第33話「ジュースで乾杯!」
マアニャに氷魔法で両足を凍らされた騎士は、クレアに問答無用でボコられていた。
モーションが速いボディへの連打、顔面へも容赦なく入れていき、フィニッシュは武術で唯一俺が教えた左右のアッパーで……凍っていた足がその氷から抜けるほどの威力。
こっちに飛んできた騎士を確認する。
「お~い、生きてるか?」
ぴくぴくと動いてはいるが完全に気絶していた。
「マアニャさん、やりましたよ」
「クレア、ナイスよ」
笑顔でハイタッチする二人。余裕と言うやつですね……剣術使わずに……
忘れてもらっては困るが、名ばかりかもしれないが騎士なわけで、数日間の訓練でどうにか出来る相手ではないはずなんだけど……
「やばいな、クレアにセクハラが出来なくなってしまう……」
あの攻撃受けたら無謀な俺なら大ダメージを受けそう……
「優君、教えられた通りできたかな? 見ててくれた?」
駆け寄ってくる二人、いや三人に俺は苦笑気味の表情を作りながら、
「最後だけな。強くなり過ぎだぜ。クレアだけじゃなく、マアニャとミイニャも……」
なんていう成長速度してるんだ、この3人。
「優斗君、お姉ちゃんは援護だけで、倒したのはあくまでクレアと私ですから忘れない様に! お姉ちゃんにご褒美は要らないですから」
「なっ、何言ってんのよ! クレアはアタッカーなの。サポートして色々試してたのよ。戦闘は今回限りじゃないのよ。分析して戦略を立てる……戦いの基本でしょ」
「言い訳はいい。倒していないと言う事実は誰が見ても明らか」
「こっ、この……なら回復させなさいよ。3人共でもいいわよ。あたし1人でぎたんぎたんにしてあげるわよ」
双子姉妹の言い争いにはもう慣れた。
「はあ~、回復させなくていい。また面倒だ。マアニャはよくやった。たまたま今回は倒したのがミイニャとレアの2人だった。ミイニャだって見てたらわかるだろ」
「ほら見なさいよ」
「……優斗君は特にお姉ちゃんに甘い気がします。お姉ちゃんみたいに私も助けられてみたいです」
「ミイニャ、頼むからわざと捕まるとかはしないでくれよな」
「……はい……」
その返事はわかったって意味だろうな?
一瞬の間が不安になるのだぜ。
とりあえず闇騎士の3名は頑丈な牢屋に入れ、念のためマアニャとミイニャが魔法で鍵と檻に細工したみたいで、絶対に出られないと自信満々に言っていた。
ホテルに戻った俺たちは、今日は大浴場にはいかず、部屋のシャワーを順番に使いあとは寝るのみ。
誰にも怪我がなかったとはいえ、俺的には結構精神面でつかれていた。
あの3人に思いっきり甘えて、俺の方こそご褒美が欲しいぜと思ってしまう。
3人が使った後、シャワーを浴びて浴室から戻ってくると、テーブルには大量のお菓子と飲み物が並べられていて、クレアに手を引かれソファに座らされる。
「では、このパーティの全員戦闘参加での初勝利を祝って乾杯するわよ」
テンションが高い……俺はもうすやすやお休みしたいのです。
オレンジジュースが入ったコップをミイニャがさっと渡してくる。
「はい乾杯」
俺は素早くコップを上げた。
「ちょっとなにフライングしてるのよ。優斗だって、あたしたちが成長してくれて嬉しいでしょ。祝いたいでしょ?」
「そりゃあまあお祝いは嫌いじゃないし、急激な成長はこの上もなく嬉しいぜ」
「だったら……出鼻をくじかれたけど、乾杯よ」
グラスを3人と軽く当て、ぐびっと喉に流し込む。
「優君、もしかして疲れてますか?」
「ちょっとな。まあ明日は昼間特に用事があるわけじゃないし、訓練は各々で体力回復優先にした方がいい。初戦闘で疲れてるだろ?」
「ん、全然」
「問題ありません」
「クレアも凄い元気だよ」
体力すげえな……
「まあ優斗は疲れてて当然よね。あたしたち3人と自分の訓練もして、守りながら戦ってくれてたんだし」
「わかってるじゃないか。じゃあ楽しんでくれたまえ、俺は先に休むぜ」
立ち上がろうとした俺の左右の手をクレアとミイニャに引っ張られる。
「優君が居ないと話にならないよ」
「優斗君、魔法で少しは元気に出来るかもしれないです」
ミイニャは俺に左手を広げ、
「ルドモムイタ!」
と、唱える。
おっ、おお……
「すげえ、なんか楽になってきた。ミイニャ、完全に僧侶らしくなってきたぞ。どんな魔法?」
「簡単に言えば疲労を少しだけ改善する魔法です。寝る前には私がマッサージもしてあげます。一緒に寝るのは当たり前ですが、私なので」
今日がミイニャで明日はクレアか。滞在は明日迄かもしれないからな。
「ありがとうだぜ。これならもうちょっとは起きていられる」
ぐびぐびとジュースを無言で飲んでいるマアニャとクレアのジト目がちょっと面白い……
「優斗がシャワー浴びている時に3人で考えたんだけどさ、やっぱりご褒美って1人が貰って、あとの2人は次頑張ろうって気持ちになった方がいいと思うのよ。優斗さ、誰と熱いキスがしたいの?」
「……何をいきなり……」
「ふっ、まあ答えられるわけないわよね。だと思って、これも3人で考えたわ。じゃじゃーん」
マアニャはトランプをテーブルに置いた。
トランプ……トランプだな。何をしようというのだろうか?




