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じーさんず & We are  作者: Tro
#7 栄子と呼ばれたで章
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#7.1 魔王城

 むかしむかし、あるところに、ひとりの少女……乙女がいました。それは大層働き者で、世のため人のためと日夜頑張っていたのです。ですがそんな乙女から、お国は絞るだけ絞って、更に働け、お国に尽くせと迫るのでした。その期待に応えようと乙女も全てを捧げて頑張りましたが力尽きてしまいます。そして『私なんて、私なんて』と不甲斐ない自分を責めるのでした。そんな落ち込む乙女に吉報が届きました。隣の国では働けば働くほどお給金が貰える、上納金も僅かと聞き及び、乙女はその国に行くことを決心したのです。するとどうでしょう、もともと頑張り屋さんの乙女はその働きが認められ見る見るうちに、いいえ、一気にその国の天下を取ったのです。そんな乙女を今では親しみを込めて『魔王』と呼ぶようになりました。それが私です、えへん。


 私の祖国の一等地に高く聳えるビルが4棟、それが四方に立ち並ぶその区画が私が適当に呼んでいる魔王国です。そうです、国の中に国があるのです。その魔王国唯一の企業であり世界に名だたる大企業のトップ、それはこの国のトップを意味し、社長兼国王を便宜上『魔王』と呼んでいます。ですから従業員は国民でもあるのです。国民を愛しみ平和な国造りに日々邁進する、それが私に課せられた使命であり役目なのです。


 今日も忙しく世のため国民のためと執務室で山積する諸問題をテキパキとこなす私の元に一本の電話がかかってきました。それは我が国に時々喧嘩を吹っ掛けてくる政府直属の特殊災害派遣部局、そこの室長からです。


「お元気ですか、魔王」

「はい、元気です」

「先日は、うちの者が色々とご迷惑をお掛けしました。申し訳ございません」

「良いのです。ちょうど大魔王が相手をしましたから。あれならどうなっても構いませんから」

「そう言って頂くと幸いです。今回は一部の者が暴走していまい、その原因究明のために動いているところです」

「宜しくお願い致します」


 電話の相手、特殊災害派遣部の室長とは、あの秋子さんです。お国は別々になってしまいましたが私達は(すみれ)組なのです。こうしてまたお話が出来るようになるなんて夢にも思ってもいませんでした。ですがお互い、収まるところに収まって頑張っているのです。


「私が思うには、例の4人組が怪しいと睨んでいます」

「やはり、私もそうではないかと。夏子も同意見でした」

「あの人達、どうしてかしら、上手いこと特殊災害の顧問に収まって、影でこそっと何やら怪しいのです」

「それは、私の失策ですね、ごめんなさい」

「あなたが謝ることではないです」


 例の4人組とは元副社長で夜逃げを図った人達です。温情で処刑から国外追放にしたのが裏目に出てしまいました、不覚です。次いでに国外追放したあの部長も気になるところです。腹黒くエロい人でしたから。


「いいえ、叱ってください。それに秋子を付け狙っていた、確かケンジ部長でしたか、あの人もそちらの国に放ってしまって。身辺には気をつけてくださいね」

「ありがとう、気遣ってくれて。それはそうと勇者候補のあの子達はどうなりましたか」

「あの子達は私のところで引き取っています。安心してください」

「それは良かったです。戻ってもロクなことにはなりませんから。これで借りが出来てしまいましたね」

「借りだなんて、きっとあの子達も役に立ってくれますよ」

「ありがとうございます」

「いいえ」


 あの子達とは少年A、Bと少女Aの3人のことです。南の島からそのまま一緒に連れて来ました。今では立派な従業員で国民の一人、納税者です。


「そうそう、肝心な事を忘れるところでした。今回の件で政府が謝罪したいということです。如何致しますか」

「勿論、お受けいたします。良い関係は維持したいですからね」

「わかりました。本来なら、こちらからそちらに伺うべきなのですが、誠に勝手ながら所定の場所にて謝罪を行いたいとの意向ですが、その、」

「秋子が気遣うことはないですよ。事情は分かっています。何でも言ってくれて構いません。これが秋子でなかったら、ムッとしているところですけど」

「やはり気に入らないようですね」

「えっ、分かります? おかしいですね」

「フフ、では日時と場所を調整しますので後程に」

「分かりました、お願いします」

「では」

「はい」


 私の国はあの国から敵国扱いされていますので、いくら隣国といえども気安く国の高官が行き来できないのです。謝罪の申し入れがあったとはいえ、それは非公開、こっそり行わなくてはなりません。そこで謝罪を受ける側がわざわざ出向かなくてはならないのです。変な話ですね。


 ところで、あの『じーさんず』、気になります? 私は気にせず、あの島に置いてきました。だって、いらないんだもん。


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