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メイドは今日も共に行く  作者: 緋月 夜夏
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第28話 お嬢様と盗賊団(下)

「《第五ノ盾契約(contract)》」


 そう言葉を発すると同時にナイフを離します。彼女の首は軽く流血しています。包帯のみで良いでしょう。


「な、何なのにゃ?」

「大人しくしていてください。」


 切った手は無事ですね。あとは…

 私は彼女をうつ伏せに倒します。


「痛いのにゃ!何するにゃ!」

「大人しくしていてください。」

「さっきから何なのにゃ…説明してほしいにゃ…」


 足を伸ばした状態にして、手を離します。


「手を後ろに回してください。」

「わ、わかったのにゃ…」


 素直に後ろに手を回していただけたので、離れていた手の切断面同士を合わせます。


「《第ニノ盾修復(healing)》」


 今回は切られた方が残っていたので《修復》で十分です。私の手は2本しかありませんので、耳はそのままになりました。


「では、何をしていただきましょうか。」


 私の指先から彼女の首へ白色の線が伸びています。これは王様の時とは違い、首に傷をつけなくてはならず、条件も1つしかつけることができませんが、一方的に条件をつけることができます。


「貴女は私が話し終えたら、『契約を締結する』と言ってください。」

「…はい。」


 私の指先から伸びていた白色の線が消えました。彼女は焦点の合っていない目でこちらを見つめています。こっちの場合は自我がなくなりますからね。


「第1に何故私たちを狙ったのか詳しく説明すること。第2に貴女と貴女の所属している組織を詳しく説明すること。第3に私たちにここでの常識など知識を教えること。第4に私たちに危害を加えないこと。第5に私たちのすべての行動に協力すること。第6に私たちのことを口外しないこと。第7に今日あったことを口外しないこと。第8に私に関することをを誰にも伝えないこと。…このくらいですか。最後に以上を完遂できなかった場合、自ら命を断つこと。そして、私が差し出すものは先程貴女の手足を直したことで支払わせていただきます。以上です。」

「契約を締結する。」


 その言葉と共に彼女の目の焦点が合いました。


「い、今のは一体何なのにゃ?体の自由が利かなくなって口が勝手に動いたにゃ。」

「先程の言葉の音通りです。では、説明を始めてください。」

「わ、わかったのにゃ…」



 彼女の名前はギルピックといい、年齢はおそらく14、サリモ団に所属しているそうです。彼女は幼い頃に誘拐されそのまま育てられ、強制的に働かせられていたそうです。サリモ団は、サリモ・ハックという方を団長としていて、団員は100人近くいらっしゃるそうで、私達を狙ったのは偶然団員の方が私達を見かけたためだそうです。本拠地は本日私達が向かった林の中にある洞窟だそうです。


「何故、先程情報を話そうとしなかったのですか。」

「情報を話すと私は死んで…ないのにゃ!?どういうことにゃ!?」

「もしかして、呪いの類ですか。」

「そうだにゃ。サリモ団の事を話すと脳が破裂する呪いにゃ。」

「私の《契約》の方が上位なのでしょう。貴女が亡くなっては私の契約に反しますからね。」

「?よくわからないけど助かったってことにゃ!今日は最高の日だにゃ〜!」

「いえ、助かってはいませんけどね。」

「ん?なんか行ったにゃ?」

「いえ。明日の朝、冒険者組合で待っていてください。」

「わかったにゃ!これからよろしく頼むにゃ〜!」


 そういうと、スキップを踏み、上機嫌で去っていきます。

 さて、死体これはどうしましょうか。彼女に運んで貰えばよかったですね。ですが、後悔先に立たずと言いますし、自力で運びましょう。

 縄を取り出し、手足を縛り、全てを1度に運べるように固めます。これらはお返ししておきましょう。


「《第一ノ矛|加速《acceleration》》」


 そして私は盗賊団の拠点である洞窟を見つけることが出来ました。正直に言ってしまえば特に大変なことはありませんでした。彼女が特別だったのでしょうか。団長と思しき方も私が背後に回っても気づくことはありませんでした。

 洞窟の中には檻があり、中には子供などが入っていました。こちらを見て怯えたような顔をしています。彼女よりもこちらの方が良かったかもしれません。

 私は檻をこじ開けて放置することにしました。足手まといになっては困りますので。そして、溜め込んでいた貨幣や宝石、そして使用していた武器は《回収》しておきました。有効活用するべきでしょうからね。

 することも終えたので宿に戻ります。


「《第一ノ盾開放(open)》」


 橘さんは目が覚めていらっしゃるようです。


「お帰りなさい。何処へ行っていたのですか?」

「少し夜風にあたってきました。なかなか空気が綺麗ですね。」

「そうですか。そのうち私も連れて行っていただきたいですね。」

「はい。機会があれば。」


 こちらの事情を何となく察して気を使ってくださり、深くは聞いてこないのでしょう。


「眠れないのでしたら薬はいかがですか。」

「大丈夫です。さっさとしまってください。」

「わかりました。私も寝ます。おやすみなさい。」

「はい。本日もご苦労様でした。」

「《第一ノ盾閉鎖(shut)》」


 橘さんに聞こえない程度の大きさでそう言葉にして、私は眠りにつきました。

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