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★レシピ★ * 3 * 店じまい〜祈願・途中〜


 はい。一段落したところで、忘れちゃいけない感謝のお祈り。


タバサは神殿を目指して、広場を駆け抜けていきます。

 

 ――いいか。お前たち。必ず、毎日感謝のお祈りはかかすなよ!

 

 はぁい。  はぁーい。

 

 ――うん、うん。こうして広場に来たら最後に、祭壇に寄るんだぞ。

 

 何で、帰りなの?最初に『商売繁盛』をお願いした方が良くなぁい?

 

 ――早いうちはなぁ、お参りに行く人たちに菓子を売るんだよ!お参りは客足が引いてからさ

 

 あ!ララサ、見てっ!あっちでもお菓子売ってるよ! ほんとだぁ。買って〜。

 

 ―― ・・・・・・最後まで聞きなさい。お前たち・・・・・・。

 

 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★

 

 タバサはたったか、たったかと小走りに神殿へと向かった。

 

(帰る前にはご挨拶しないと!)

 

 ――今日も無事にお客さんたちに、喜んでもらえるような商いが出来ました。ありがとう・ありがとうございます・・・・・・。

 

 それは欠かした事のない、感謝の祈り。タバサもこうして神殿に、祈りをささげに来るのは久しぶりだ。それでも『お祈り』は毎晩眠りに着く前に、必ず執り行う儀式。

 

(なんだろう、ちょっとドキドキしてきた・・・・・・?)

 

 胸が何だか、苦しいような気がする。こうやって胸が高鳴るのは、あの厳かな雰囲気を思い出してのものだろうか。

 

 タバサはそう自分で結論付けると、納得した。そのまま小走りに、祭壇を目指して広場を横切っていく――。

 

 。・:。・。:・★・:。・☆・;。・★・:。・。:・。

 

 セピア色のカールした髪をなびかせて、広場を横切っていく少女――。その姿にチェイズがいち早く気が付いた。

 いや、声を上げたのはと言うべきか。彼が少女の存在に気がついたきっかけは、自分の隣に立つ上司の視線の先にあったからだ。

 

 少女はこの広場で菓子を商っている、売り子の『ララサ』だ。広場ではちょっとした有名人だ。

 その彼女自身の可愛らしい、見てくれのせいもあるが――まあ、色々な意味と、方面で。

 彼女に注目している者は多いと、チェイズは見ている。特に野郎どもが、熱い視線を送っている。

 

「お!嬢ちゃん発見!これから、祭壇に向かう模様」

 

 わざとらしく腰に手を当てて、右手は額に当ててひさしを作りながら言った。やや、報告口調なのも意識してのものだ。

 少女から隣の副隊長を務める、ウォレーンへと視線を向ける。チェイズなりに気を使ったつもりなのだが、上司からは睨まれた。

 

「・・・・・・・・・。」

「嬢ちゃん、発見。どうしますぅ、副・隊長殿?」

「――取りあえず、チェイズ。貴様を殴りたい」

「何だよ!ヒドイな、もう!」

 

 慌てて両手を小さく上げる。顔の横に、バンザイして見せたのだ。お手上げ――降参ですの意思表示だ。

 

「なあ。行こうぜ、ウォレーン?」

 

 チェイズはウォレーンとは同じ歳で、幼馴染だ。だから上司といえど、時折りは友人として呼び捨てる。

 必要と判断したならば。今がその時だ。

 

「・・・・・・オマエに言われるまでも無いさ」

「そうかよ。だったら、いいけどもさぁ。取りあえず、そのぶっちょうヅラどうにかしろよな。――嬢ちゃんにまた、びびられるだろう?女の子には笑顔!笑顔!」

 

 俺を見習えとばかりに、チェイズはにかっと笑って見せた。ウォレーンの表情が、より一層冷ややかなものとなる。

 

「――チェイズ」

「ん?」

「オマエこそ。そのにやけたツラ、どうにかしろ」

「か、かっわいくねえぇなぁ!オイ!」

 

 チェイズは叫んだ。が、あっさり背を向けられた。ウォレーンは吐き捨てると、歩き出した。神殿の方に向かって。

 

「オマエに可愛げがあるなどと思われた方が、人として終わりだ」

 

 なんだと、と言いながらチェイズもその後に続く。

 

「・・・・・・ついて来る・・・」

 

 ・・・・・・な、とウォレーンが言うよりも早く、チェイズは遮って断言した。

 

「いいや。ついて行くね!でなきゃ、見ちゃいられない事態になるだろうが!」

 

 チェイズはきっぱりと断言した。付いて行く。いざとなったら、俺がフォロー役、と。

 

「見てなければいいだろう。最初から」

「そう思う。我ながら。でも、鬱陶しいんだよ。その後、確実に落ち込んでるオマエと仕事する方の身にもなれ」

「――勝手にしろ」

「ハイハイ、なあんとでも!どうぞデスよ、まったくよぅ!」

 

 そんな男二人も、広場を横切って少女の後へと続く。不毛な会話を続けながら。

 傍目からは黒ずくめの長身の男達が、まさかそんな会話をしているとは予想も付かないだろう。

 

 そう思わず、チェイズは祈る。ましてや、自分達の腰には護衛団の証ともいえる――剣が下がっているのだから。

 

 ★ ☆ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ☆ ★

 

「・・・・・・」

 

 タバサは何とも言えない気持ちで、神殿の階段を上るかどうか迷っていた。

 

(・・・・・・何なんだろう?――行きたくない・・・ような気がする?)

 

 早いところ、感謝の祈りを捧げなければ、祭壇からは締め出されてしまう時刻だ。それなのに。

 

(もしかして、ララサ(・・・)かなぁ。この気持ち。ここで何かあったの?ねぇ、ララサ?)

 

 タバサは自分のものとして処理するには、説明の付かない思いに――。胸を押さえながら、ララサに問いかけた。

 


 

・・・何だか。言いようの無い動悸は、双子の・女の勘といったところでしょうか。


かなり『ララサ』は、名を知られている様子です。


ウォレーン・ロウニア。副隊長。愛想悪し、自覚あり


チェイズ・ロット。愛想良し。お節介。自覚あり。


・・・・・・一応、真面目な人達です。

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