第3話 お嬢様の使用人達
私は朝起きると、いつも通り玄関周りを掃除していました。
「秋ですからね。」
夜に鈴虫や松虫、蟋蟀などの秋を代表するような虫の声を聞くことも増えてきました。
「でも、害虫は駆除しなくてはなりませんよね。」
玄関前の茂みの奥を見ながら告げる。
私が気づいていることに気づかれたのでしょうか?
全身黒づくめの人が立ち上がりました。
秋ですから、この時間はまだ明るくなっていませんから、全身を黒色で固めるのも合理的でしょう。
右手には黒いナイフ、左手には銃が握られています。
ナイフは黒色に塗装したのでしょう。
少しの明かりでも反射してしまったら気づかれてしまいますからね。
私もメイド服の袖口から銃を取り出します。
私の銃と銃弾は、家が用意してくださっています。
聖家と花園家が共同開発しているようでして、これも最新の試作品です。
音がかなり小さくなっていると聞きました。
相手の左手首に撃ってみます。
カチッ
相手の左手首が取れてしまいました。
血が玄関前の茂みを濡らします。
駄目ですよ、それも私達が度々整えているんですから。
左手首から先が取れたのに相手は声をあげません。
よく訓練されているのでしょうか?
とても助かります。
こんな朝から大声を出されてはお嬢様方が起きてしまうかもしれませんから。
銃刀法?
バレませんよ、メイドですからね。
左手首と共に落ちた銃にも銃弾を打ち込んでおきます。
もうあのままでは使えないでしょう。
相手がナイフを構えて走ってきます。
取り敢えず、ナイフも頂きましょう。
ナイフを突き刺そうとした右手首を掴み、捻ります。
ゴキッと音がしていましたけど、問題ないでしょう。
相手が落としたナイフを拾い上げて、袖口にしまいます。
このメイド服も聖家と花園家が開発したものです。
所々にポケットのようなものがついています。
相手は諦めてしまったのでしょうか?
両手が使えなくても足や口もあるでしょうに。
それに全く手が使えないわけではないですし…
肘や肩も使えるんですよ?
相手が自殺をする前に眠らせておきます。
首トンができたらいいのですが、力加減が難しく、ちゃんと成功した事がありません。
スマートフォンを取り出し、電話をかけます。
「もしもし、花園です。玄関前に置いておきます。」
こう伝えるだけで連れていってもらえます。
因みにですが、このスマホも花園家と聖家が開発したものらしいです。
他の機器と電波が違うといっていた気がします。
興味が湧かなかったので覚えていません。
取り敢えず、連絡を取ったことがわからないらしいです。
ですので、こちらは仕事用のスマホとなっています。
自分用も持っていますが、夜中に真智さんと早菜恵さんが電話をかけてきた時に使うのみになってしまっています。
私は、玄関周りの掃除を終え、一通り朝の業務を終え、朝食を食べに食堂へ向かいました。
「あれ?未玖ちゃんだ!」
「本当ですね。」
真智さんと早菜恵さんが先にいらしていたようだ。
「おはようございます。」
「うん、おはよー。」
「おはよう。」
「珍しいですね。」
「うん。私もさっき早菜恵ちゃんと偶然一緒になってねー。」
お嬢様方専属の使用人が一緒になることはとても珍しい。
業務内容も別々ですし、朝食を食べる時間は、自分達で決めます。
偶にどちらかと一緒になることはありますが、お二人と一緒は、過去に片手の指で数えるほどしかありません。
朝食を食べながら談笑します。
「未玖ちゃんは、朝のはおしまい?」
「はい。お二人もですか?」
「私も真智ちゃんも終わったわ。」
「未玖ちゃんって手が綺麗だよねー。」
「いきなりどうされたんですか?」
「私、今週洗濯だから手が冷たくて…ひび割れとかはしないように手入れしてても、どうしても辛くてね…ってことで何かない?」
「何かって言われましても…慣れれば大したことではないですから…」
「そうだよね…この中じゃ私が1番慣れてないもんね…」
そう言って真智さんは机に突っ伏しました。
早菜恵さんも真智さんも、お二人が18歳の時に使用人としていらっしゃいました。
私が華恋お嬢様の使用人に就いてから半年ほど後に早菜恵さんはお屋敷にやってきました。
ですから、僅差ではありますが私がこの中では使用人歴は長いのです。
「未玖ちゃんは私がきた時から手は綺麗よね?」
「体質だと思いますけど…」
「体質ってことはハンドクリームとか使ってないの?」
「もう少し寒くなった頃に使いますよ。」
「いいなー、私なんて使わない時なんてないよ。」
「私も真智ちゃんと同じね。羨ましいわ。」
こんな事を言っていますが、お二人ともとても綺麗な手をしています。
「そろそろ、起こしに行きますか?」
「そうだねー。」
「行きましょうか。」
朝食を食べ終え、お嬢様方を起こしに行きます。
お嬢様方は寝起きはいい方なので助かります。




