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じーさんず & We are  作者: Tro
#4 勇者で章
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#4.1 スイート・ポテト号

むかしむかし、あるところに、お爺さんとお爺さんとお爺さんがいました。

最初のお爺さんは、かつて魔王と呼ばれ、好き放題な人生を送ったと聞いていますが、今はただの自己中なジジイです。

その次のお爺さんは、名前をアッ君といいます。勇者になり損ねた、ただの厄介なジジイです。

その次のお爺さんは、名前をシロちゃんといいます。三番目の勇者になり損ねた、ただの厄介なエロジジイです。


3匹のジジイは私の監視下に入りました。私? はい、現在の可愛い魔王です。

何故、監視下にあるかと言いますと、それは後程、説明致しましょう、多分。


3匹のジジイは船、スイート・ポテト号に乗ってどんぶらこと、ある南の島に向かっています。ですがその3人は行き先も分からずに乗船しているところです。


3人がこの船に乗ったのは偶然ではありません。ある組織によって誘導された、とういうのが真相です。その裏にはとても恐ろしい陰謀が隠されている、とかないとか。私から言えるのはそこまでです。何分、極秘ですので。


さて、船に乗ったら腹が減るのは3人の道理であります。例によって既に食事にガッツいている最中です。そんなお金があるのかって? ええ、例によってマオの口車に乗せられたアッ君が札束を握りしめています。それが偽札でないことを祈りましょう。


早速、ガシャポン、キーキキ、ウエぇ、ペロリンコ、プッ、です。


◇◇


食後は決まってテーブルの下に転がるのが趣味のようです。お腹を膨らませて残り少ない人生を謳歌しています。

そこに3人の若者達、男性2人に女性1人が通りかかります。3人は汚物を見るような蔑んだ視線を挨拶代わりに置いていきますが、その女性の足をシロちゃんが掴みました。


「ええ?」


当然の反応でしょう。床に転がるゾンビのようなジジイにいきなり足を掴まれたのです。その足をここに置いてきたいくらいの心境でしょう。


「お主、ただ者ではないな」


それが足を掴むことと、どんな関係があるのでしょうか。早速、仲間の男性2人がシロちゃんを蹴りまくります。当然、マオ達は他人の振りをしています。ただ、年寄りに容赦ない攻撃はどうなのでしょう。いくらエロジジイと言ってもね。


でも大丈夫そうです。シロちゃんはムクッと立ち上がると3人を見下ろしています。言い忘れましたが、シロちゃんは結構背が高いんですよ。それで若者3人を見下ろすことになるんですね。


「教授!」


今まで蹴っていた相手に男性の1人がそう呼びました。でも何故、今頃そう思ったのでしょうか。知り合いなら手加減してあげても良かったのではないでしょうか。これも日頃の行いですね。


「なんだ? わしの教え子か?」

「はい、教授。ここでお会い出来るとは思いもよりませんでした。ですから」

「良い。それであの娘もか」

「はい、そうです」

「なら、触っても良かろう」

「教授、セクハラですよ」


シロちゃんはそんな忠告も聞かず、いえ、ただ耳が遠いだけかもしれませんが、女性の方ばかり見ています。視姦ですね、このエロジジイは。


「君、名はなんというのかね」

「私は、今は言えません。少女Aと呼んでください」

「少女とな、ちと確かめても良いかの」


マオが立ち上がりました。そしてシロちゃんのハゲた頭をひっぱ叩きます。いい音がしました。中には何が詰まっているのでしょうか。


「おい、シロちゃん。いい加減にしろ。お前のスケベでどんだけこっちが迷惑していると思ってやがんだ」


「教授、こちらの方は」


今まで黙っていた男性が、頭を摩っている教授に尋ねています。教授を気遣う様子はないようですね。自業自得というのでしょう。


「こやつはわしの助手で、マオじゃ」

「誰が助手だ! このエロジジイ」


ついでなのでマオの身長も紹介しておきましょう。マオはシロちゃんより少し低い、185cmくらいです。ただし10cmほど靴で底上げしています。アッ君は裸足のマオと同じくらいでしょうか。ちなみにマオ達は相変わらず白衣のままです。


面倒なことにアッ君も起き上がってきました。


「今は、名前が言えないとは、まさか、アレなのか、君達は」


アッ君の問いに顔を見合わす若者3人です。何か『訳あり』な感じです。


「すみません、それ以上は言えません。僕は少年A、彼は少年Bということで」

「そうか。なら、親御さんは心配しているだろうに」

「ええ、多分」

「それを分かっていてか。そうか、どんな事情かは知らんが早く帰ることだ、きっと家で心配しているはずだ」


話の輪に入れないマオが無理やり入りたがっています。どこにでも顔を突っ込まないと気が済まないわがままマオです。


「アッ君、なんだよ? 全然わかんないぞ」

「大きな声を出すんじゃない、バカモンが。家出だよ、愛の逃避行というのか」

「なんだって!」


アッ君が大きな声を出したマオを小突きます。とっても仲の良い二人になったものです。私は嬉しくもあるんですよ。自己中のマオにお友達が出来るなんて、何て微笑ましい光景なのでしょうか。再教育のしがいがあったというものです。


「違いますよ。家出ではありません」


少年Aが訂正してます。では何だというのでしょう。まあ3人ですから愛の逃避行とういうには無理がありますね。でもその可能性も全く無い、とは言い切れません。いろんな『愛の形』がありますから、はい。


「では、何んだ? 旅行か何かか?」

「まあ、そんなところです」

「なんだ、そうか。それならそうと早く言ってくれ。勘違いしたではないか」


勝手に勘違いしたアッ君が悪いんですよ。もうボケてますね。

ここでまたマオが飛び出てきます。性格も飛んでいますが。


「なあ、なんでこいつが教授なんだ? このエロジジイが」

「そうなんですが、僕達の大学の教授なんで、その、そうなんです」


エロジジイのところは否定しないんですね。それどころか鼻高々のシロちゃんです。


「オホン、だから言ったじゃろ、教授だと」

「冗談だと思ってたぞ」


ところで、先程から少年Aしか答えていませんが、その左手はしっかりと少年Bの手を握っています。ああ、成る程です。で、少女Aは遠くの方を見ているだけです。何を見て、何を思っているのでしょうか。その視線の先を垣間見てみましょう。


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