番外編 お嬢様とクリスマス(下)
「あっ、おかえり〜。」
「すみません。お待たせしました。」
「良いもの見つけられた?」
予定より五分ほど遅れてしまいました。
「はい。真智さんのアドバイスのおかげです。」
「あはは〜、照れるなぁ。」
「ありがとうこざいました。」
「気にしなくて良いよ。…さて、じゃあ、戻ろっか。」
「はい。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「2人とも、少し遅いんじゃないかい?」
「すみません。」
「申し訳ありません。」
「まぁ、いいよ。どうせ梨原ちゃんの所為なんだろう?」
「いえ、その。今回は私のせいでして。」
「え?そうなのかい?珍しいこともあるもんだねぇ…」
「本当に申し訳ありませんでした。」
「あぁ、いや、いいんだよ。数分程度だからね。」
「ちょっと、山辺さん!?私の時と全然違うじゃん!?」
「…日頃の行いってやつだねぇ。」
「酷い!?」
「ほら、まだ準備は残ってるんだ。急いだ急いだ。」
山辺さんに背中を押され、再びクリスマスパーティーの準備に取り掛かりました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
準備も終わり、食堂には使用人含めた全員が集まっている。
「今年もこのように盛大なクリスマスパーティーを開いてもらい感謝する。本日は全員、思う存分楽しんでくれ。メリークリスマス。」
言葉と共に当主様がグラスを掲げなさり、グラス同士の音が響きました。
(プレゼントは後ほどでいいでしょう。邪魔になるでしょうし。)
「未玖ちゃん、こっちこっち。」
「…私はまだ飲酒できる年齢ではないのですが…」
「固いこと言いっこなしだよ〜。」
すでに酔っていらっしゃいますね。
「はぁ…わかりました。」
「おっ、珍しくノリがいいね!ほら、ぐっと。」
「はいはい。」
そのままグラスの中身を一気に呷ります。当然、飲む直前に別のグラスと取り替えました。
真智さんもそれを見て満足したのか他の方に絡みにいかれました。そのうち早奈恵さんが止めてくださるでしょう。
「未玖くん。」
「当主様、如何されましたか。」
「いや、ちょうど未玖くんが見えたからね。」
「そうでしたか。」
「あの子たちは毎年未玖くんからのプレゼントを楽しみにしているからね。正直嫉妬してしまうよ。」
「そのようなことは。」
「まぁ、父親だとこんなものだよ。」
当主様は一度グラスに口を付けられます。
「さて、近くに私がいると落ち着かないだろう。今日は存分に楽しんでくれ。」
「お心遣い感謝します。」
では、当主様のお言葉に甘えさせていただきましょうか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ねぇ、未玖ちゃ〜ん。これ、一緒に着よ〜。」
「…水です。どうぞ。」
先程に増して酔われている真智さんに絡まれました。そのあとを早奈恵さんも追ってきました。
「ごめんなさい、真智ちゃんが絡んじゃって。」
「いえ、酔われているのはわかっていますから。」
「もう少し我慢してくれる?真智ちゃらは酔いやすいけど、酔いが覚めるのも早いから。」
「はい。わかりました。」
しばらくすると、早奈恵さんの仰っていた通りに真智さんは良いから覚めていました。
「ごめんね、未玖ちゃん。」
「いえ。大丈夫です。」
「じゃあ、一緒に着よっか。」
「酔いは覚めていますよね。」
「だってちょうど3人分で売ってたんだもん。」
「真智さんが1人で全部着たらどうですか。」
「重ね着ってこと?それじゃ意味ないよ〜。」
「未玖ちゃん、こうなると面倒だし長くなるから、1度だけお願いできない。あと、私のためにも。」
「はぁ…今回だけですからね。」
「やったー!じゃあ、早速着替えてこよう!」
「はいはい。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「未玖?」
「あっ、お嬢様。」
着替え終え、廊下に出ますとお嬢様方がいらっしゃいました。
「どうしたの?その格好。」
「3人で着てみようということになりました。似合っているでしょうか。」
「…ええ。とても似合ってると思うわ。」
「ありがとうございます。あぁ、そうでした。」
私はポケットから3つの包装された箱を取り出します。
「私からのクリスマスプレゼントです。受け取ってくださいますか。」
「ええ。ありがたく受け取るわ。」
「未玖さん、ありがとうこざいます。」
「ありがとー、未玖お姉ちゃん!」
私がプレゼントとして選んだのはペンダントです。お嬢様方で同じ種類で色違いのものにしました。
「未玖ちゃん、こっちに…って、お嬢様?」
真智さんと早奈恵さんも着替え終えたのかこちらへ向かってきていました。
「お嬢様達も一緒に写真撮りますか?」
「いいかしら?」
「はい。いいよね?未玖ちゃん。」
「写真を撮るということも初めて聞いたのですが。」
「まぁまぁ、当主様達が待ってるよ?」
「はい?」
「花園くん、似合っているね。」
「…ありがとうございます。」
写真を撮るのは私たちだけだと思っていたのですが、真智さんについていきますと、当主様に板橋さん、橘さんがいらっしゃいました。
「いや〜、やっぱり背の高い人が左右の端にいた方がいいよね。」
「まさか、そんな理由でお待ちいただいていたのですか。」
「まぁね。それで、そのままだと偶数になっちゃうから、橘さんも呼んできたの。」
「…もう何も聞きません。さっさと済ませましょう。」
「そうだね。当主様も橘さんも忙しいだろうし。じゃあ、並び順は適当でお願いします。」
真智さんがカメラを置いて戻ってきます。
「あと30秒後に撮ります。」
急いで並びますと、左から当主様、橘さん、琴音お嬢様、真智さん、華恋お嬢様、私、麗華お嬢様、早奈恵さん、板橋さんの順になりました。
「では、ポーズを取ってください。3…2…1…」
『メリークリスマス!』
撮影後、食堂の片付けも終了し、真智さんと早奈恵さんも自室に戻ろうとしています。
「真智さん。早奈恵さん。」
「ん?どうかしたの?」
「どうかしましたか?」
「よかったら受け取ってください。私からのお2人へのクリスマスプレゼントです。」
「え?」
「今日のプレゼント選びの時に真智さんが私からのプレゼントなら喜んでいただけるということでしたから用意しました。髪飾りですから、好みに合わなければ処分していただいて構いませんので。」
「ま、まさか!処分なんてしないよ!?」
「ええ。私も使わせてもらうわ。」
そう仰りながらお2人は髪飾りを取り出しました。
「真智ちゃんと色違い?」
「ほんとだ!早奈恵ちゃんと色違いだ!」
「はい。お2人は仲がよろしいですから。あと…」
私もポケットからもう1つの髪飾りを取り出します。
「私とも色違いです。お揃い、ですね。」
「ほんとだ!ありがとー!」
真智さんが私の方へ飛び込んできました。
「危ないですよ。」
「ごめんごめん、テンションあがっちゃって。」
「そこまで喜んでいただけたなら何よりです。」
「私からもありがとう。大切にするわ。」
「はい。こちらこそありがとうございます。」
「じゃあ、最後に未玖ちゃんの紅茶を飲んで寝よっか!」
「すぐに用意しますね。」
お2人の喜びようを見て、思わず口元が緩んでしまいました。
「私はお菓子持ってくるね!」
「…ふふっ、あまり急かさないでくださいよ。」
こうしてクリスマスの夜は過ぎて行きました。
クリスマスのうちに投稿できました…




