番外編 お嬢様とクリスマス(上)
クリスマスですね。
本日は12月25日、クリスマス当日です。ここ、聖家のお屋敷でも毎年、お嬢様方の希望でクリスマスパーティーを行っています。
お嬢様方は当主様と出かけていらっしゃいますが、それに随行していらっしゃるのは早奈恵さんのみです。私と真智さんは、他の使用人の方々とパーティーの準備に追われています。
年末ということに加え、年始には他家の方々とのパーティも控えているため、毎年この時期は忙しくなります。板橋さん達、料理人の方々は朝から料理を作り続けています。
「花園ちゃん、今度はこっちを手伝ってくれる?」
「今向かいます。」
「その次はこっちをお願い。」
「わかりました。」
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「花園ちゃん、休憩してきていいよ。」
「はい。ありがとうこざいます。」
「梨原ちゃんもだよね?」
「はい。」
休憩をいただき、私は真智さんの運転する車に乗り、お嬢様方へのクリスマスプレゼントを買いに向かいます。本来、使用人はお嬢様方へ何かを贈る必要はないのですが、私は毎年贈っていますし、早奈恵さんと真智さんも同様です。
「今回はどうされたのですか。今までは事前に予約して届けて頂いてましたよね。」
「ちょっとね。未玖ちゃんにも付き合わせちゃってごめんね?」
「いえ。大丈夫です。」
私も以前までは予約していたものを事前に受け取っていましたが、真智さんにこの事を伝えられたため予約はせずにいました。
「やっぱりクリスマス一色だね。」
「そうですね。経済効果が見込めますから。」
「駄目だな〜未玖ちゃんは。子供のうちはクリスマスなんてテンション上がるものでしょ?」
「そんなことはないと思いますけど…」
普通の方と少し違いがあることは自覚していますが…
「未玖ちゃんは今回何にする予定?」
「そうですね、無難にハンカチなどでしょうか。」
「…未玖ちゃんって去年は何渡してたっけ?」
「去年は…筆記用具一式でしたね。」
「もっとさぁ、こう…女の子らしいものにしないの?」
「筆記用具やハンカチも模様によって女の子らしいものになるのでは?」
「いや、そうなんだけどね。例えば、何かアクセサリーとか。」
「お嬢様方には婚約の申し込みと共に様々な物が送られてきますから、アクセサリーもたくさんお持ちになっています。今以上に増やしてもお困りになるだけでしょう。」
「そんなことないと思うけどね。贈り物が何かよりも誰からの贈り物の方が重要だと思うよ?」
「…どこかで聞いたことのある言葉ですね。」
「あ、バレた?でも、実際そうじゃない?気心の知らない相手からの贈り物って、ちょっと使い辛いよ。」
「そういう経験でもあるのですか。」
「うん。前にちょっとね。面倒で送り返しちゃったけど。」
「それは相手に失礼なのでは。」
「だって、一回顔見たくらいの人からだよ?しかも髪飾り。怖くてつけられないって。」
「こうして聞いていると先程仰っていたことに納得できました。危険性の問題ということですね。」
「…微妙に違うんだけど。まぁ、いいや。だから、お嬢様達に何かアクセサリーとか普段から身につけられるものとかあげるのがいいんじゃない?絶対喜ぶよ?」
「そう、でしょうか。」
「そうだよ!私だったら絶対喜ぶもん。」
「…わかりました。その方向で考えてみます。」
「あっ、これ以上は口出ししないからね。未玖ちゃんからのプレゼントなんだから、未玖ちゃんが考えないと。」
「わかりました。」
真智さんが車のエンジンを切ります。話しているうちに到着していたようです。
「じゃあ、2時間後くらいにここで集合ね。遅れそうな時と、先に待ってる時は連絡してね。それじゃ!」
そう言い残して真智さんは走っていかれました。メイド服の女性が走っている様子を見て回りの方が驚いていらっしゃいます。
着替えて来ればよかったですね。今更後悔しても仕方がないのですが。
さて、私もプレゼント選びに向かいましょうか。




