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じーさんず & We are  作者: Tro
#11 愛がぶつかったで章
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#11.2 魔王覚醒と運命共同体

 こうして帰路に就こうとした時です。武装した人達が襲撃してきました。咄嗟に剣を構える太郎です。銃を構える人には栄子が弓を振り回します。


「お前たちは誰だ」


 太郎の問いかけに相手は答える気がないようです。短剣で斬りつけて来ては離れ、次郎を背負う太郎の疲労を狙っているようです。近接戦では役に立たない栄子。これはいけません。私が現地へ、と立ち上がると夏子も頷いています。いざ、です。とその時、援軍が突如として現れました。秋子です、秋子が突然、戦場に現れました。どうしたことでしょう、少しだけ霞む煙のようなものの中から片膝を付けた、格好いい登場です、憧れです、今度真似てみます。


「あれ、あれ、まあいいわ。あなた達、直ちに止めなさい」


 秋子の制止も聞かず襲撃者達は問答無用で襲ってきます。無謀です、逃げて! 秋子。


「キャー、来ないでー」


 秋子の声で武装した人達が吹き飛んでいきます。これは、この力は、まさかあなたにも。

 吹き飛ばされた人達が尚も立ち上がり向かって来ます。今度こそ相手も本気、全力で向かって来ます。逃げて! 秋子。


「やめてー、来ないでー、えい!」


 武装した人達が見えなくなるまで吹き飛んでいきました。間違いありません、その力、その威力、正しく魔王の力です。秋子ったら何時の間にそんな力を会得したのでしょうか。まさか、あの時に。


 夏子が立ち上がりました。そして携帯で電話を掛けています。


「秋子、夏子です」

「秋子です」

「その子達を連れて私達の所まで飛んでこられないかしら」

「飛ぶんですか、ビューンと」

「そうです、今のあなたなら出来るはずです、魔王の力を手に入れた貴女なら」

「魔王の力……そうかもしれません、やってみます。でもどうやって」

「それは魔王が説明します」


 夏子が携帯を私に向けてきました。驚いている暇はありません、やります。


「秋子、魔王です。いいですか、皆んなと手を繋いで行きたい場所を思い浮かべてください。私達は会議室にいます。それで出来るはずです、頑張って」


「分かりました魔王、やってみます」


 早速、秋子が太郎と栄子の手を取ります。太郎は大丈夫ですが、栄子が何気にビビっています。でも怖がっている暇はありません、覚悟しなさい。


 秋子は目を閉じてイメージを高めています。そして「えい!」と叫ぶと、会議室にドンと出現しました、瞬間移動です。


「こんにちは」

「おう」

「ホギャホ」


 出現時の秋子、太郎、栄子の感想です。突然現れた秋子に全員が駆け寄ります、勿論、私もです。


「「秋子!!」」


 これで本当に(すみれ)組全員が揃いました。こんな時ですが感無量です。


◇◇


 栄子達をアッ君達が居る部屋に放り込んだ後、本格的に対策本部の始動です。今のところ政府に動きがないため、隣国のテレビを見ています。どのチャンネルも平和そうで、つい見入ってしまう私達です。そんな中、ネットをしている冬子が首を傾げています。


「おかしいわ。先程からネットの繋がりが悪くて、SNSも何だか歯抜けになっているような」

「政府が妨害でもしているのかしら」


 そんな時です。冬子の部下が慌てたように駆け込んできました。


「何ですって」


 冬子の声に注目する私達です。何か良くない胸騒ぎがしてくるのです。


「皆さん、今入った情報によると隣国の各都市が何者かの攻撃で壊滅状態になっているそうです」


「「ええー」」

 一同、びっくりです。そんな大変なことになっているのにテレビは平常運転ですから。これはもしかして情報統制されているのでしょうか。


「冬子、通常の情報では何事も起こっていないようだけれど」


「ええ、私の方ではネットが使用できない場合も考えて衛星回線も利用しているのです。それで各地方の情報を収集した結果、そのような事になっています。それが伝達されないのは恐らく政府が隠匿しているのでしょう、大都市圏ですから」


「分かったわ。多分、何者かというのは別世界の魔王の事でしょう。重要なのは、その別世界の魔王が私達にも攻撃してくるかどうかよね」


「あら、これは変ね。各都市で攻撃が始まった時刻がほぼ同じだわ。まるで分身の術でも使っているのかしら」


「そんな事も出来るのかしら、どう思う? 魔王」

「どうでしょう、私も全てを把握しているわけでないので」


「分かったわ。でも皮肉なものね。私達に対抗する力で自分達が攻撃されるなんて。そうなると、そろそろかしら」


 そろそろ、何が起こるのでしょうか。その疑問に答えるように政府からホットラインがきました。これが夏子の言っていたことなのでしょう。早速、ホットラインの映像がテレビに映し出されました。そこに映るのは、多分、首相です。


「魔王及び皆さん。私は政府を代表する首相です」

「「こんばんわー」」


「率直に申します。現在我が国では未曾有の大災害が発生しています。これ以上の被害を避けるために、貴国に協力と援助をお願いしたいのです」


「何があったのですか」


 事情を知る夏子が意地悪そうに質問しています。どう答えるのでしょうか。


「正直に言いましょう。突如、魔王が襲ってきたのです。その魔王とは貴国の魔王のことではなく、別の世界から、どうやって来たのかは分からないが、猛威を振るい始めたのです。恐らく別の世界でも我が国と敵対しているのでしょう。とにかく見境なく攻撃してくるため、我が国ではそれに対抗する力が無いのです。そこで同じ魔王の力を持つ貴国に協力を求めたいのです」


 いくつか事実とは違うことを言っていますが、さて、どうしたものでしょう。今のところ私の国は被害に遭っていません。それに、もしこちらに歯向かうものならやっつけてやりますけど。


「それで、現状は、被害状況はどうなのですか」


「主だった都市は壊滅、その、残っているのは政府のあるこの圏内だけです。ここが襲われれば勿論、貴国にも被害が及ぶものと思われるが」


「その、別の世界の魔王は今、何処にいるのですか」


「今現在は所在不明になっている。ただ最後にここを襲撃すると予告があり、それも盛大に、とのことです。ここは協力して頂けることを強く望むものです。もはや運命共同体と言っても過言ではないでしょう」


「お話は伺いました。後程ご返答いたします」

「良い返事を期待します。しかし我々には時間は余り残されていないのです、早急のご返答を望みます」


 これでホットラインが切れました。発言の殆ど、いいえ、全てを夏子に頼っているのは、魔王としては反省しなければなりませんね。


「もはや運命共同体なのです」


 冬子が首相を真似て遊んでいます。いけませんよ、一応首相ですから。それを笑いながら議長の夏子が続けます。


「さて、どのみち協力することにはなるでしょうけれど、無償という訳には行きませんね。何か良い条件を考えてください」


 春子が急に秋子に向き合い、何やら心配そうにしています。


「ところで秋子、さっきので秋子が向こうに写ってしまったと思うけど、大丈夫なの? スパイの真似事をさせているけど、それがバレたのではないですか」


「大丈夫ですよ、私がこちらとのパイプ役だというのは先方も承知していますから。それと春子、私はスパイの真似事をしているのではありませんよ、スパイそのものですから」


 今まで無言の私です。そろそろ発言しなければいけませんね、どうしましょう、こうしましょう、やっと思いつきました。


「私は領土を広げたいです」

「それは良いですね。ではどの位要求しましょうか」

「2倍位で」

「では10倍を要求しましょう。皆さん、如何ですか」

「「賛成です」」


 あっという間に決まりました。提案できてホッとする私です。しかしこの条件を政府に通達する頃には10倍の領土拡大でから100倍にまでつり上がっていました。無茶な要求をしたものです。ですがその結果が出るのは明日の朝まで掛かるとのことでした。それまであなたの国が存続していれば良いのですが。


 政府の結果待ちとなった私達は一旦お開きにして、明朝に再開することなりました。それまでは暫しの休憩です。お疲れ様でした。

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