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じーさんず & We are  作者: Tro
#6 私はこうして魔王になったで章 天職編
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#6A.1 転職、天職

「わたーしは、」

「はい採用。隣の部屋に移動して」


 お待たせしました。『私はこうして魔王になりましたよ、えへん』を紹介いたしましょう。別に自慢するわけではありません。ある意味、私の不幸の物語でもありますから。実際は魔王になりましたよ、ではなく、なってしまったというべきでしょう。では始めます。


 むかしむかし、あるところに、綺麗で美しく可愛いお姉さんがいました。そのお姉さんこと私は日々お仕事に励んでいました。労働の喜び、人生の目標を掲げ、それに向かって頑張っていました。

 自分で言うのも恥ずかしいのですが、いずれバレてしまいますので早めに言っておきますね。頭脳明晰にして容姿端麗、何をやってもやらせても、そつなくこなす優れ者。そんな私は当然、各方面から貴重で優秀な人材として引っ張り凧でした。その糸が切れてしまわないか心配した程でです。


 しかし、どんな優秀で有能であっても一介の労働者、一人の国民であります。私の稼ぐお給料から6割もの税金を国がかっさらっていきますのです。はっきり申しまして、これではどんなに稼いでも私の理想には届きません。いきなり私の理想が出てきましたが、ここでこっそりと打ち明けましょう。それは、あまり働かずまたは働かないでお金を稼ぎ、悠々自適な生活を送ること、というとっても細やかな願いであります。しかし世間の風潮は、お国のため、奉仕精神が大事と、納める税金の額を競う有様です。また無償で提供する労働は美徳とされサービス残業という言葉は無くなりました。全てはお国のためです。バンザイ。


 ある時私は、お得な情報を入手いたしました。それは隣国での税金は4割という噂でした。そんな破格な条件を聞きつけた人達はこぞって隣国に出稼ぎに行くようになりました。その後、隣国から聞き漏れる成功談の数々。やれ給料が上がっただの、余裕が出来て新築の家を建てたといった夢のような噂話が囁かれていました。そしてそれは、私の周りから一人、また一人と姿が消えていくことで確信したのです。


『私も行きたい!』


 その隣国、実は私の国と敵対関係にあったりします。そのため我が国は税金の殆どを防衛費に充てています。これが税金が高い理由です。そんなオッカナイ国に行く、それはどれほどの危険が待ち受けているのでしょうか。ましてそんな国に出稼ぎに行こうだなって正気の沙汰ではありません。ですが私の国と隣国では一度も紛争らしき事が起こったことはありません。そうですね、国際関係については余り情報が少ないという欠点があります。本当は何かヤバイ展開が起きているかもしれませんし、入国したら二度と戻っては来れなくなるかもしれません。それほど、隣国の国内情勢や我が国との関係は良く知られていません。


 しかしです。その危険な国に渡り成功を収めた強者達の武勇伝は数え切れないほど噂になっています。ハイリスク・ハイリターン。ああ、なんという良い響きでしょう。まだ噂の段階ですが、このチャンスを逃してはなりません。何時やるのですか? それは今です。


 私は早速、政府にパスポートの申請を致しました。なにせ外国、よそ様の国です。これなくして何処にも行くことは叶わないでしょう。私は待ちました。申請に時間がかかるのは承知しています。しかしです。待てど暮らせど申請の許可がおりません。それもそうでしょう。優秀な人材の流出を防ぎたい、政府の隠しきれない思いは私には痛いほど分かるのです。でも私は行きたい、そして早くハッピーライフを満喫したい。自国の政府の都合よりも私の細やかな夢と希望を優先させたい。その思いが私を突き動かしました。政府の木っ端役人をなぎ倒し、有る事無い事言い触らしたのです。その努力の甲斐あって、やっとパスポートを手にすることが出来た次第です。


 パスポート片手に私は隣国に乗り込みました。目指すは転職です。それには企業の採用試験を突破しなければなりません。でも数ある企業の中で何処に行けば良いのか、いいえ、その心配はありませんでした。何故なら隣国には大きな企業が一社しかなかったからです。私の人生をステップアップさせるには打って付けの大企業です、不足はありませんでした。それに優秀な私は自信もありました。私を採用せずして一体誰を採用するのですか? 私の価値は100万倍です。


 私が向かった先、そこは外資系でも支店でもありません。正真正銘の本社です。初めての外国企業です。世界を駆け巡る私です。ここしかありません。そのトップまで登り詰める決心と覚悟でありました。さあ、行きましょう。まだ元の会社は退職していませんが、そんなことは問題ではありません。転職、天職です。


 ◇

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