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小説をだらだら書いている暇があったら、少しはお勉強したら? 

作者: 池田瑛

最初に謝ります。

『あらすじ』と『まえがき』で煽ってごめんなさい。故意にやってます。

むかついた? 腹立った? 『本文』が気になった? 

「タイトル」や「あらすじ」を見て、「は? こいつ何言っているの?」と思っていただけたら、煽った甲斐がありました。



さて、お勉強の時間です。


【1.読まれなければ意味が無い】


『小説の目的は、読者とのコミュニケーションであり、作品が読まれなければ、当然その目的は達せられない』


「小説家になろう」で、読者の目を引くのはランキングだろう。ポイントだろう。私は、ランキングとかたぶん乗ったことないから、このことについては何も言えない。ごめんね。


ただ、『タイトル』と『あらすじ』を工夫したら、少しは読んで貰えるのかな? って、思います。

今回、『タイトル』と『あらすじ』を意図的に尖ったものにしたのは、そういう意図です。


方法は様々ですが、『タイトル』と『あらすじ』の工夫は、有効であると思うのです。煽られてこのページを開いた方がもしいれば、その効果を実感していただけるのではないでしょうか。



【2.小説はいつ始まるのか?】


 初めの三行で読者を引き込め! とか、結構有名な話だと思う。

 そして冒頭にはその小説のテーマや全体像のようなものが内包されている。

 そして、小説は最初の一文字から始まっている!!


 小説の冒頭を大切にしてますか? 3ページ、4ページまで読んで物語りが始まらなかったら、誰も読まないよ?


 小説の冒頭を実例を挙げて検証してみます。


『老人と海』 ヘミングウェイ

『彼は年をとっていた。メキシコ湾流に小舟を浮かべ、ひとりで魚をとって日をおくっていたが、一匹も釣れない日が84日もつづいた。』


<魚が釣れない日が84日も? マジですか? しかも、年を取っているなら、経験も豊富なはず……。普通ではない何かを予兆させますね。このままずっと釣れないのか、それとも何かが釣れるのか? 読者として、気になりません? 私、気になります!>


 ・


『二都物語』 ディッケンズ

『あれは最良の時代であり、最悪の時代だった。叡智の時代にして、大愚の時代だった。新たな信頼の時代であり、不信の時代でもあった。光の季節であり、闇の季節だった。希望の春であり、絶望の冬だった。』


<良い時代で、悪い時代? 知恵の時代で、愚かな時代? 一体、どんな時代なのだろうか。この小説が、明るい話であると同時に、悲しい話であるということを予兆させますね。そして、この時代に、何がおきるのでしょうか? 私、気になります!!!>


 ・


『少女』 湊かなえ

『子供なんてみんな、試験管で作ればいい。

 選ばれた人間の卵子と精子で、優秀な人間だけをつくればいい。』


<はい? 何言っちゃってんの? 誰がこんなことを言っているの? タイトル的に、少女がこんなこと言ってるの? 恐いけど……。タイトル通り、【少女】が主人公であるなら、この小説には狂気が混じっている。とんでもない物語が始まるということを予兆させます。私、気になります!!!>


 ・


『リアル鬼ごっこ』 山田悠介

『1日24時間のうちの1時間。その1時間のうちに自分の命が狙われたら人間はどんな心境に陥るであろうか……。』


<いや……。そんな恐いこと言わないで……。とりあえず、逃げる? いや、でも、夜とかだと寝てるし……。とりあえず、普通の心境じゃいられない。どんな心境なの? そして、それが実際に起こることを予兆している。私、気になります!!!!>


 ・


『烏に単は似合わない』 阿部智理

『この人がいい、と思ったのは、私がまだ五つか六つの時だった。』


<恋ですか? いいですね——。しかも、五つか六つですか。早熟ですねぇ……。まさか(゜Д゜) 幼なじみ属性か? 私、気になります!!!>


 ・


『思い出のマーニー』 ジョーン・G・ロビンソン

『プレストン夫人はきょうも心配そうな顔で、アンナの帽子をまっすぐに直した。

「いい子でいるのよ。楽しくすごしてね——それからね——そう、素敵に日焼けして、ほがらかな顔で帰ってくるのよ」夫人は片手をアンナの背中にまわして、さよならのキスをした——アンナに、自分は優しく大事にされていて、何の心配もいらないんだ、と思ってもらおうとして。』


<おい、アンナって人。「きょうも」心配そうな顔されてますが? ほがらなか顔で帰ってくる? 日焼け? アンナって人は、普段は部屋に閉じ篭もって、不健康そうな生活をしているのかな。しかも、「何の心配もいらないんだ、と思ってもらおうとして。」って、これ、フラグだ(゜Д゜) きっとこの先、何か心配なことが起こるんだ……。 アンナって人が、どっかに行く。そして、太陽の当たる場所で、きっと何かとんでもないことが起きる、という予兆。私、気になります!!!!>


 ・


『沈黙』 遠藤周作


『ローマ教会に一つの報告がもたらされた。ポルトガルのイエズス会が日本に派遣していたクリストヴァン・フェレイラ教父が長崎で「穴吊り」の拷問をうけ、棄教を誓ったというのである。この教父は日本にいること二十数年、地区長という最高の要職にあり、司祭と信徒を統率してきた長老である。

 希にみる神学的才能に恵まれ、迫害下にも上方地方に潜伏しながら宣教を続けてきた教父の手紙には、いつも不屈の信念が溢れていた。』


<映画見に行かなきゃ〜って、それはどうでも良いのだけど。拷問! 恐いっ! って、偉い感じの人が、棄教した? 拷問がきつかった? でも、二十数年の間、潜伏していて、迫害下でも不屈の信念があったって……。二十数年も頑張っていて、そして棄教した。何があったのだろう? 普通ではないことが起こった。そして、それはきっと拷問によって屈服した、というようなありきたりなことではない。私、気になります!>


 ・


『火星の人』 アンディ・ウィアー (映画:「オデッセイ」原作)


『ボロボロの最悪。

 これが熟慮を重ねたうえでの見解だ。

 最悪。

 人生で最高の2ヶ月になるはずだったのに、六日めにして悪夢に転じてしまった。

 これを読んでくれる人がいるかどうかもわからない。たぶん、いつかはだれかが見つけてくれるだろう。100年後かも知れないが。

 はっきりいっておく……ぼくはソル6には死んでいない。』


<先週、飛行機の国際線で、この映画見ました。

 人生の最高の期間が一転して悪夢に……。迷子っぽい? タイトル的に火星でかな? アポロ13的な、事故かな? 人生最高から最悪に転じる。それに、『ぼくはソル6には死んでいない。』って、まだ危機はさっていないことが予兆される。私、気になります!>


 ・


『銀の匙』 中 勘助

『私の書斎のいろいろながらくたものなどいれた本箱の引き出しに昔からひとつの小箱がしまってある。それはコルク質の木で、板の合わせめごとに牡丹の花の模様のついた絵紙をはってあるが、もとは舶来の粉煙草でもはいっていたものらしい。なにもとりたてて美しいのではないけれど、木の色合いがくすんで手ざわりの柔らかいこと、ふたをするとき ぱん とふっくらした音のすることなどのために今でもお気にいりのもののひとつとなっている。なかには子安貝や、椿の実や、小さいときのもてあそびであったこまこましたものがいっぱいつめてあるが、そのうちにひとつ珍しい形の銀の小匙があることをかつて忘れたことはない。』


<文章が美しすぎる。「とりたてて美しいのではない」とか言っているけど、入っているのは、思い出ですか? さぞかし美しいのでしょう? そして、銀の小匙? 子安貝や椿の実とかは綺麗だし、貝殻を海岸から持って帰って来て飾るのは良くあるけど……。匙? 意外性を突きますね。なんで匙? どうして小匙が入っている? タイトルにもある『銀の匙』が、きっとこの主人公の過去と深く関わっているということが予兆される。今から語られるのは、過去か!!! 私、気になります!>


 ・


『砂の女』 阿部公房

『八月のある日、男が一人、行方不明になった。休暇を利用して、汽車で半日ばかりの海岸に出掛けたきり、消息をたってしまったのだ。捜索願も、新聞広告も、すべて無駄に終わった。』


<いきなり飛ばしてくるなぁ。それに、『汽車で半日ばかりの海岸』と行き先分かってるのに、行方不明って……。海岸で一体、何が起こった? タイトルの「砂」は、海岸の砂か? そして、行方不明になった『男』の他に、(砂の)女が出てくるのでしょう。私、気になります!>


 ・


『精霊の守り人』 上橋菜穂子

『バルサが鳥影橋を渡っていたとき、皇族の行列が、ちょうど一本上流の、山影橋にさしかかっていたことが、バルサの運命を変えた。』


<いや、それがなんで運命変えるのか、全然わかりません。渡っている橋が違うなら関係ないじゃん! 運命を変えたとか、いきなり劇的ですな……。まぁ、「上流」の橋ってことは、きっと「下流」に流れてくるね! きっと流れてくるのは、皇族だね! 流れてきた皇族をバルサが助けるのでしょう。そして、それが運命を変える……。私、気になります!>


 ・


『また、同じ夢を見ていた』 住野よる

『先生、頭がおかしくなっちゃったので、今日の体育休ませてください。』


<その理由で体育休むってどうなの? せめて、サボるにしろ、生理でとかにしとけよ……。なんなのだ? この子。ぶっ飛んでるなぁ。 でも、私、気になります!>


 ・


『センセイの鞄』川上弘美

『正式には松本春網先生であるが、センセイ、とわたしは呼ぶ。

「先生」でもなく、「せんせい」でもなく、カタカナで「センセイ」だ。』


<先生と生徒という禁断の関係を予兆させます。「わたし」にとって、センセイは特別な存在であるのでしょう。句読点の打ち方が旨いね。それに、最後の『カタカナで「センセイ」だ。』という『だ。』が旨い。『わたし』の明確な意志が伝わってくるね。恋ですかね〜(´д`) 私、気になります!!!!>


『私が語りはじめた彼は』 三浦しをん

『二千年以上前の話だ。

寵姫が臣下と密通していることを知った若き皇帝は、まず彼女のまぶたを切り取った。これから自分がどんな目に遭うのかを、彼女がしっかりと瞳に映せるように。』


<まず、『密通』とそしてそれが露見することがこの小説の大枠であると推定できる。現代的に言えば、不倫の話だろうか。皇帝の所業から、ドロドロした話になりますよ、って警告が発せられている。そういう話が苦手な人は、読むのを止めて下さい、って感じ。

ただ、気になるのは、寵姫(女)が密通していて、皇帝がそれを発見している。しかし、タイトルでは、『私』(性別不明)が、『彼』(男性)を語るということ。構造として、男女の立ち位置が逆になっている。何を語りはじめるのか。私、気になります!!!>



 検証終わり!!!


 結論としては、冒頭の内容って、かなり濃い。皆様の小説の冒頭はいかがでしょうか?


<まとめ>


 映画や小説を途中から観たり、読んだりする人っていますか? きっと最初から観たり、読んだりするんじゃないかな? 

 「小説家になろう」で言えば、まずは、『タイトル』と『あらすじ』。それを読者は読む。

 そして、次に、小説の冒頭を読む。


 大事にしてください。


 私は本屋で、本棚をゆっくり歩きながら、本のタイトルを流し読みします。そしてタイトルで気になった本を手に取ります。この時点で、本棚3段、おそらく100冊くらいの本を流しています。

そして、気になったタイトルの本のあらすじを読みます。小説の冒頭まで読むのは、3冊に1冊くらい。

そして、最初の1ページを読んで、買うのは5冊に1冊くらい。


 1500冊に1冊が、私に購入される。プロの小説家でも、そんな感じです〜。小説家になろう、だと、もっと厳しいのではないだろうか。

 


 連載して続きを書いていくのも大事ですが、タイトルやあらすじ、冒頭を推敲するのに時間を少しだけ使っては如何でしょうか。


 応援しています。頑張ってください。最後に、タイトルとあらすじで煽ってすみませんでした。


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― 新着の感想 ―
[一言] あぁ、私もそんな風に本屋で本を探すなぁと、結構な既視感。大体デカイ本屋にいくときは3時間は見ないとダメですね。それでいて下手すりゃ何も買わないとか。でもそれがいい。 「彼のことを、私と息子…
[良い点] 参考になります。本文である通り、タイトルで引かれてしまった人です。名前を知っているような小説の例があり、分かりやすかったです。
2017/03/16 18:37 退会済み
管理
[良い点] なるほど!! 煽りに乗って読んでみました。 自分が実際にそうされるという体験は面白いものですね♪ あら筋のうまい作家さんが本当に羨ましいです。努力すべき点ですよね~。あら筋のポイントなんて…
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