プロローグ
「う~ん、君のこれまでの人生は不幸だったね。幸せに好転する瞬間は何度もあったのに……ことごとく間違った選択をしてしまった」
真っ暗闇に浮遊している感覚だけがある。
なんでこんなところにいるのか? 何があったのかまるで思い出せない。
「世界は一つだけじゃない。一つの世界で不幸な運命を辿った君だけど、まだ若いし、幸せになりたいと願っているだろ?」
頭の中にさっきから声が聞こえる。
俺は願っているのかな?
そりゃあ不幸より幸せの方がいいに決まっている。選択権があるのなら、自分の幸せを願わない人なんていないはずがないだろ。でも、正しいか正しくないかわからないからこそ……
「了解、了解。君のこれまでの人生をスキルと言う形で持って行きな」
黄色い光が体の中に入り込む。
「あちゃあ……外れスキルかぁ。とことんついてないな、君は……いや、このスキルは確か……なるほど、そういうことか。君らしいスキルだな。運命選択間違い123回とその外れスキルに免じて、もう一つおまけスキルもあげちゃうよ。なんて優しいんだろうね」
体に青い光が宿った……気がした。
「さあ今度こそ人生を楽しむんだよ! 分岐の選択肢を間違わないように……いや、これ以上はいらぬお節介か!」
「……」
「なに、もう少し説明してほしい……う~ん、勘違いしないでほしいが君は死んではいないよ。不幸の蓄積許容量オーバーの為、別の世界に転送されるんだ。幸せになる権利を君は有している。その外れスキルがそれを物語っている。いらぬお節介だけど、何か君には助言したくなっちゃうな。ネバーギブアップ。幸せになりたいと心底願うんだ。最初は辛いかもしれない、でもだからといってそこで絶望したら、道は閉ざされる。行ってらっしゃい。この先の幸運を願っているよ」
体がブラックホールのような物に吸い込まれていく。
自分の体がどういう状態なのかもわからない。
まあいいや、少しだけ眠らせてくれ。
☆ ★ ☆
目を覚ましたその瞬間から、2年間にも及ぶほぼ地獄の訓練は開始した。