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★レシピ★ * 24 * 危険手当を要求いたします!


仮タイトルは『追うか、追われるか』


おかしいな〜また、書き出しとは違う方向に・・・アレ?


タバサ、ピンチ。そこだけは、変らず。



 

 ――なぁにぃ?まだ、何か用?

 

 ・・・・・・その、今日でしばらく・・・ここには、これなくなるから。コレを

 

 ――タバサちゃんに渡せって?

 

 ああ。頼みたい。今までの無礼も詫びる。直接謝りたかったがもう、時間がない。・・・悪かった。伝えてくれ。

 

 ――・・・・・・どこ行くの?

 

 俺は神殿仕えが内定したから、警護隊の訓練が始まる。

 

 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ 

 

 くんくん、くんくん。短い息使いはせわしなく、タバサを何とするかを匂いから判断したいようだ。

 ふん・・・ふん・・・・・・――。同じくこちら側は気持ち慎重に、タバサを嗅ぎ分けている様子だった。

 

 どうやら獣様は『二頭』でいらっしゃる気配。

 

 左右で違う息使いが同時にタバサの肌を掠めて行く。時に頬を。腕を。爪先を。

 

(・・・・・・くすぐったい。何なんだろう?ヅゥォランにヨウランでも無さそうだし)

 二羽の孔雀たちは艶やかな羽根のはず。だが先ほどからタバサの感じるのは、毛布のような柔らかさと、湿った鼻先のような感触。

 タバサは重たい瞼を何とかこじ開けるように、持ち上げる事が出来た。薄目を開ける事に成功したタバサを、微かに灯るあかりが助ける。

 うっすらと見止めた姿に、タバサはなるべく身動きを悟られまいと息を詰めた。

 

 ――見えた。やはり二頭だった。前脚を寝台に預けて身を乗り出し、互い違いにタバサを窺っている。

 そうして時折り二頭同士はお互いの瞳を絡ませあって、何かを打ち合わせているようだった。

(何かやたら可愛らしい二頭だなぁ。真っ白ちゃんで・・・くるくるのほわほわの・ステキな毛並!)

 そうなのだ。今まで見てきた獣たちは皆凛々しく、狩をする肉食獣を思わせる体躯をしていた。

 その造りが毛並の上からでもわかるほどに、しなやかな筋肉がうかがい知れるような。対して今こうして様子を窺う獣たちは、どこかまろやかさが漂っている。

 その見てくれの可愛らしさもあろうが、どうも人に害を与えるようには到底思えない。

 先ほど向けられた敵意も、二頭はタバサには無用と判断したらしく、今は穏やかなものだ。

 声を掛けてみようか。そうタバサは思い始めていた。しかし、思うように身体が言う事を聞いてくれそうも無いので、大人しくするしかない。

 そんなタバサに気が付いているのか、いないのか。二頭は身を乗り出したまま、互いに頷きあったように見えた。

 互いに何かを確認しあった様子の二頭は、ほぼ同時にタバサに鼻っつらを押しあてられる。

(うぉうう!!)

 一方からはべろん、っと大胆に頬を舐め上げられた。もう一方からは・・・ぺろ、っと遠慮がちに舌先だけで突かれたのだ。

 タバサは眉根を寄せて心の中で、奇妙な叫び声を思わず上げていた。

 それを合図に二頭は申し合わせたように、タバサの身体の下に身を滑り込ませると軽々とその背に担ぎ上げられてしまった。

 もう一頭の方は、器用にタバサの身体が転げ落ちないように、鼻先で押しやってくれている。

(――・・・・・・え!?ちょ、ちょっと!ちょっとぉぉ、ど・どこに行くんですか?)

 手足をだらりと垂らしたままの体勢で、抗おうにも身を起こせない。そんな状態で立ち上がられては、余計に恐怖が募り行くに決まっているではないか!

 タバサは焦りから、じんわりと汗ばむ。それがまた寒気を覚えさせられていると思ったが、どうしようもなかった。

(えーっと、えーっと!?これは・・・まずい・まずい・やばい!!おーい!!おーい、オオカミさぁぁぁぁあああん!)

 助けて。なぜか、彼を頼る自分に一瞬ためらったが。それもすぐさま頭の隅に追いやった。

 自分を追い掛けて来てくれたらしい彼ならば、どこに攫われ行こうとも見つけてくれるのでは無かろうか。そもそも。こうなったこの状況は、彼が元凶じゃなかろうか。

(――おおい、こら!も〜こうなったら、もぉぉぉう!!危険手当も付けやがれ〜〜〜!!と叫んでやりたい。ってか、叫んでやる!ってぇ・・・叫んだら【春の乙女を引き受けてくれたんだね】とか何とか。言い出されそうで!それも腹が立つ〜〜!!)

 ここにはいない黒いオオカミさんに怒りをぶつけているうちに、獣は窓の方をみやって頷きあっているではないか。

 月明かりに導かれるように、一頭が先に窓枠に前脚を掛けて、身を乗り出している。警戒しているらしく、まん丸の瞳が心なしか鋭く見えた。

 縦に細長い耳をぴんと立てて、前に後ろに横に。自在に倒しながら音からも、様子を窺っているのが解った。

(どうしよう・・・もないけど。ああ〜嫌な予感)

 そう思った。次の瞬間――。獣は勢いを付けて、寝台を一蹴り。

(あぁぁぁぁ〜〜もぉう、やっぱりぃぃ!!)

 

 タバサは真っ白い獣の背に担がれながら、浮遊感に恐怖した。

 

 ――・・・ ウ ォ レ ス !

 

 なぜかその名を呼びながら、意識が遠のいていった。

 

 唇はわななくばかりで、そうそう彼の名を・・・うまく紡げはしなかったけれども。

 

 〜・★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★・〜

 

 彼の名は呪文。

 彼女が呼ぶならば、その場で即座に発動する。

 ウォレスは名を、少女の唇が紡ぐようにと仕掛けていたのだが。

 なかなかそう上手くいかなかったのは、彼女自身の防御本能が働いていたからだと推測する。

 

 それでも諦めることなく、根気強く。――訴え続けたのには意図がある。

 

 〜・★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★・〜

 

 ウ   ォ   レ   ス   !

 

【・・・・・・・・・・・・!】

 

 何やら胸の奥底に、閃くものがあった。ウォレスは立ち止まって、ダグレスから視線を外す。

 ――名を呼ばれた気がしたから。耳を澄ませて気配を探る。

 からかい、惑わすように先を駆けていたダグレスも立ち止まった。

 ””どうした、ロウニアの?もう、追いかけっこはオシマイか?””

【ダグレス――・・・館の警護はどうなっている?あの二羽の孔雀たちだけなのか?今ほどから気配が微妙に増えているのを、感じないか?そうやすやすと獣の侵入を許すのか、この家は!】

 ウォレスはダグレスの後を追いながら、館の中の造りを巡りつつタバサの気配を探っていたのだ。

 今は日も落ちきり回廊を闇が支配している。夜目の利く獣でもなければ、灯かりが必用だろう。

 しんと静まり返った石造りの回廊を響かせるのは、二頭の獣の息使いだけだった。時折りどこからか吹き込む、風が小さく唸るように通り抜けていく。

 ダグレスもウォレスも目には映らぬはずの、風の流れを視線で追った。

 

 ””・・・まぁな。嬢様のご意向だ。――この館の周りの土地全体に、ジャスリート家の結界が張り巡らせてある。それを突破できるものは、ある意味力があるモノ達だ。嬢様は・・・そやつらに用があるからな””

 【――・・・ダグレス、侵入者だ。タバサはどこだ?紅の孔雀にも、お目通し願いたい所だがそうも言っていられない。今・・・タバサに呼ばれた。急いでくれ!――頼むから】

 よほどだろう。あれほど拒まれていた『術句』にも成りうる、彼の名を呼ぶということは――。

 ウォレスは苦しげに訴えた。それこそ、全身で。

【頼む。タバサが・・・この家では気配が追いにくい。それが、ますます遠ざかって行くのだけはわかる】

 

 ””ふん””

 

 ダグレスはまるで物珍しいものでも眺めるように、目を細めてから頭を高い位置に持ち上げる。

 そのまま優雅にくるりと背を向けると、振り向かないまま駆け出していた。

 ””付いて来い!ロウニアの””

【ウォレスだ。――ダグレス】

 ””・・・・・・存じておるさ。オマエがタバサの言う『オオカミさん』とはな””

 ダグレスは何かを揶揄するように、くくっと可笑しそうに喉の奥で笑った。それが癪に障らないわけではなかったが、ウォレスは何も言い返さなかった。

【・・・・・・・・・・・・。】

 本当は癪に障るのは、何もダグレスの言動だけではないのだが。

 

 ―― ダ グ レ ス の 名 は す ぐ さ ま 呼 べ て 、 な ぜ ウ ォ レ ス と は 呼 べ な い ?

 

 そんな事を言い出したら最後。ダグレスに””タバサの側にいる資格なし””の烙印を押されるだろう。

 コイツの芝居じみた行いが、何を自分に解れと言うているのか・・・何て。

 ウォレスは、ダグレスの気まぐれを疑問に感じていた。コイツは頭がいい。二十歳そこそこの自分なんかよりも、よほど。

 そんなヤツがいちいち人間の少女に構うか?実際こうして構っている。

 そこに違和感を覚えた。コイツは気に入らない者は、存在からして無視するのだ。それはかつての自分も含まれている。

 それと。――それでいて気に入った者には、要らないほど世話焼きだという事も思い出していた。

 この館に付く頃にはいくらか頭も冷えて、ウォレスは冷静に考えられるようになっていた。

 要はダグレスはタバサを気に入ったのだ。その辺も大いに気に入らないウォレスは、気が気じゃあない。

 

 獣と見れば誰彼構わず魅了するかもしれない、あの少女――。

 ・・・・・・いや、獣身でない者なら余計に。ダグレスの話ではこの館の『嬢様』とやらにも、気に入られたようではないか。

 勘弁して頂きたい。大方――無防備なまでに無邪気な微笑を振りまいて、見る者の心を捕らえてしまったのだろう。

 それとも。世にも稀有な『獣耳』の少女同士、お互いの共通項から馬が合って意気投合したとか。

 タバサのことだから、それは大いにあり得るだろう。商人の彼女の仲間意識は強いのだ・・・・・・。

 彼女の大切なもの。それは自分の姉・・・家族。そして、商店街の仲間たち。訪れてくれるお客達。

 ウォレスは自信がない。そこに黒い影は見当たらない気がするから。

 じりじりと焦げ付くような得たいの知れない思いに、胸が焼け付くが堪えるのみだ。今は・・・忍耐の時・・・・・・。

 今ここで、ダグレスと言い争っている場合ではないのだ。――急がねば。

 

(【タバサ・・・俺の(・・)春の乙女】)

 

 それだけがウォレスを突き動かす。

 闇の中を疾駆する、闇色の獣が二頭。回廊を吹き抜ける風に立ち向かうように、二頭は一気に駆け抜けて行った。

 

 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★

 

「タバサちゃんっ!!?」

【・・・・・・・!?】

「あら」

「大変!!タバサちゃん、タバサぁ〜!!いませんか?たいへんです、フィルガ殿!」

「――ヅゥォラン!ヨウラン!侵入者及び、出て行った者の形跡は?」

 ””おらぬよ!””

 ””――ぬよ!””

 

 ””何事ですかな、嬢様?””

 

「ダグレス。いい所に来てくれました。タバサちゃんが居りません。ここに――休んでいたはずですのに」

 

 ウォレスとダグレスが駆けつけたのは、他者の侵入をそうは許さないと言う一室。館の中でも一際強力な結界の張り巡らせし、別名『孔雀のための鳥かご』部屋だという。

 

 どうりでウォレスにもなかなか気配が追えなかったはずだ。その施された術の完成度の高さに唸り声を上げてしまう。

「ダグレス。どう思いますか?タバサちゃんはここで眠っていました。一人でどこかに行けると思いますか?」

 ””思いませんな、嬢様””

 見れば窓は全開だった。そこから入り込む夜風が、嫌な汗を一層冷たく冷やしていくようだ。

「――そ・・・そんな!タバサちゃんっ、どうしよう!!」

 そんなやり取りを聞いていた、彼女の姉が泣き崩れてしまった。その側に狼狽しきった黒オオカミが、掛ける言葉も見つからないままに寄り添っている。孔雀たちも、同じく。

 ララサがどうやってここまで来たのかは、自分と同じ黒オオカミの姿を見やれば納得が行った。

(【ウォレーン・・・ララサ嬢に泣かれたか。すまん・・・二人とも】)

 ウォレス自身謝りたかったが、まだそれは先と状況に留まる。

 

 ””嬢様。状況をよく、順序立てて、ご説明下さい。タバサは一人でこの部屋に?””

「――ええ、そうよ。タバサちゃんが急に不安になったらしくて、泣き出してしまったの。だからね、お茶を飲んでもらったの。この・・・『少しだけ眠くなる』お薬を垂らしたから、落ち着いて。だからここで、横になってもらったのよ」

 嬢様。そう呼ばれた見事なまでの赤い髪の少女が、小さな瓶をテーブルから持ち上げて見せる。

 要は一服盛ったのだ・・・このお人は。

「・・・・・・ディーナさん・・・その薬瓶・・・どこから?」

「ん?フィルガ殿の書斎から、ダグレスが持ってきてくれました。――前に私にもフィルガ殿が使った事があるもので、即効性はある割りに副作用は無いから大丈夫って」

「ダグレス!!」

 ””お?我を責めるのか?元はといえばオマエが、これ以上悪しきことに使わぬようにだな””

 

 そんな風に脱線しかねない雰囲気を遮るように、ウォレスはしっかりと割り込んだ。

 

 【・・・ではタバサが一人で、どこかに行くのはまず不可能という事ですね?その薬効はどれくらいの時間効くのですか?】

 赤い髪の少女に尋ねる。少女は困ったように一瞬ウォレスを見返すと、すぐ傍らの青年を見上げた。彼女に代わって彼が答えを寄こす。

「長くても、約二刻」

【その薬を盛ってからどれくらい経ちましたか?】

 一服盛った本人に尋ねる。

「もうそろそろ、二刻経つはずです」

【では、もうそろそろ切れていてもおかしくないはずですね?】

「ええ。本当にすこぅしだけ、でしたから」

 

 ならば、勝算はある。

 

【すまないが・・・門番の孔雀たち。この館の案内を頼みたい。一羽は上空からの追跡を。もう一羽は俺と一緒に地上から。侵入者の有無が感知できるのならば、ぜひ同行願えぬだろうか?】

 ””・・・・・・いいだろう。承知した””

【有りがたい。恩に着る。――ウォレーン!ララサ嬢の元から離れるな。俺が朝方まで戻らぬ場合は、ララサ嬢と共に神殿に出向いてくれ。追跡を得意とする者達の要請を頼む】

【了解しました――兄・・・隊長】

【頼んだ。・・・ララサ、すまない。タバサは必ず無事に連れ帰るから、待っていて欲しい】

「・・・・・・っく・・・わかったわ」

 

 ウォレスは頷き、失礼とだけ告げるや否や、その場を一蹴り。――窓から飛び出して行った。

 

 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★

 

「――ねぇ、ダグレス」

 それまで泣きじゃくる少女を慰めていたルゼが立ち上がる。

 ””何だ?ルゼよ””

「彼。なかなかいいんじゃない?」

 そう言って、窓の方を扇で指し示した。


あ〜だいぶ間があきました。


身内から「更新はマメに!!」と、お叱り何だか励まし何だかのアドバイスを頂きました。


――仰る通りでございます!

仕事です。遊んでいたわけではありません。


そんなこんな「神殿まえ」にお付き合い下さる読者様。


本当にありがとうございます!!


イメージぶち壊しのこぼれ話やら、身内からのちょっかいやら、何やらをブログにのせちょリます。


http://ameblo.jp/mithunappa/


・・・みつなっぱのきもち。

で、検索して頂いても出ます〜。よろしかったら・・・お待ちしております。


★「ネット小説ランキング」様に登録させて頂いておりましたが、もう「小説家になろう」サイトからの登録は出来ないそうです★


今までありがとうございます、お世話になりました。残念ですが仕方ありませんね。

そこからいらっしゃって下さる読者様も多く、励みになりました。

まだまだ書き続けますので、よろしくお願いします。

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