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メイドは今日も共に行く  作者: 緋月 夜夏
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第18話 お嬢様と宿

 門番の方へ身分証を提示し終え、その際に橘さんが宿の場所を尋ねて下さりました。


「あの方達がおっしゃるには、近い範囲にいくつも宿が存在しているようですが、やはり金額も差があります。これだけ密集していると土地などの差とは考えにくいですから、防犯やサービスの差と考えます。それを含めてどの宿にするかですが、案はありますか?」


 橘さんの質問に真っ先に答えたのは真智さんでした。


「一番近い宿がいいです!」

「…聞くまでもないかもしれませんが、理由は何でしょう。」

「疲れ…いえ、お嬢様方が疲れていると思います。」

「絶対に真智ちゃん自身が疲れたからでしょう…

私は一番料金の高い宿が良いと思います。このようなことがあったのですから、最初のうちは疲れをしっかりと取ることが先決だと思います。」

「いや、一番安いところがいいんじゃねぇか?これからどうなるかもわからねぇのに贅沢になれたら困るだろ。なぁ?」

「任せる。」

「私は、料金もそこそこのものが良いと思います。基準はわかりませんが、近くの宿の料金を比べてみてはどうでしょう。近ければなお良いと思います。叶実さんはどうですか。」

「私は西森さんと同じです。安全面もそうですし、お嬢様は体力がないですから、体を壊す可能性もあります。その時に迷惑がかかるのはみなさんですから。」

「では、西森さんと芽津さんの案で決定としましょう。」


 橘さんがお嬢様方へも説明を行い、目的の宿へ向かいました。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「空いている部屋が2つしかない、ですか。」


 宿へと到着した後にも問題がありました。更に、時期も悪かったらしく、この時期に部屋が空いていること自体が稀だそうでして、それはこの宿だけに言えることではないそうです。


「1部屋にはベッドが2つだそうです。」


 橘さんの言葉に皆さんが更に落胆したのが目に見えます。


「当然ですが、お嬢様方にはベッドをお使いしていただくとして、問題は私達ですね。このようなことを申し上げるのはとても心苦しいのですが、お嬢様方と板橋さん達男性の方が同じ部屋というのは…いえ、決して信用していない訳ではありません。」

「それくれぇわかってる。橘の言う通りだ。いくら緊急時とはいえな。」

「本当によろしいんですか。」

「ん?どう言うことだ?」


 失礼に当たるでしょうが、口を出させていただきましょう。


「先程橘さんがおっしゃっていらっしゃいましたが、この宿以外の宿泊可能な施設も宿泊者で満室の可能性が高いそうです。明日以降も現状維持で生活するとなりますと、板橋さん、アルメルトさんは十分な休息が摂れない状態で行動していくことになります。板橋さんは年齢のこともあります。誰か1人でも体調を崩されると当然、その方を1人にしておくわけにはいけません。そのようになった場合、私達全員が満足に行動できなくなります。」

「まだまだ俺は現役だぜ?1日くれぇ構やしねぇよ。」

「ですから、1日で済まないかもしれないと申し上げています。根拠のない自信も捨ててください。」

「…そう言われてもなぁ。」


 ここまで言ってもひいてはいただけないようです。仕方がありません。

 私は板橋さんの耳元に口を寄せます。


「板橋さんはお嬢様方の心の支えです。見慣れていて、この中で一番の年配であり、男性である。それだけで安心を与えられます。代わりを用意することはできません。体調を崩されたとき、板橋さんだけの責任では済みません。…分かっていただけますね。」

「…あぁ、分かった。」


 お嬢様方にも聞こえてはいないでしょう。少し厳しいことを申し上げてしまいましたからね。


「仕方ねぇ、花園ちゃんの厚意に甘えるか。正直、腰とかも痛えしな。」

「あっ…そうでしたね。板橋さんにはお嬢様方を背負っていただいていたのでしたね。すっかり忘れてしまっていて…申し訳ありません。」

「気にすんな!これは元からだからな。」


 橘さんの謝罪に対して笑って答える板橋さん。私にも気を遣っていただいて申し訳ありません。


「ですが、根本的には解決になりませんね。部屋で寝れたからといって床で寝るわけにはいかないでしょう。せめて何か掛けるものを探してきましょう。」


 橘さんが口にしたところへ先程から席を外していた真智さんと早奈恵さんが戻ってきました。


「橘さん、床に敷く布団も別料金で借りられるそうです。」

「本当ですか?」

「偶に私達みたいな人もいるみたいですよ。」

「これで一先ずは休めますね。」

「早奈恵ちゃん、やっと休めるよ!」

「空気を読みなさい。」


 早奈恵さんが真智さんの頭を軽く叩いている光景を横目に見ながら、これからのことを考えます。


王様(あの方)になんとかしていただきましょうか。…急には無理かもしれませんね。出来るかもしれませんが、私達が変に目立ってしまってはお嬢様方にいらぬ心労を与えてしまうかもしれません。)


 部屋に着くと、お嬢様方はすぐに眠ってしまいました。都合の良いことに麗香お嬢様と琴音お嬢様、華恋お嬢様と花房お嬢様に分かれ、2つのベッドを使用していました。


「2つベッドに空きができましたね。」

「橘さんと板橋さんが使ってください。」

「おぉ、悪いな。」

「…ありがとうございます。」


 橘さんも自身と私達との体力の差を察したのでしょう。素直に私の言葉に従ってくださいました。


「アルメルトさんは申し訳ありませんが布団で寝ていただけますか。」

「ああ。」

「私達もですね。」

「私も疲れたから早くて寝たい…」

「ゆっくり眠ってください。」

「真智ちゃん、寝る前にお化粧を落とさないと。」

「めんどくさい…」

「はぁ…仕方ないから、シャワーは明日の朝かな。ほら、こっち。」

「あっ、私も行きます。」


 真智さんは洗面台の方へ連れて行かれました。その後ろに叶実さんも付いて行きました。私はその間に布団を敷いておきます。


「未玖ちゃん!凄いよ!洗濯と乾燥が一瞬で終わっちゃった!」

「…そうですか。早く休まれたほうが良いと思います、」

「信じてないでしょ!本当なんだってば〜!」

「ここには不思議なことが沢山ありますから、真智さんのおっしゃることも信じてます。ですが、お嬢様方が寝てらっしゃるのですから、静かにしてください。」

「あっ、ご、ごめん…」


 真智さんは足音を立てないように戻って行かれました。3つの布団を敷き終わりました。


「板橋さん、橘さん、アルメルトさん、移動しましょう。」

「なんかこっちの密度少なくねぇか?」

「叶実さんはこちらの方が安心できるでしょう。それに、橘さんを1人にするわけにもいけません。」

「確かにな。」


 部屋に入りますと、板橋さんはすぐさまベッドへ向かいました。


「私は軽くシャワーを浴びてきていいでしょうか?」

「いつも通りでいいですよ。」

「私がいつも寝る前にシャワーを浴びていることを知っていたんですか?」

「はい。たまたまでしたけどね。習慣を変えるのも良くないですから。」

「ありがとうこざいます。」


 橘さんは洗面所へ向かわれました。脱衣所と1つになっているため、そのままシャワーを浴びられてくるでしょう。

 板橋さんの大きないびきを聞きながら布団を2つ敷きます。


「アルメルトさん、今日もでしたが、明日は更に大変になるかもしれません。明日に備えて早めに休んでください。」

「ああ。」


 返事と共にアルメルトさんは布団に入られました。そう間を置かず、静かな寝息が聞こえてきました。


(私も化粧を落としましょう。)


 洗面所へ入り、軽く水で流します。私の場合はこれで十分です。コンタクトは外さないでおきましょう。橘さんと顔を合わせますからね。

 洗濯機の中には橘さんのものと思われる洗濯物が入れられていました。それを取り出し、丁寧に畳み、タオルの横に起きます。わたしも服を脱ぎ、体にタオルを巻きます。洗濯を開始するボタンを押しますと、真智さん仰っていた通り、一瞬で終了と表示されました。洗濯物を取り出すと、確かに汚れが落ち、乾燥させられています。聖家のお屋敷にもこれ程の速さで洗濯と乾燥を完了できるものは存在していません。数個ほど持って帰りましょう。



 そうこうしている間に橘さんが浴室から出てきました。


「花園さん、すみません。そこのタオルを取っていただけますか。」

「こちらですね。どうぞ。」


 なるべく橘さんの方を見ないようにしてタオルを手渡します。失礼だったかもしれません。


「花園さんもお化粧を落としてたんですか?」

「はい。今終わったところです。」

「…全然変わっていないんですが。」

「主に日焼けしない為ですからね。私はあまり肌が強くないですから。」

「そういえば以前おっしゃっていましたか。」

「橘さんもお化粧なんて必要ないと思いますよ。」


 橘さんは普段はツリ目に見えるように化粧をしていて、化粧を落としてしまえばツリ目ではなく、タレ目をしていらっしゃいます。


「そう言ってもらえるのはお世辞でも嬉しいですね。ですけど、あちらの方が色々と都合がいいんですよ。」

「そうですか。」

「それにしても…」


 橘さんは私に顔を近づけてきます。


「…これが若さですか…」

「橘さんも変わりませんよ。」


 肩を落としている橘さんと共に洗面所から寝室に戻ります。


「お2人はもう眠っていらっしゃったんですね。」

「はい。橘さんもお休みになってください。」

「ありがとうこざいます。」

「…」

「花園さんも休んでください。」

「そうですね。」


 私もおとなしく布団へ入ります。


「おやすみなさい。」

「はい。おやすみなさい。」

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