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★レシピ★ * 30 * 祭典前のお祭り騒ぎ


すみません!


忘れ去られていたっておかしくない程のあきっぷり。


しかも、前回よりも更にキャラ過密。


 


 いらっしゃいませ!お菓子がご入用ですか?それともキャンディですか?


 ――ああ。ええと、その。そうだね、お勧めはあるかい?


 えと、コレなどは、いかがですか?おいしい上にちょっとお楽しみ付きの焼き菓子です。


 ――お楽しみ?


 あのですね~食べてみてからのお楽しみ!


 ――じゃあ、コレをもらおう。籠につめておみやげ用にしておくれ。


 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ 


 恥ずかしい。


 最大級に恥ずかしい。

 こんなに人から注目された事など無かったし、されるとも思わなかった。

 商人として、売り子としてお客さんたちから浴びる注目とはワケが違う!

 そうだ。お客さんたちは、商品を見ているものだからこそタバサはへっちゃらだったのだ。

(もう!オオカミさんは何だってこう、人目っていうものを考えてくれないんですか?)


 いついつまでも、こうやって黙りこくっている訳にもいかない。


 タバサはそろりと目蓋を持ち上げた。

 しろふわの毛並越しから、熱い視線の方を見る。

「!?」

 タバサは一気に目を見開いた。それと同時に膝立ちになる。


 (あれは・・・!?)


 見上げ、仰ぎ見たのは上空。

 何か光るものが、こちらを目指している。


 それは真っ白い子馬と、顔を布で覆った逞しい人影。

 そう確認できるほどまでに近付くよりも早く、それは強烈な存在感でもってしてタバサに訴えてきた。

 それでいて、馴染み深い気配に余計に混乱する。


 彼らは迷いなくタバサたちの頭上まで来て止まる。


 白い子馬は手の届かぬ上空で留まるが、その背の人影は飛び降りた。


 ひらり、と子馬から身を翻した人物は、その流れのまま腰元の剣を素早く抜きさる。


 それを両手で構えながら、彼は落ちてきた。


 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ 


 ガキィィイ!!――と今まで聞いた中で、最も不穏な衝撃音にタバサは思わず耳を塞ぐ。


 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★


「よぉ」


 ひ〜さ〜しーぶーりー?

 妙な節を付けてオオカミさんの伯父さま事、ギルとか言うおじさんは実に気軽に現れた人物に挨拶をした。

 そんな悠長な口調でいられる事が脅威である。

 何せ上から降ってきた一太刀を、こちらも同じくいつの間に構えたやら剣で難なく受け止めたのだ。

 しばらく双方押し合っていたが、ふり払うのも同時だった。

 お互いに距離を取るべく後ろに飛びながらも、会話は続く。


「よぉ、じゃねぇーだろ!ギル貴様」

「あー悪かった。不可抗力」

「一言で済ますな!オマエは人の娘を何だと思っている!!」


 タバサは身動き出来なかった。あまりに急な、その人物の登場に真っ白になるしかなかったのだ。

 今の発言からも察するに間違いなく父である。

 今ひとつ実感が湧かないのはその登場の仕方もさる事ながら、父が剣を手にしている事も大きかった。

 いつもは前掛けに左手には大なべ、右手にはしゃもじ――。

 もしくは泡だて器が父の最強装備のはずだと信じて疑わなかったから。


 呆然と立ちつくす。


 答えを、傍らのオオカミさんに求めようと視線を向けた。


 その一瞬後、タバサの脇を影が飛び出して行ったものの気配にも驚くしかなかった。

 それは黒いオオカミ。

 その新たに見たオオカミもギルへと威嚇しているようだ。

 ギルが大げさに天を見上げ、目元を覆いながら「オマエもか!!」と叫んでいるのが聞こえた。


 オオカミさんとはまた、別の漆黒の毛並。

 しかし、よく似ていると思った。その、気配が。

「オオカミさん?似てるみたい」

 ぽつりと思わず呟き漏らせば、傍らには自分と同じ顔があった。

 滑り込むように自分と、オオカミさんとの間に割り込んでしっかりとタバサの右手を取っているのは――。

「ララサ!?」

 タバサは素っ頓狂な声を上げて自分の片割れを見た。

 ララサが力強く頷く。

 その背に隠れてよく見えないが、オオカミさんは明らかに気まずそうだった。

 何というか。たじたじ、と表現するに相応しいようだ。

 どこか遠慮するように、一歩引いたのがその証拠だろう。

 おかげで、彼の様子がよく窺えた。

 耳も尻尾も伏せ気味で、珍しく視線も泳いでいる。


「帰ろう!タバサちゃん!迎えに来たの」

「う、うん」


 もちろん異論などあるはずも無い。

 だが思い切りよく頷くのも何だか気が引けた。

 曖昧に何とかといった感じで返事をする。

 何が何やらで事の状況がよく飲み込めないのだ。


(何故、ここに?どうやって?父さんもララサも。それにあの子馬にオオカミは?)


【待ってくれ、タバサ】

「待ちません!」

 縋るように訴えてきたオオカミさんに、素気無く言い放ったのはララサである。

【ララサ。すまないがまだ話は済んでいない。タバサ?】

「あの、わたし・・・」


 タバサは声が掠れた。


 視線が絡み合う。


 行かないでくれ、とオオカミさんが訴え乗せて煌かせる瞳はとても綺麗で。


(卑怯だよ、オオカミさん)


【タバサ!返事をくれないまま立ち去るなんて卑怯だとは思わないのか?】

「・・・・・・。」


 だ ~ か ~ ら ~ そ の 台 詞 そ の ま ま お 返 し い た し ま す !


 相変らず脱力させてくれる。

 タバサの責任感に加えて負けん気の強さに訴えているのだろうが、お門違いもいい所だ。

 今後一切ロウニア家とは関わらない方が良いに違いない。

 ふぅとため息ひとつ付くと、タバサはきっぱりと言い放つべく息を吸い込んだ。


「お断り、」

 いたします、と続くはずの言葉も突然遮られた。


「お嬢さん!!甥っ子がモノの言い方を知らなくてすまん!!見ちゃおれんぞ、ウォレス」

 びっくりした。その存在を忘れていたからだ。

【伯父上。割り込まないで下さい】

「割りこみたくもなるわ!何でオマエはそんなに高慢ちきな物言いしか知らないんだ?俺は、俺は情けないぞ!女の子にはそんな言い方しちゃ駄目だ!」

「ギル。余計な事言うな。タバサは連れて帰る。こんな夜更けまで連れまわしやがって、後で覚悟しろよ?そこのオオカミ兄弟共もだ!」

 言いながら父はギルの胸元を掴み、狼たちを睨む。


「そうですよ。おっさん。私らもいい加減、帰りましょうよー」

 眠いのであろうリゼが、あくびをかみ殺しつつ不機嫌そうに促がした。


「ええ~・・・。もう帰っちゃうの?タバサちゃんも、ララサちゃんも、リゼライさんも」

 危のうございます、と距離を置き、ダグレスの背に庇われていたディーナ嬢が寂しそうに訴えてきた。

 ””だそうだ。おまえら、もう少し残れ””

 さすがディーナ様命のダグレス。

 彼女の望み以外には何の配慮も無いらしい発言は、いっそ清々しいとタバサは感心してしまった。


「おお!ディーナ嬢がそう仰るのならばこのギルムード、いくらでも残りますぞ!」

「おっさんは早朝から稽古があるでしょ。歳、考えたらいかがです?もうそんなに無茶も出来ないでしょうが」

「うっせぇぞ!リゼ!!」

「何でそんな高慢ちきな言い方しかできないんですかねー?こちとら日常勤務に加えて、時間外労働にも付き合ってやってるのに。やってられないわ!」

 じゃ!とリゼはさっさと背を向けた。

 その翻ったローブの裾に縋ったのは、黒い獣のダグレスだった。


「放して」

 ””・・・・・・。””

「いいぞ、ダグレス!」

「おっさんは黙ってて」


 そんなやり取りが始まってしまった。

 それを横目で眺めつつ、タバサは自分の裾を引いた手に振り返った。

「タバサちゃんも、帰るの?」

 ディーナ嬢だ。

 美少女に上目使いで縋られて、思わずいいえと答えそうになった。

 言葉に詰まるタバサである。

(ええと。そのルゼ様にもご挨拶していないし、でも、もう遅い時間だし!第一このドレスお返ししていないし、ど・どうしようっ)


 あちこちで収拾が付かなくなったその時、空に澄んだいななきが響き渡った。

 一同、その上空を見上げた。


 少し離れた上空で様子を見守っていた子馬が、ゆっくりとタバサの目の前に降り立つ。


 たてがみは緩く波うつセピア色で、瞳はきらきら輝く紫水晶のような美しい子馬だった。


『ねぇ、タバサちゃん。タバサちゃんはどうしたいのかしら?』


 しゃらしゃらと細かな鈴が束で鳴るかのような声が、そう尋ねてきた。


『おうちに帰る?それとも、紅孔雀様のところでお呼ばれする?それとも・・・それとも、ねえ。乙女役を引き受けて一緒に神殿に来てくれる?私たちと一緒に』

「私たち?」

『ウォレスとウォレーン。ギルムードとリゼライ。それに、わたし』

「お馬さん?」

『そうよ、タバサちゃん』

 優しく頬にすり寄られて、タバサは子馬を抱きしめた。

『ララサちゃんも、どう?』


「おまえ、それは卑怯だぞ!」

『ルボルグは黙ってて。いつも二人といられるくせに。ずるいのはどっちよ!そんな事言われる覚えなんてないんだからね!』

「うわ。ルボルグ、尻にしかれてるな」

『ギルムードも黙ってて。後で巫女王様にご報告に上がるからね?』

 はい。黙ります!とばかりに、ぴたりと二人は仲良く口を閉じる。


 ディーナ嬢もさることながら、このお馬サマも最強に違いないとタバサは思った。


 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★


 はい。とてもつっこみたいところなんですけど〜?


 何か、こう。ナンカネェ?


 どうしたいんだって、選択を迫られてもですね・・・・・どうしろと?


 要は誰の手を取るのかと尋ねられているのだ。


 このお馬様にまたがって登場の、あくまで身内の『騎士さま』か。

 この黒オオカミを従えた同じく身内の『自分の片割れ』も含めて。

 赤い髪が魅力的な美少女参謀殿・・・と、その一味か。


 ハッキリ言って論外もいい所の、このオオカミさんのおじ様はまず真っ先に消去。

 その相棒と言ったら確実に怒るであろう、リゼさんは面白そうだから割と好きだが。


 全ての事の元凶とも言えるオオカミさんを筆頭にした、神殿の皆様方か。


 何やら選択肢に入れるのに、やたらと身体が強張るんですが。拒否反応ってモノでしょうかね?


【タバサ。俺の言い方が悪かった、すまない。君にどうしても引き受けて欲しくて。焦るあまり、乱暴だった。改めてお願いする。どうか春の乙女役を引き受けてくれないだろうか?】


 神妙に頭を下げ下げ、オオカミさんはやたらに素直に詫びてきた。

 それにもまたタバサの身体は強張った。


「俺からも甥っ子を頼むよ、お嬢さん」

「黙れ、ギルムード!いいや。駄目だ駄目だ駄目だ!タバサ、帰ろう。おいで!」

『ルボルグは黙っててよ!タバサちゃん、一緒にお祭りに参加しましょう?ララサちゃんも一緒に』

「お祭りの乙女役をタバサちゃんがやるなら、きっと楽しいでしょうねぇ。一緒に衣装を選びたいわ」

 ””それはいいですね、嬢様。タバサ、うんと言え。引き受けろ””

「もう!みんな好き勝手な事ばっかり!タバサちゃんは疲れているんだから、ちょっとは考えてあげて下さい。ウォレーンも何とか言ったらどうなの?」

【・・・・・・。】


(ええと?どうしたら?)


 途方にくれるタバサの肩に、孔雀が舞い降りた。ぽん、と軽く気遣うように。

 ヅゥオランだろうか。ヨウランだろうか。

 黙ったままの孔雀では、タバサには区別がつかない。


 ””タバサ。春の乙女って何?””


「うん。なんだろうねぇ」


 今さらだが、その一言に尽きる。

 もう体力も気力も限界だった。

 何も考えたくは無い気持でいっぱいだ。


「お嬢さん、愛されてるわねぇ」


 同情するわ、となぜかリゼに呟かれてしまったタバサである。




『何と申し上げていいやら。』


お久しぶりでございます。

どたばたラブコメデーが書きたいぞ、と思って始めたのですが。

まとまらないじゃ済まない。


この色んな人が集まって何かをしようとする時独特のまとまらなさは、体育祭とか文化祭とかの放課後の雰囲気でしょうかね。


みんなそれぞれ好き勝手言うからまとまらないのだ。


そこに一喝いれるのは誰でしょう?

がんばれ、ウォレス!

二人きりになりたいのなら!!


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