第34話 特訓(中)
翌日、身支度を整え、朝食を摂ります。やはりこの世界で生きてきたギルピックさんが詳しいでしょうからアドバイスをいただきます。
「ステータスを上げたいんだったら魔物を倒すのが一番にゃ。でも4人は多分魔物と戦う前に体を鍛えるべきにゃ。ある程度体ができてないと簡単に死ぬにゃ。あと、そこの、なんて言ったかにゃ?」
「大介だ。板橋大介。」
「ダイスケはステータスが加齢で落ちてるはずにゃ。これからもどんどん落ちるにゃ。でも、全然ステータスが伸びてた感じじゃないから、伸び辛くても伸びるはずにゃ。残りは魔物を倒してればいいにゃ。」
「私達は鍛える必要はないのでしょうか。」
「ミクと両隣の2人は十分にゃ。バランスが取れてるにゃ。あと、黒いのは体が硬いにゃ。」
「ギルピックさん、アルメルトさんです。」
「まあいいにゃ。カナミは全体的に上げた方がいいにゃ。で、問題はホタルにゃ。」
「私ですか?」
「ホタルはその4人と大した差がないにゃ。歳を考えるとその4人よりも低いとも言えるにゃ。体が出来上がっててこれはなかなかいないのにゃ。何か病で倒れてたりしたのにゃ?」
「いえ…おそらくただの無精です。すみません…」
「その分鍛えればいいのにゃ。」
今更ですがギルピックさんの耳がピョコピョコ動くのが気になってしまいます。尻尾も動いているのですね。思い返してみれば今までも尻尾は軽く揺れていた気がします。
「ミク?」
「ギルピックさん、具体的にはまず何をすべきですか。」
「ん、金に余裕はあるにゃ?」
「必要ならばあります。」
「冒険者組合の地下に特訓用の場所があるにゃ。るけど、まぁ実際にやってみたほうが早いにゃ。私も始めたてはこもってたのにゃ。入場料は金貨1枚と銀貨5枚にゃ。その中の無限回廊はやるべきだと思うにゃ。」
「無限回廊とは何ですか。」
「魔道具の1つにゃ。仕組みは知らないけど、永遠に続く道を作る魔道具にゃ。」
「永遠に道ですか。」
「にゃ。障害物の他にも魔道具はあるにゃ。けど、無限回廊は脚力や瞬発力、判断力を鍛えられるにゃ。危険な魔物から逃げるには鍛えておきたいにゃ。」
「なるほど。」
私達はお嬢様を守るために逃げるためにはいきませんが、お嬢様方が逃げることができれば一先ずは問題なくなるのですね。盲点でした。
「地下には闘技場もあるにゃ。闘技場では当然殺人は禁止にゃ。でも、対人戦の特訓になるにゃ。」
「なるほど。」
行くべきでしょう。ギルピックさんの話を聞く限り金貨1枚の価値はあるでしょうし、私には及ばないとはいえギルピックさんも強いです。そのギルピックさんの強さの元がその訓練場にあるのなら1度は足を運ぶのが良いでしょう。
「私からもいいですか?」
そう言って軽く手を挙げたのは麗香お嬢様です。
「魔力はどう鍛えたら良いのですか?」
「ひたすら使うしかにないにゃ。魔力は魔物を倒した方が伸びやすいけど、それよりも使い方を学ぶべきにゃ。魔力が増えてから使い方を学ぶと大雑把になるにゃ。使い方は試行錯誤するしかないにゃ。魔法は感覚にゃ。」
「梨原さんの水糸もですか?」
「知らないにゃ。見たこともないにゃ。」
「これだよ?《水糸》」
実際に真智さんが指の先でくるくると回します。あれから練習したのか周りに水が飛び散らないようになっています。
「何の役に立つにゃ?」
「…見てて楽しいとか?」
「…変だにゃ。水ってことはそれは水属性にゃ。」
「そうだよ?一番最初にできたし。」
「水、というか基本属性の魔法は攻撃、防御の2つにゃ。治癒もあったりするけどそれは置いておくにゃ。」
不意にギルピックさんが真智さんの水糸に手を伸ばします。渦巻いていた水はギルピックさんに触れると一瞬形を崩しましたが、ギルピックさんの指で堰きとめられたところ以外は変わらず流れ続けています。
「…これはたぶん攻撃じゃないにゃ。攻撃の魔法は魔力が一定以上じゃないと発動しないにゃ。だからこれは防御、のはずにゃ?」
首を傾げながら仰います。防御に使えるかと言われると怪しいのでしょう。
「もっと太くできるよ?」
「なら防御かにゃ?なんで渦巻いてるかは知らないにゃ。気になるんだったら詳しい人に聞くべきにゃ。他は何かあるにゃ?ないならさっさと食べていくにゃ。」
麗香お嬢様は食べるペースを速めました。それに琴音お嬢様も続きます。私も少なからず興味はあります。
「麗香お嬢様、そんなに急いでは詰まってしまいますよ?お水です。」
「ありがとう、早奈恵さん。でも、私早く練習したくて。」
「お嬢様の読まれている御本のようにですか?」
「!? なんで知ってるの!?」
「麗香お嬢様専属の使用人ですから。全てに目を通していますよ。」
「プライバシー…」
「ありません。」
「未玖、麗香は何を言っているの?」
「私にはわかりまねます。」
存じていますが約束ですからね。




