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じーさんず & We are  作者: Tro
#2 魔導師で章
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#2.3 最後の晩餐

 ご老人達は食後の散歩を楽しんでいるようです。随分と頑丈なので呆れています。大魔王を先頭にぞろぞろと歩いていますが、先方から女性3人が歩いて来ました。それを見た大魔王が慌てて老人達を木陰に引きずっていきます。どうやら隠れるつもりのようでが、それに不満なアッ君です。


「なんだ? 何故隠れる?」

「シー、静かにしろ」

「庭もゆっくりと歩けんのか」


 すっかり自宅の庭を散歩している気分のシロちゃんです。


「奴らは魔王の子分だ。逃げるが勝ちだ」


 彼女達3人と、ここにはいませんがもう一人を含めた私達5人は……それは後程ご紹介いたしましょう。

 彼女達を見送る老人達です。それが見えなくなると安心したかのようにため息をつく大魔王です。


「アッ君とシロちゃんはさ〜、少しは学習しろよ。触らぬ神に祟りなしだぞ」

「神か、ああ、そうかもしれん。わしは見たんじゃ」


 シロちゃんが頑張って記憶を辿っているようです。これに懲りたらもうオイタは止めましょう。そんなところで大魔王が二人の前に立ちはだかります。


「ところでさ、お前達、何時まで此処にいるつもりなのさ。ここは老人クラブじゃないんだぞ」


 厄介者のアッ君が、目をこれでもか、というくらい見開いています。


「何でそんなに追い出したがるんだ? 大魔王ともあろう者が」

「いや、誰だろうが自分の家に他人が居座られたら嫌だろう」

「こんなに広いのにか」

「そこじゃないだろう」


「あれじゃろう、」

 今まで空を見上げていたシロちゃんが突然、割り込んできました。ボケているのかと思いましたよ。


「魔王が、あの小娘が邪魔なんだろう」


 大魔王とアッ君がほぼ同時に口をアングリと開けています。そしてその口に指を当てて、こう呟きました『シー』と。


「なんだ、図星か。なら話は早い。いっそうの事あの小娘をだな、」


 会話の途中ですが、大魔王とアッ君がシロちゃんを担いで何処かに行ったようです。何故かって? こうして私が監視しているからじゃないですか、おほほ。



 さあ、楽しい夕食の時間になりました。優しく寛大な私は、ご老人二人とおまけの大魔王を招待したところです。今夜はきちんとテーブルマナーを守って頂けるでしょうか。


「いいな」


 何やら大魔王が他の二人と申し合わせをしているようです。


「わかった」

「わかっておる」


 それはそれは小さなお声です。何か聞かれてはまずいことなのでしょうか。ご馳走の載った皿が目の前に配膳されても、それを大人しく見ているだけです。餌を我慢している犬のようでもあります。今か今かと飼い主の許可が下りるのを待っています。


「では、始めよう」


 大魔王の合図で三人は食事にガッツき始めました。そこは変わらないようです。食器が奏でるガシャポン、ズルズルポーとクッチャリペロリン以外の音は聞こえてきません。まあ、良いでしょう。私と彼等とはだいぶ席が離れていますし。逆に静かな三人の方が気味が悪いです。


「無事、終わったようだな」


 大魔王が食事の終わりを確認したようです。三人の顔に満腹の表情が浮かんでいます。これで私も食事を与え……提供した甲斐があるというものです。


「魔王様」

「なんで下手に出る? 相手はたかが小娘だぞ」


 アッ君がシロちゃんの頭を思いっきり叩きました。すごい勢いです。あれでは叩いたアッ君の方も、さぞ痛いことでしょう。乱暴はいけませんよ、乱暴は。


 私は、右手を上げる大魔王に発言の許可を与えます。まるで教師と生徒さんです。学校ゴッコがしたい年頃なのでしょうか。


「魔王様、この二人が折り入ってお話ししたいことがある、そうなのですが」

「どうぞ、構いませんよ。別にそう改まらなくても宜しいですよ」

「お許しが出た。さあ、お前たち、頑張れ」


 アッ君とシロちゃんがお互いを見合って牽制しています。その小競り合いに負けたシロちゃんが発言するようです。


「ああ、ワシはとっても良い情報を持っておる。どうだ、それを買うてはくれんか」

「はあ。で、どのような情報なのでしょうか」

「おほん。第14回特殊災害派遣に関する情報じゃ。どうだ、欲しかろう」

「3名の勇者が派遣されるそうですね」

「な、なんで知っておる」

「私を、誰と、お思いか」

「ただの、皮肉れた小娘じゃ」


「バッキャヤロー」


 いきなり立ち上がった大魔王はシロちゃんの首根っこを押さえつけました。当のシロちゃんは「ふん」とよそ見の最中です。その隣でアッ君がガタガタと身体を震わせているようです。


「良いですよ。どうせ私は若くて綺麗なお嬢様育ちですから」

「うそつけ」

「何にか言いましたか? 大魔王」

「いいえ! 何も」

「では、話の続きを聞きましょうか」


 今度はアッ君が話を続けるようです。


「既に知っているようだが、もっと知りたくはないか? その3人の特徴とか性格、生い立ちなどだ。聞くところによると、今回はお前さんが負ける番らしいじゃないか。どうせ負けるにしても相手の癖などを事前に知れば、被害が少なくなるだろう、どうだ?」


「……」

「言葉つかいに気を付けろと言ったろう!」


 大魔王が何やら、あたふたしているようです。ですがもう、逃げ出す準備をしているようです。仕方ありません。私が何もしない証拠に返答してあげましょう。


「学生で男性2人、女性1人のチームと聞いていますが、アッ君。あなたは自国を私に売るのですか?」

「そうではない。こんな茶番を早く終わりにしたいだけだ。俺のような被害者を出さないようにな」

「ちょっと待て、アッ君。今、『俺のような』と言っていたが、わしもその中に含まれているよな?」


 いきなり、今まで他人のふりをしていたシロちゃんが割って入ってきました。ご自分のこととなると、どこまでも強欲の方のようです。


「お前のことなど、知らん。『俺のような』と言ったら『俺だけ』のことだ」

「バカを言うな! 普通『〜ような』と言ったら、わしも入るじゃろうが!」

「ジジイは引っ込んでろ。お前のような奴がおるから、俺が苦労するのだ」

「お前達! 止めるんだ。魔王様の御前を忘れたか」

「知るか! そんなこと。お前もいちいち小娘の顔色を伺うのは、いい加減に止めろ」

「俺も好きでやってる訳じゃないぞ! この老いぼれ共が」

「アホなのか? お主らは。わしが一番じゃ」

「何が一番なんだ!」

「うるさい! こうしてくれよう」


 ああ、みっともない争いが始まったようです。私はここから退散することにしました。もう、付き合ってはいられません。お好きなように暴れてください。では。


「小娘が逃げおるぞ! 全部、あやつのせいじゃ。やっちまえ!」

「それは、その、だな」

「俺は逃げる。達者でな」

「おい! どこに行く?」


 ああ、もう、全く。これでは、お灸が据えねばなりませんね。今一度、私が誰なのかを知らしめる必要があるようです。はあ。


 聞き分けのない三人は、この場を吹き飛んで行かれました。それも何時も以上に遠く何処までも。星になられた方々にお祈りを捧げましょう。いつかまた会う、その日まで。



 ということで、次回『私はこうして魔王になりましたよ、え編』を予定していましたが、大魔王達が不在になったため、機会を改めさせて頂きます。

 その代わり大魔王とその不愉快な仲間達を大魔王の語りで紹介いたします。では、またお会い致しましょう。ご機嫌よう。

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