定
(ランチはサンドイッチとデザートはプリンだったな……チーズケーキとアイスレモンティでいいか……チーズケーキ好きだしな)
「なんかあたしに言うことはないわけ?」
「……少々お待ちください……」
「馬鹿! 店員としてじゃなくて……男の子としてよ」
「……」
何を言ってるんだ?
「何を出そうとしてるんですか?」
やっとミイニャが戻ってきて、俺を小突いた。
「えっと、チーズケーキとアイスレモンティ」
「用意は私がするので、優斗君はお客様のお相手を……ちゃんと謝れるはずです。意地を張らないでください」
簡単に言ってくれるぜ。たしかにそれ自体はイージーだからな。ため息をついて、マアニャの向かいに移動し、
「……先ほどの無礼をお許しください。自分でも嫌な態度だったと反省してます」
「そう……勝手に勘違いして怒るんじゃないわよ。説明してあげようとしたのに、さっさと出てっちゃうし」
「勘違いといいますと?」
「あたしはあなたを傷つけるつもりなんてなかった。あなたの眼を閉じた顔がほんとに可笑しくって、しようとした行動が妨げられたのよ! 普通に目を閉じなさいよ! 感情がモロに表情に出ちゃってたんだもん、あははは……」
マアニャはまた思い出したのか、ちょっと吹き出した。




