★レシピ★ * 28 * 皆が頷く最強の存在
予告通り(?)
お気に入りのコンビでお送りします!
――っというワケでもない。
微妙な二人。
よー元気か、がきんちょ?
――伯父上こそ。
しけた面構えしてるなぁ、オイ?
――そんなことは・・・・・・。
あるって。よし!飲みに行くか!いざ、ルシンダの店へ!
――伯父上。俺はまだ子供です!
知ってるよ?ははは。早く、大きくなりてぇ時期だよなぁ〜?
★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★
目の前で上がった閃光は火花だ。
ガキイィ!!
不快な破壊音と光の正体は、ぶつかり合う獣の一角とリゼの構えた刃物の衝撃だった。
まとわり付くかのような長いベールを翻して、リゼという女性は実に素早かった。
予告無く飛び出してきた、闇の塊の気配を察知していたのは明らか。
でなければ、獣に一突きされていたに違いあるまい。
それほどまでの跳躍力と、タバサとて身をもって実感済みである。
タバサは悲鳴を上げた。
この女性には傷ついて欲しくないと思ったし、また獣に傷つけて欲しくないとも思ったからだ。
「ダグレス様!」
””無事か、タバサ””
一角でリゼの刃を受けながら、ダグレスが紅い眼でタバサを見た。
ほんの一瞬の事だったが、このリゼライという女性は、実に抜け目が無いらしい。
そのわずかな隙を好機と捉えて見逃さなかった。
自分から柄を引くとそのまま身をひるがえして、ダグレスの首に一撃を喰らわせた。
それも身を返し様に、自分のベールを押さえていた額飾りを左手に構えて武器としたのだ。
「!!」
先ほど彼女の額で揺れていた紅い宝玉が、タバサがお揃いと例えた獣の紅い眼の真横で揺らめく。
””相変らず小賢しいな、シャグランスの!””
「アンタもね」
一本取られたダグレスが吠えた。心底悔しそうだ。ダグレスは首を前後に打ち振りながら、その場を蹄で蹴っている。
勢い良く大地が削られて行く。闇の中土煙が上がっているようだ。
奇襲をかわし、先手をとったというのにリゼの声は冷静だった。
対するダグレスが怒りも露わに唸り声を上げているというのに。
””小娘ごときが、我に敵うと思い上がるなよ!!””
押さえを失ったベールが、その咆哮にさらわれて行く。
途端に闇に浮かぶは、眩い金色だった。
美しい光の束だ。
俯きがちでベールに隠されていた眼差しも眩さが増している。彼女の闘争の現われなのか。 金の髪に負けない輝きを放っていた。
タバサは息を飲んで見守った。改めて思わずにはいられない。
(この女性も蜂蜜キャンディーに負けない・・・・・・。)
あのやわらかく、ひたと自分を見つめたあの眼差し。
自分勝手なオオカミを思い出したら胸が痛んだ。
そう。
あの眼差しは、ただ柔らかくあっただけではなかった。
強く、強く。
自分をを捕らえ続けていた、射抜くかのような眼差し。
逸らしても逸らしても、根気強く。
それを思ったら、タバサは訳も無く泣けてきた。
・。・ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★・。・
彼女の落ち着いた声音から、もっと大人びた風情を想像していたタバサである。
そんな彼女の見てくれが思いのほか、さして自分と変らぬ風だったのには驚いた。
それに改めてよく見ると、たいそう小柄だ。タバサよりも、頭一つ分は低いだろう。
タバサは目を見張る。
その華奢な身体で、ダグレスの一撃を受け止めたのだ。
にわかには信じ難いが、事実は事実だ。
それが彼女の備えた実力のほどなのだろう。
””我をみくびるか、小娘。いいだろう、思い知るがいい!””
「どうだか。アンタもいい加減、人を見くびるのやめたらどう?」
現 に 一 本 取 ら れ て い る じ ゃ な い の
この緊張感にあってさえ、からかうような口調はどこか艶かしさがあった。
こばかにするように、目の前の獣に歌うように囁く。
彼女の唇もまた、ダグレスの眼にも宝玉にも負けてはいない。
タバサは知らず、彼女のその唇に魅入っていた。
左手に構える額飾りの円形は、獣の一角を絡め取っていなすのに最適なのだろう。
右手の小刀の出番はその次。
彼女はきっとやり遂げる。いや・・・やり遂げるまで、仕掛け続けるだろう。
嫌でも感じ取れる決意が、リゼの眼差しにはあった。
少なくともタバサにはそう感じられた。
「ダグレス様!も、もう、いいでしょう!私は無事です!」
””孔雀ども。タバサから目を離すなよ””
ダグレスは頭を低く構えたままで唸った。
””いわれるまでもない””
””――ない””
孔雀たちの答えを待たずして、ダグレスの跳躍があった。
(なぜ!?とめられないもの、なの!?)
初めて見た二名のやり取りに、拭い去れない根深さを感じ取ってしまう。
理由は恐らく何だって良いのだ。
ダグレスにリゼ。この二名は決着を付けたがっている。
――例えその結果が、火を見るよりも明らかだとしても・・・・・・。
ダグレスは強い。
この場に居合わせた者達の中で一番に、だ。
タバサによるその見立ては変らない。そんな事、このリゼとて承知の上だろうに!
わかっていながら、臨むその姿勢が理解できない。だから叫んだ。
・。・ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ・。・
「!!」
ウ ォ レ ス !
タバサは孔雀たちに庇われながら、そう確かに叫んでいた。
「ウォレスだと?」
小さく唸ったのはギルムードだった。。
「おいおい。勘弁してくれ――っと、ったく!!」
・ガキィン!
とこちらでもまた、火花が散った。
・。・ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ・。・
タバサは身動き出来なかった。
目を背けかけたその一瞬後、タバサの脇を影が飛び出して行ったのだ。
まずそれに目を見張った。
影はダグレスに体当たりを食らわせた後、リゼにも体当たりを喰らわせた。そのまま華奢な彼女ごと跳んだ。
””何をする!!””
「ちょっと、何っ!?」
跳んだ先には、剣を構えたギルが立っていた。
リゼの身体は彼へと押し付けられる。ギルムードは片腕でリゼを抱きかかえると、自分の背後に回しこんで庇った。
右腕は剣を頭上高く構えて、飛び掛ってきたオオカミを難なく受け止めていたのだ。
彼に飛び掛っていった影は、間違いなくオオカミさんだった。
しかもこのギルとかいうおじさん。
最初は脱力したかのように呟いていたのに、だんだん声を嬉しそうに張り上げて行く。
「うわぁ、おいオマエ!本気かよ?本気なんだな?あー・・・めでたい・めでたいっと!」
【・・・・・・。】
「何とか言えよ!ウォレス!」
蹴りを入れるようにして退いたオオカミを物ともせず、ギルは質問を続ける。
顔は笑みを浮べており、声はやはり弾んだままだ。
対するオオカミさんは、ものすごく不機嫌だ。今にも噛み付きそうな勢いで吠えている。
タバサはこのおじさんの親しみこめた態度から、自然と推測した。
(この陽気なおじさん、オオカミさんの知り合い?)
【貴方こそ、何のつもりですか?こんな誘拐まがいの事まで!】
「いやぁ、ほんの手違いだ。目当てはそこのお嬢さんじゃねぇから!」
【手違い!?手違いで何てことをしてくれたのですか!タバサに何かあったらどう責任取るつもりで・・・・・・っ!】
「責任?喜んで取るだろ。ウォレス、オマエが」
【当たり前でしょう!っではなくて、貴方は一体何のつもりですか!?一般市民を巻き込んで!】
(その台詞!そっくりそのまま、オオカミさんに当てはまります!)
身勝手さも負けちゃいないのだが、このオオカミさんときたら自覚も無いようだ。相変らず。
(巻き込んだのは、アアタが一番最初にですよ?その認識は無いのですか?)
タバサは半ば呆れながら、この二名のやり取りを聞いていた。
どっと疲れた。もう何でも良いからいい加減、家に帰してくれ。と、願いながら。
「いやでも、結果としては上手く運んだみたいだ!でかした、リゼ!」
「は〜な〜せ〜!」
ギルはリゼを軽々抱き上げ『高い高い』をして、豪快に笑っている。そんなヒゲ面に、リゼの蹴りが入った。
「よしよし、リゼ。オマエ・・・後で覚えとけよ」
上司は足蹴にするなと、頬を引きつらせている。
「不必要に触る上司がどこにいますか。後で巫女王様に言いつけます」
対する部下も負けてはいない。
それでも彼女を下ろしてあげないのは、きっとその体勢が気に入っているからだろうか?
タバサは観察を続けた。
親子ほど歳の違う割りに、ずいぶん息の合っているように見える――上司と部下を。
・。・★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★・。・・。・
風が渡ってくる。
おぼろげに浮かぶ橋の輪郭の方からだった。
くべられた薪がはぜる。焚き火が大きく揺らめいて、その人影をも揺らした。
(いつの間に・・・ディーナ様!)
タバサはそう思ったが、誰一人彼女の登場に驚いた様子は無かった。
ギルは小さく『おぉ』と感嘆の声を漏らし、リゼは『ちぃっ!』と大きく舌打って迎える。
孔雀たちは嬉しそうに鳴き声を上げて、飛んでいった。
「お利口さんたち。ご苦労様」
””ディーナぁ、タバサいたよ!無事だった!””
””――無事、だった!””
えらい?えらい?と口々に尋ねる孔雀たちに、ディーナ嬢は『エライ・エライ』と首を撫でて応えてやる。
・。・ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ・。・
「ずいぶんとゴキゲンですのね、ギルムード殿?」
存分に孔雀たちを労ってやってから、ディーナ嬢はおもむろに視線を向けた。
「おおこれはディーナ嬢、待ちかねましたぞ。相変らずお美しいですな!」
恭しくギルムードは広げていた右手を、胸に押し当てた。
「何。これは私めの甥っ子でして。コイツの本気を見れて微笑ましく思っていたのですよ。子供の成長は早いものですな」
【伯父上!】
(オオカミさんの伯父さん?この、おじさんもロウニア家って事?)
タバサを彼の視線から庇うように立ちはだかっている、オオカミさんは何ともバツが悪そうに唸った。
オオカミさんの遠慮がちな視線に、タバサは思わず顔を背けてしまった。
自分でもわからない。衝動的に俯いたまま、まともに彼が見られなかった。
【タバサ・・・その、すまなかった。巻き込んで悪かった】
そんなタバサにオオカミが囁くように謝っても、応える事が出来なかった。
・。・ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ・。・
「やはりオオカミさんは、ギルムード殿の御身内でしたか。今日のこの騒ぎはロウニア家お二人の企みですか?」
「いやいや!違いますよ、ディーナ嬢。ほんの手違いが重なった上の、偶然です」
「タバサちゃんを巻き込んだのは、手違いですか?」
「ええ、そうですよ。――なぁ、リゼ?」
「あたくしめに振らないでクダサイ。それといい加減、手を放してクダサイ」
「俺たちディーナ嬢に用があったんだよなっ!な〜!リゼっ?」
うんと言え。
うんと言えば解放してやる。
言わぬのなら――。
そんな笑顔の脅迫である。
ぎゅうぅっと腰に巻きつく腕に力が込められ、リゼは身を捩って暴れ出した。
「いい加減にしろよ、おっさん!!」
「リ〜ゼ〜?俺たちの仲だろ!うんとひとつ頷けばいいだけだぞ〜?」
「誰がっ!」
ギルにうん、と頷くようにと無理やり頭を押さえつけられた格好で、リゼは暴れるのをやめない。
「まぁ、リゼライさん。そうなの?」
「ないわよ。アンタに用があるのはギル様よ。私は雇われただけ!だから仲とか言うな、心底気持ち悪いわ!」
「うっわ、リゼ。俺だって傷つくんだぞ?」
「抱きつくな〜離せ〜!!」
「駄目だ。オマエ、ダグレスにケンカ売るから」
「売って来たのはあちらが先です!あたくしはソレを買ったまで」
「そんなもの。売りつけられても返して来い。ってか、最初から買うな!俺だって買わんわ。ダグは強ぇの!最強だぞ?」
””何を言う。最強は””
ちらと紅い髪の少女を見て、ダグレスは言い切った。
””我が嬢様ぞ?””
「違いない」
誰もが頷いた。
『最強』の称号を受けても、ディーナ嬢はべつだん否定も肯定もしなかった。
ただニッコリと微笑みかける。
「それで、わたくしめにある用事とは何でしょう?ギルムード殿?」
『絡みは?』
身内に下読みしてもらいましたが。
・・・が〜★
『私だったら読み飛ばすね。こんな戦闘シーン。いいから、絡みはどこだよ?』
私にしてみたら充分に『絡み』デスヨ!!
男女の戦いのシーンはさ!
って、好みですよね〜・・・。
誰と誰が絡みかって?
そうです。
ダグレスとリゼライ。でしゃばりの獣とやり手の少女。
この二名も実はBA★のつく候補だったりします。
おいおい。しゅ、種族超えちゃってるよ。
(まぁ、そこら辺はいつか。)
後は。
ギルムードとリゼライ。――親子ほども歳の離れた上司と部下。
これもまたBA★・・・以下略。
「え?何?ちょっと、人並みの幸せのカケラすら、ワタシには用意されていないわけ?」
うん。君の相手は一般人はムリムリ★
大丈夫!どっちを選んでも『波乱万丈』を、お約束。
「どっちもいらんわ!!」
――(いつか)つづく。
【書いてみたらR指定確実でした★】
「余計にいらんわ!!」
――マジで書きたいです。本編終わってから。