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★レシピ★ * 10 * 候補に上がった乙女達


今日も一日、色々あったよ!くたびれた!な、タバサです。

 

 

 ――おまえ達だって、女の子なんだから。憧れたりしないのかい?

 

 ん〜ん、あんまり〜。わたしも、あんまり〜。

 

 ――そうなのかい?ああやってキレイに着飾ってみたいとは、思わないのかい?

 

 ・・・・・・キレイだとは思うから、見ているのは楽しいけど。動きにくそうだから、着たいとは思わない。

 

 ――・・・まぁ。まだ、二人とも幼いものな。でも、そのうち・・・きっと・・・・・・。

 

 きっと?

 

 ★ ☆ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ☆ ★

 

 夕飯も明日の準備も済ませ、タバサは自分の部屋でララサが来るのを待っていた。

 ベッドに背を預ける格好で、足を投げ出して。

 そうやってベッドに横にならないでいるから、タバサはかろうじて起きていられる状態だった。

 気を許すと、かくん、かくんと首が――。前に後ろに倒れてしまう。

(ララサまだかな。もう、私・・・眠たいよぉ・・・・・・)

 ハッキリ言って今日はくたびれた。体が、と言うよりも心の方が。

 いきなり。本当に何の説明も無く、突然色々言われたってねぇ?

 タバサはうとうとしながら、今一度オオカミさんの言葉を思い返す。彼が言わんとして射た事は何なのだろう?

 

 ・。:★:・。:☆:・。:☆:・。:★:・。:☆:・。:☆:・。★

 

【タバサ。君は能力(ちから)がある様だね。術の空間を感じとり、術者が誰かすぐに解った。しかも()の声がこうして聞こえてもいる】

 ――そりゃ、わかるよ。だってオオカミさんのまとう空気(・・・・・)が違うもん。そんなの、誰だって(・・・・)わかるよ。能力?そんな大そうなものじゃないでしょ?それに!私耳は悪くないもの。しゃべってたら聞こえて当然でしょう・・・・・・?

【そういう意味じゃないよ、タバサ。このオオカミの声は皆が皆、聞こえるわけではないのだよ】

 ――・・・・・・そうなの?どうして?皆には聞こえないの・・・・・・?寂しいね。

【さみしい?どうしてそんな風に思うんだ、タバサ?】

 お互いが――なんで、どうして、をぶつけあって話は全く見えてこなかった。そんなやり取り。

 外は夕闇が迫ってきていた。だからタバサは心底慌てた。遅くなるにも程度がある。

「ね、ね!オオカミさん。明日また、ゆっくり話さない?本当に帰らないと!ララサが心配してる・・・・・・」

【ああ。話そう。――また、夕刻前にここで(・・・)待っている】

 

 

 ・。:★:・。:☆:・。:☆:・。:★:・。:☆:。:☆:・。:★:・。

 

『神殿前広場・黒ずくめ集団対策!商い会議』――双子の本日の議題だ。ちなみにタバサが名づけた。ララサはしばらく沈黙してから「・・・・・・ちょっと、違うんじゃない」とだけ言った。

 

 ララサが用意してくれたミルクティーを受け取る。たぁっぷりのミルクがほとんどを占めるミルク・ティー。香り立つ湯気からくゆるのは――嗅ぎ慣れた優しいもの。

「あ。うれし。カモミラ入り?」

「そう。ハチミツも」

「・・・・・・ハチミツ・・・・・・・」

「?どうかした、タバサちゃん」

 ララサが隣に腰を下ろす。同じようにベッドにもたれ掛かり、足を投げ出しながらタバサを覗き込んだ。

「・・・ララサも知ってると思うけど。あのハチミツ色の瞳をした、兄弟。思い出したら地味にムカついてきた」

「うん、タバサちゃん。琥珀色の瞳の、あの兄弟ね(・・・・)。一体、何が・・・」

「聞いてよ〜聞いてよ〜!!あ〜も〜今日の私は偉かった!!」

「タバサちゃん、こぼれちゃう!熱いよ、気をつけて!」

 

 タバサは眠気を吹き飛ばして、昨日から今日にかけての経緯(いきさつ)を話した――。

 

 〜・★ ☆ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ☆ ★・〜

 

「――とか、なんとか。訳のわからないこと、たくさん言われたけど。ララサも『春の乙女』候補に上げられた、やっぱり?」

「・・・うん。ウォレーン、に。候補に上げるから受けて欲しいって」

(ウォレーン?)

 タバサはララサが、『弟』の名を呼び捨てたのに軽い違和感を覚えた。

 何だろう、この何となく――もやもやしたものが胸の辺りを占めるこの感覚は?

 タバサには上手い具合に表現する言葉も、態度も見つからなかった。だから、やり過ごすように何にも感じないフリをして、ララサに向き合うしかなかった。

「――へぇ〜。もしかして・・・アイツがララサにイジワルしているから、神殿前には行きたくなくなったの?大丈夫?何か、感じ悪かったからびっくりした。お兄さんの方は礼儀正しかったのに。オオカミだけど」

「え!?」

「ん?」

 ララサが見開いた目をタバサに向けた。

「――オオカミ?お兄さんの方が?」

「うん。真っ黒でツヤツヤのぴかぴかの毛並みがステキだったよ。間違いなく『兄上』・『隊長』って呼ばれていたよ」

「そうなの」

「しかし似てない兄弟だね。オオカミさんと人だもんね。――弟は背が高くて、目つきがちょっと鋭いかな。まぁ、護衛団所属だしね。眉も目もややつり上がり気味なせいか、顔立ちは凛々しい・・・方かな?それで、オオカミさんとお揃いのハチミツ色の瞳で、髪の毛は真っ黒だった。ちょっと長めで後ろで束ねていたよ。ここら辺は似てるね」

 

 ララサはただただ黙って、タバサが一生懸命言葉を探しながら説明するのを聴いていた。とても熱心に聴いてくれているので、タバサもあまり得意ではないがウォレーンを描写するようにと心がけながら、身振り手振りも交えながら話す。

 

「――ね、タバサちゃん。ウォレーンの話し方はどんな感じだったの?」

「えらそう。ぶっきらぼう。あんまり長くは話さないで、短く切り上げられた。『べつに』『いや』『一度にまくし立てるな』とだけしか、話していないよ!そういえば〜!!」

 タバサが思い出して再び悔しさから、大声を上げる。その横でララサが腕組みながら、妙に納得したように呟いた。

「うん。やっぱり、ウォレーンだわ。間違いなくそれは、ウォレーンだね」

「・・・・・・何てヤツなんだ」

 タバサは呆れたように呻いた。ララサと同じように、腕組む。

 

 〜・★ ☆ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ☆ ★・〜

 

 姉妹達はこれからどうして行こうか、兄弟の申し出はどうするか、商いはどう対処していこうか・・・・・・。

 ――から、久しぶりに会った幼馴染の兄弟や、担当区域が代わったおかげで久々に会うお得意様達の話や、昔の思い出話へと実にくるくる。――くるくる、くるくる話題を変えながら姉妹は話し込んだ。

 本題からそれつつ、行きつ戻りつはいつもの事だ。よって、まとまったようでいて、話は一向にまとまらず終わりが無い。

 

「あのさぁ。ララサ。この事は父さんにまだ、ナイショにしておく?」

「う〜〜〜ん。多分、父さん泣くほうに1000・ロートだよね」

「だぁよねぇ〜嫁に出すよな騒ぎだろうからさぁ。目に浮かぶ」

 ちなみに1000・ロートあれば、うちの焼き菓子が三種類詰め合わせ(全部で9個入り)がお求めいただけます。はい。おまけにキャンディーもお付けしますよ。と、営業トーク思考なタバサ。おそらくララサも。

 

 夜も更け――明日に備えて、もう寝ましょうか。となるのが、いつもの二人だった。そして、それは今夜もだ。

 

 まとまったようでいて、まとまらないままに対策本部はお開きにする事にした。

 続きはまた明日。――明日もあるのだ。何より対策本部長のタバサがもう、起きていられそうもない。

「タバサちゃん。あのね。あんまりオオカミさんに、べたべた引っ付かない方がいいよ、絶対」

 先にベッドもぐり込み、もう半分以上眠りに入っていたタバサに、ララサは囁きかける。声を潜めているのに、ずいぶん力強い響きにタバサは揺り起こされた。

「――ふぇ・・・?あ、うん。わかった。曲がりなりにも食べ物売ってるんだもんね。

 私達。オオカミさんに触れた手で、お菓子売ってたらお客さんが不安がるかもだもんね。

 だから。一日の終わり。商売が終わってからにするから。あと人目にも気をつけるよ」

「う、ん。まぁ。それもあるけど・・・。とにかく。必要以上にべたべたしない方がタバサちゃんのためだと思うな」

「――・・・・う、ん。わかったぁ〜おやすみね・・・・・・。」

 

 ★ ☆ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ☆ ★

 

「・・・・・・。」

 マズイ。ララサが思っていたよりもずっと。ずっとだ。タバサは『鈍い』。そっち方面だけ、異常に。なぜか。

 

(タバサちゃんは純粋だからなぁ。さすが私のかわいい妹。大事に出来ない人には、触れて欲しくない――)

 

 くぅくぅと寝息を立てて眠るタバサを見つめ下ろしながら、ララサは深いため息を吐いた。


――女子の話というものは、脈絡も無く、まとまりも無く、止めども無いものではないでしょうか。


それでいて、妙〜に核心に触れていたりする事も。


あるような。ないような。――気がします。

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