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メイドは今日も共に行く  作者: 緋月 夜夏
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第1話 お嬢様の使用人

始めました。

楽しんでくださると嬉しいです。

 私はいつも午前4時に起床し、いつも通りメイド服に着替え、黒色のカラーコンタクトをつけます。元々の目の色が黄色ですから、多少は目立たなくするためです。


(髪色の時点で目立っていますけどね。)


 私は生まれた時から白髪です。周りの人には明るい銀色だと言われることもありますが、大した違いではないでしょう。目の色は遺伝ですが、親戚の髪の色は黒色です。十分に生活を送れていますから、何故髪の色が白色なのかはわかりません。一度染めようかとも思いましたが、周りの人に説明しなくてはならないので実行はしませんでした。私が幼い頃から知っていらっしゃる方も少なくないですからね。



 身支度を終えますと、玄関周り・廊下を掃除し、窓を拭きます。当主様のご厚意でこのお屋敷には沢山の最新機器があるため、掃除で疲れる事はありません。

 掃除を終え、食堂へ向かいます。


「おはようございます。板橋さん。」

「ん?お、今日も別嬪さんだな、花園ちゃん。」

「ありがとうございます。」


 右手に味見皿を持ちながら、こちらを振り向かれたのは板橋いたばし 大介だいすけさん。ここの料理長をしている方です。


 使用人用の朝食を出来るだけ速く、丁寧に頂きます。このことは以前から使用人として常に意識しています。


「朝食は出来上がっていますか?」

「おう!もうそろそろだな。」

「では、私はお嬢様を起こしてきます。」


 手を振る板橋さんに軽く頭を下げ、その場を後にします。

 私の尋ねた「朝食」は、私達のお仕えしている聖家の方々のものです。私と板橋さんとの付き合いも昨日今日のものではありませんから、板橋さんが察してくださいます。ありがたいことです。

 階段を上がり、私は1つの部屋の扉をノックします。


「お嬢様、おはようございます。朝ですよ。」


 この部屋は私がお仕えしているお嬢様の部屋です。

 ひじり 華恋かれんお嬢様は、私が幼少の頃からお仕えしている方です。私が幼い頃はそのような自覚は薄く、指示に従っていた程度でした。


 返事が返ってきませんが、いつものことです。

 扉を開けると案の定、お嬢様は毛布にくるまり眠っていて、長い金色の髪の一部が布団からはみ出ています。

(また、涎が垂れていますね。)

 そっとお嬢様の口元を拭います。今日も枕を洗濯することになりそうです。


「お嬢様、朝ですよ。」

「もう…?」

「おはようございます。」

「うん…うぅ…寒い…」


 お嬢様は毛布から出ようとしましたが、また戻ってしまいました。


「暖房をつけましょうか?」

「うんうん、いらない…」

「畏まりました。」


 お嬢様は暖房や冷房を好みません。

 本人は倹約と仰っていますが、お嬢様が気持ち悪くなるとは言い辛いのかもしれません。お嬢様の幼少期を知っている方は使用人にも少なくない為、隠す事はないんですけどね。


「今日は一段と寒くないかしら?」

「もう秋ですからね。季節の変わり目ですので、当然私達も注意を払いますが、お嬢様もお気をつけください。」

「ええ。いつもありがとう。」

「勿体無いお言葉です。」


 お嬢様のお召し物を脱がして、制服をお着せします。今日は夏休みが終わり、最初の登校日となります。お嬢様を洗面台へお連れします。少し眠そうでしたが、顔を洗うとすっかり目が覚めたようです。


「改めておはよう、未玖。」

「はい。おはようございます、お嬢様。」

「朝食を摂るわ。」

「畏まりました。」


 お嬢様の後ろに従います。食堂の扉をお開けすると、当主様とお嬢様方が揃っていました。


「おはよう。」

「おはようございます、お父様。」

「よく眠れたかい?」

「はい。」

「そうか。」


 そう仰ると当主様は、席を立ち、部屋に戻っていかれました。当主様は、あまり会話をなされません。寡黙な方という事もありますが、お仕事が忙しく、お嬢様方と会う時間が少ないという事も理由の1つです。


「おはようございます、お姉様。」

「おはようございます。」

麗香れいか琴音ことねもおはよう。」


 長女の華恋お嬢様、次女の麗香お嬢様、三女の琴音お嬢様の三姉妹です。お三方とも同じ学院に通っておられます。

姉妹という事もあり、お顔がよく似ていらっしゃいます。

 お身体の方は、華恋お嬢様が、その…1番スリムでいらっしゃって、次に琴音お嬢様、麗香お嬢様と続きます。華恋お嬢様はその事を気にしていらっしゃるので、毎朝牛乳を飲んでいますが、お嬢様が望まれる結果には至っていないようです。


 お嬢様方が朝食を食べられている間、私達は斜め後ろに立っています。お嬢様方には専属の使用人がいらっしゃり、私もその内の1人になります。


 麗香お嬢様専属の使用人の西森にしもり 早菜恵さなえさん。年齢は23歳で、綺麗な少し青みがかった黒髪をしています。烏の濡れ羽色と表すのか正しいのでしょうか?目は吊り目で、年上のお姉さん、という顔をしています。


 琴音お嬢様専属の使用人の梨原なしはら 真智まちさん。年齢は21歳で、茶髪の短い髪をしています。肩にかかる程度に髪を伸ばしています。垂れ目で、童顔をしています。私と同い年、それより若く見られるかもしれません。


 お2人は、名前の通り女性の方です。基本的にお嬢様方の専属の使用人には、女性の方が就くことになっています。同性の方が良いという考え方が受け継がれているようです。


「未玖。学院へ行くわ。」

「畏まりました。」


 お嬢様の後ろに従い、玄関の扉を開けます。使用人は、扉を先に開けるのも業務の1つです。玄関前には既に華恋お嬢様の登校用の車が止まっています。麗香お嬢様と琴音お嬢様にもそれぞれ専用の車がありますが、お2人はよく同じ車両で投稿しているそうです。

 車のドアは、運転手さんが開けてくださるので私は開けません。お嬢様が乗車した後、私も同様に乗車します。


 お嬢様方が通っている、星庭女学院ほしのにわじょがくいんには、女性の使用人を1人だけ付き添わせることを認めるという校則があります。これは、生徒の8割ほどが身分の高い家柄なためです。


 学院へ着くと、お嬢様は多くの方に声をかけられます。華恋お嬢様は、この学院で生徒会長をやっておられて、生徒だけではなく、教師の方々にも慕われています。ですが、一部というには少し多く感じますが、お嬢様というよりも聖家と関係も持ちたいと考えている方もいます。


 勿論、家同士の繋がりは大切ではありますが、子供同士の間にもそのようなことがあるのに違和感があります。このように考えてしまう私は、使用人としての教育は受け、年齢は華恋お嬢様と同じ15歳とはいえ、やはりお嬢様と比べれば家同士の繋がりに関して未熟なのでしょう。


「花園、課題を貰える?」

「こちらになります。」


 私は、お嬢様の(カバン)から今日の提出物とついでに一限目の教科書を取り出します。お嬢様は、というよりも、この学院内では使用人を苗字で呼ぶのが暗黙の了解となっています。これは対外的にも主人と使用人という関係を示すためです。


 夏休みが開けましたが、この学院は2学期制ですので、始業式はなく授業があります。お嬢様は、自身の席に座り、1時限目の予習をしていらっしゃいます。華恋お嬢様はお屋敷でも予習と復習は欠かしていません。


 この星庭女学院には、多くの資産家のご子息・ご令嬢が通われていらっしゃる学校ですが、ここまで勉学に取り組んでいらっしゃる方は多くありません。雑談をされている方、読書をされている方、ゲームをしている方もいますが、教師の方がいらっしゃる頃には、全員が授業の準備を終えています。


 こうして今日も授業が始まりました。



 3時限目を終えますと昼食の時間になります。華恋お嬢様はすぐに食堂へ向かわれます。私も板橋さんが作ってくださった昼食をお持ちしていきます。

 お嬢様は昼食に毎日のように昼食の誘いを受けていますが、いつも麗香お嬢様と琴音お嬢様のご姉妹で食べられています。


「お姉様、ご友人の方と昼食をご一緒しなくて良いのですか?」


麗香お嬢様は、席に着くと同時にそうおっしゃられた。


「ええ、いいのよ。私が貴女達と一緒したいのよ。」

「そうですか。」


 短い返答ですが、麗香お嬢様の口元が緩んでいらっしゃいます。麗香お嬢様も琴音お嬢様もお姉ちゃん子でおられます。


 この学院の食堂では、使用人、というよりも学院の内では従者ですが、昼食を共にすることが許されています。

 苗字呼びの校則と矛盾しているように感じますが、この学院内では、生徒同士は平等ということでそのような校則があります。因みに、昼食の最中は使用人をどのように呼んでも良いことになっているため、お嬢様方は私の事を名前で呼びます。


 華恋お嬢様は未玖、麗香お嬢様は未玖さん、琴音お嬢様は未玖お姉ちゃんとそれぞれお呼びになります。

 幼い頃、お三方と共に遊んだことが影響しているのでしょう。早菜恵さんと真智さんは私のことを未玖ちゃんと呼びます。使用人同士、仲は良いです。


「未玖お姉ちゃん、華恋お姉様には友人がいないのですか?」

「そのようなことはありません。華恋お姉様を慕ってくださっている方は、学年問わず大勢いらっしゃります。」

「琴音は何故、未玖に尋ねるのかしら?私に聞けば良いじゃない。」

「華恋お姉様は意地っ張りですから。」

「なっ!そんなことありません!」


 琴音お嬢様は食事の最中に会話をすることがお好きです。良い事ではないかもしれませんが、このくらいは許して下さるでしょう。


 昼食を食べ終え、教室に戻ると、20分間の休憩の時間があります。その後、4時限目の授業が始まります。


 7時限目の授業を終えると、帰宅する方と部活動に参加する方、寄り道する方に分かれます。多くの方は帰宅なされますが、この学院にはスポーツ推薦で入学している方もいるため、部活動もさかんではあります。寄り道する方は更に少ないです。


 帰宅すると、お嬢様はすぐに自室へと戻られます。そして私は、板橋さんの手伝いを始めます。私が行うことは、食器を洗う事と、簡単な野菜などを切る事です。本職の板橋さんには敵いませんが、包丁などの扱いには慣れていますし、人並みには料理を作ることができます。


 夕食には当主様がいらっしゃらないことが多々あり、お嬢様方のみで摂られています。夕食後に入浴となり、手伝いも当然いたします。私達使用人はお嬢様方のお召し物を脱がします。入浴はご姉妹で行うことが多いため、入浴の手伝いは私を含めたお嬢様専属の使用人の3人の内、1人が行うローテーションを組んでいます。


 入浴を終え、身体をお拭きし、髪を乾かし、お召し物をお着せすると、お嬢様方は自室へ戻っていかれます。


 お嬢様方が自室に戻った後、私はもう一度掃除をしたします。洗濯物は真智さん、板橋さんと共に明日の食事の準備をするのは早菜恵さんなので、私の今日の業務は終了です。


 板橋さんに作って頂いた夕食を摂り、入浴を済ませ、私にあてがわれている部屋へ戻ります。今日のお嬢様の様子を書き残し、ベッドへ横になり、眠りにつきます。


 これが私ーーー女装メイド(・・・・・)である花園 未玖の日常です。

今日は書き終わっている1〜4話まで投稿します。

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