第32話「優斗VS闇の騎士」
2人の騎士はその光景に言葉が出ないのか、唖然としているのか、腹を立てているのかわからないけど……
「話が終わったようなので。視界に入る気持ちの悪い人か魔物かわかりませんが、退治しました。弱いですね、闇の騎士。もう少し強いのかと思いましたけど……」
やっぱあの魔法すごいんだな。鎧を着てる騎士には火と風の混合。
俺が受けたのは水と風の混合。ミイニャは唱えるとき意識的に弱点属性を見極めているのか、うんのよさが働いているのかはわかんないけど、いずれにしても相当使えるな……
「ミイニャ、あなたいきなり何してんの! 優斗は先制攻撃しないようにって釘刺したでしょ」
マアニャはあのくらい自分でも出来たと言っているような顔で妹を見る。
「大したお話じゃないし、もう話すつもりは無さそうなので、タイミング的にはグッドかなと。なんならあと二人……いえ、そこのいらっとカッコ悪い最低さんは優斗君がぶっ飛ばすので、右の人も私がやりましょうか?」
すげえな、改めて感心するぜ。うんのよさが振り切れているミイニャ。
たった数日で……相手は騎士だぜ。脱退者とはいっても訓練期間は長期のはず。それをいとも簡単に……
頼もしくさえ思ってしまう。
「ミイニャ、あとでナデナデしてあげよう」
「ありがとうございます。ハグしながらお願いしますね」
「あたしもやるわよ」
「クレアも、クレアも」
「真ん中の奴は俺がやる。マアニャとクレアは連携して右の奴を。無理はしなくていいけど、右のもたいしたことはない。倒せるはずだから自信もって」
「倒したらあたしには熱いキスね!」
「クレアも熱いキスがいいな」
「クレアもお姉ちゃんも何言ってんの! ハグしてもらってなでなでしてもらい、熱いキスを受けるのは私です」
「てことで、1対1でやろうぜ。カッコ悪い最低騎士さん。魔力でもなんでも使え。ただし背中を向けた時点で躊躇しないで斬るからな。覚悟してかかって来な」
俺は横目でマアニャ&クレアの初実践を観察しながら、鉄の兜を装備している闇騎士と対峙する。
「まさか君か? 闇の教団の1人をやったっていうのは?」
闇の教団とつながりがあるなら、噂くらいは耳にしていてもおかしくはないか。
「その質問はイエスだな」
「では心してかからないといけないな」
そいつは長い剣を抜き、構える。
デカいな。刃の部分だけで2メートルくらいありそうだ。攻撃射程は凄そうだけど……
「長過ぎだろ、その剣。まともに振れるのかよ?」
「君みたいなのが相手にはちょうどいい武器なんだよ」
何を言っているのかさっぱりわからなかった。
薄ら笑いを浮かべた後で、そいつは俺にではなく、あろうことか戦っているマアニャ目掛けてその剣を振るう。
あまりにも不意に剣の刃が向かってきたものだから、マアニャは悲鳴をあげたようだった。
(間に合え、間に合わせろ!)
ガシャン!
本当にぎりぎりで俺はその刃をマアニャに触れる寸前に二本の剣で防いだ。
動くのが後ほんの一瞬遅かったら……
もっと気を配らないとこの先ダメだ。絶対に傷つけさせない、失わない。肝に銘じないといけない。
「戦闘中に目はつぶるなよ。隙が出来ちまうぞ」
「……優斗……」
「大丈夫。怪我はさせない。安心して自分の相手をクレアと倒せ。出来れば少しだけ離れて戦ってくれると助かるかな。それからファイラァを剣に向けて唱えてくれるとありがたい」
「うんっ。ファイラァ」
マアニャが頷き、遠ざかっていくのを見て、俺は受け止めている刃を2本の燃え上がった剣に力を入れてへし折った。
「きたねえな、汚いな。最悪に汚すぎる。仮にも騎士のやることじゃねえ。俺はお前みたいのが一番大嫌いだ」
「なんだそれは?」
「魔法と剣を融合した魔法剣も知らねえのか。使えよ、魔力。刃は折ったぜ。他にお前なんかに手札はないだろ」
「そうじゃない。二本の剣」
「無知すぎるなお前。剣士の二刀流は常識だろ」
速度を上げ、一瞬で間合いに入った俺は剣に意思を込め相手の眼を見据える。
「おいおい、気合だけだぜ。どうしたよ、下がるんじゃねえよ、恐怖するんじゃねえよ。寝取られだ! 笑わせんな」
俺は燃え上がる刃をそいつの鎧に振り下ろす。
その一太刀は、鎧に傷を付けると同時に発火させる。
折られた剣から黒い炎を出してそいつは、完全なる殺意を俺に向けた。
なんだその目は? 殺意を向けたいのは俺の方だ。
「黒い炎、たしかカシムって奴は紫だった。その色に意味があるのか?」
「死ね!」
答えになってない。それだけじゃ死なねえよ。そういう奴に限って、死を予感したことなんてないんだ、俺は何度もあるんだぜ、ば~か。
右の剣で黒い剣のそれを止め、左の薙ぎ払いでみぞおちに命中させた刃を思い切り振りきった。
30メートルくらい飛んだかな。
「死なれちゃ後味悪いから、加減はしてやった。馬鹿野郎が!」
まだ燃え上がっている刃。一度横降りして火を消して鞘に戻す。カシャンと言う音と一緒に俺はふぅと息を吐いた。
悪い癖、最大の欠点がまた表に出てしまった。
マアニャに何もなかったことに改めてホッとする。
さて、マアニャとクレアの方は……どうかな? と視線を戦闘中の2人へ。




