表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/38

★レシピ★ * 5 * 女神様のまえ〜ハニー・キャンディー〜


 どうやらオオカミさんは『隊長』さんのようです。

 

 ――さ、お前たち。女神様に、この父さんのキャンディーをお供えしなさい。

 

 うん。はぁい。

 

 ――お前たち、どうした・・・・・・?

 

 ねぇ!やっぱり女神様、母さんにそっくりよ!父さんの

『母さんは女神様だから、俺たち凡人とはいられなくなったんだよ』

 って言うのも、あながちウソじゃないのかも!!

 

 ――本当に、声がでかいよ!!お前たち!!

 

 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ☆ ★

 

 タバサは座り込んだまま、向かってくる若者とオオカミとを見比べた。

 そうしていると、オオカミと同じ目線になる。タバサはしげしげと、その琥珀色の瞳を覗き込んだ。

 

(キレイなあめ玉みたい・・・透明で・・・それなのに、中心と縁のところはハチミツ色。うん。うちのハチミツ・キャンディーに引けを取らないわ)

 

 タバサは何だか嬉しくなった。オオカミさんの弟も、同じ色をしているのだろうか?

 それを確かめようと、眼差しを上げる。

 

 向かってくる青年達は明らかに『人間』だ。つかつかと迷い無く、どんどんと近づいて来る。もちろん、二本の足でだ。

 

(弟、人だよね。――でも、兄弟なんだ?まぁ、色々事情もあるんだろうし)

 

 今タバサがこだわるのは、そこではなかった。それよりも、近付くにつれて嫌でも目に入る黒――。

 それは、威圧的で好きになれない。昔から、どうしても。 

 見覚えのある黒ずくめの出で立ちに、タバサは思わず身構える。

 自然、傍に置いていたバスケットに手を掛けて、引き寄せた。それを膝に上げると、両手でぎゅっと抱きしめる。

 本当は――。このステキにツヤツヤ・ピカピカの毛並みにすがり付きたい所だが、そこはガマンした。

 

(さすがに、いきなり、ねぇ?『護衛隊長殿』に抱きつくなんて・・・・・・ねぇ?)

 失礼だろう。そうわかってはいるが、思わず抱きついてしまいそうだ。

(だって。ツヤツヤなんだもん)

 より強く、バスケットを抱える腕に力を込める。

 

 それを、不安の現われと受け止めたのか。

 オオカミが、横目でタバサを窺う。タバサも同じく横目で尋ねる。

 

 ――なぁに?オオカミさんは、『神殿まえ広場の護衛隊』の『隊長』さんなの?、と。

 

 。・★・。:・。☆・。:★:・。:・。☆。・:★:・。

 

【・・・・・・。】

 

 オオカミは無言のまま、一歩前に出た。そうやって、タバサを背に庇うようにして若者二人を迎える。

 

「――兄上・・・・・・」

「隊長、抜け駆けは無しですよ」

【何がだ?チェイズ】 

 

 黒い装束に身を包んだ青年に、真っ黒い毛並みのオオカミ。

 

 タバサは二人の制服の胸元にある、刺繍に注目していた。白と黒の蛇が絡み合う紋章を、目ざとく確認する。

 間違いなく、この二人は『神殿直属の護衛団』に所属している青年だ。

 

(抜け駆け、ねぇ。・・・・・・読めてきた。ララサ、あんた。こりゃ、悩むね)

 

 性質(たち)の悪いのに目を付けられちゃったねぇ。・・・・・・ララサ、かわいいものね。

 

 そんな思いはおくびにも出さぬままタバサは、うっすらと微笑み浮かべてさえいる。

 だが、心中は穏やかではいられなかった。

 

 しばらく、何か言いたそうな青年達と無言で見つめあった。

 一方と目が合う。彼は愛想の良い笑みを浮かべながら、小さく手を振って見せた。

 明るい赤み掛かった茶髪。それと同じ色の瞳を、人懐っこそうに眇めて笑う。それは無条件で、好感が持てる。

 ――ルカ(にぃ)みたいだ、と思った。この若者は、商人でもやっていけるのじゃないのだろうか。

 

「よう、嬢ちゃん。お疲れ様!」

「・・・・・・。」

 

 タバサもにっこりと、よりいっそう微笑んで応える。しかし、あえて会話はないまま進めようと思った。

 だから、無言のままだ。話せば、ぼろが出るだろうと踏んでいる。タバサは唇を引き結んだ。

 見た目は笑みの形に、見せてはいる。相手を油断させるためでもある。

 だが実際は、目標が定まったからだ。ここに来た目的を、タバサは忘れてはいない。

 

(問題は・・・オオカミさんを、『兄上』と呼んだこっちの無愛想な若造(・・)だ!)

 

 自分も彼に比べたらまぁ、同じくらい若輩者なのだろうが。それはこの際、置いておく事にした。

 要は気に入らないのである。

 女神様の御前で――。こうも偏見たっぷりで、申し訳ない。だが、間違いないと確信している。

 何を根拠にしているのかと訊かれたら・・・『双子の』に加えて『女の』勘でしかない所は女神様も呆れるだろうが、見捨てないでいただきたい。

 ・・・・・・何分、未熟なものですから。

 

(――弟。あんたでしょう、うちのララサを悩ましている(モン)は!)

 

 タバサは先ほどから視線を感じて、そちらに真向かうのだが――。そうすると、すぐさま弟の方は視線を外す。

 その割りに、タバサが視線を外した途端にじっと凝視してくる。

 声を掛けてくるでもなし、微笑み掛けてくるでもなしに。

 

(弟も目の色、ハチミツ色なんだね。オオカミさんと同じ。・・・・・・なんか悔しい)

 先ほどハチミツ・キャンディーと遜色無しと、大賛辞したばかりである。

 その舌の根の乾かぬうちに、けなす事などありえない。ちぇ、と内心舌打ちはしても。

 

 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★

 

 こうやって、オオカミの背越しに身を潜めるようにして、様子をみようと思った。

 

 さて、どう出るかな弟?そして、タバサ(わたし)よ?

 

 ララサなら、本当はこんな風に――。挑むような眼差しを向けたりなんて、しないのだが思わず地が出た。

 弟がかわそうとしたその瞳を、逃すものかとしっかと見据えてしまったのだ。

 

 視線が絡み合う。

 

 タバサはやや勝気な色を浮かべて、満面の笑みで迎え撃つ。

 

 沈黙の中、先に口火を切ったのは――。

 

「・・・・・・違うな。オマエは『ララサ』じゃないな。誰だ、オマエ?」

「・・・・・・。」

「え!?そうなのか?じゃあ嬢ちゃん、誰なワケ?」 

 

 それはこっちの台詞(セリフ)だよ。

 

 タバサは、笑み浮かべたままだ。

 



 ハニー・ハニー・キャンディー。


 これも、双子の父のご自慢の一品。


 さて。どうもお互い、『気に入らない』所は気が合っている(?)模様のタバサとウォレーンです。


・・・・・・バトル開始です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ