表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

資本の分散

 さて、最後に「資本の分散」について述べたいと思います。

 

 たとえば、一つの地域の人々が温泉に入りたいと考えたとします。

 従来型金融資本主義では、行政または大企業が莫大な予算で豪華な箱物を建設し、温泉保養施設を作り、市民がそこで温泉を楽しめるようにします。

 ところが私が提唱する新しい社会では、各家庭の庭に温泉を建設し、どこかの施設に行くのではなく、各人が自宅のマイ温泉を楽しむのです。

 そして市町村が温泉施設を建設しない分、市民が払う税金は安くなります。

 つまり資本の分散です。


 経済特区やコンパクトシティー構想というのも、悪い意味で従来型金融資本主義です。

 経済特区はある特定の地域を一つの産業に強い場所にするという発想です。

 特区の産業で生産された財サービスは全国市場または世界市場で消費されることを目指します。


 しかし私は基本的にすべての市町村はできるだけ生活必需物資の全産業を持たせるべきで、特定の産業に偏ることはすべきでないと考えます。

 また市町村内で生産された財サービスは、基本的に市町村内またはその近隣地域で消費される、地産地消を想定しています。


 コンパクトシティーは農地と住宅地、工業地帯、商業地をはっきり分け、農業、工業とも小規模なものを潰し、大規模なものだけを残すという発想です。

 しかし私は小規模農業、小規模工業を優先させ、農業、工業、商業、住宅を、ある程度一体とした地域を作るべきだと考えます。


 資本を分散させ、できるだけ小さい範囲内で生活必需物資の経済圏を完結させること、これが『空気や日光の所有権を主張する人々』からの搾取を免れる道です。


 *********************


 さて、あなたは友人たち五人と焼肉屋に飲みに行ったとします。あなたが幹事です。

 飲み会終了後、あなたはみんなからお金を徴収し、レジで支払いました。

「みなさんで召し上がってください」

 あなたはレジ係からチューイングガムを五枚もらいました。

 ところがあなたはみんなに分けず、一人でガムを全部食べてしまいました。

 後でこのことを知った友人たちはどんな反応を示すでしょう。 

 怒る人もいるかもしれませんが、大抵の人は、そこは幹事の役得と割り切って許してくれるのが大人の常識かもしれません。

 ところが飲み会か五人でなく、二十人だったらどうでしょう。

 あるいは百人、千人の参加者のイベントだったらどうでしょう。

 幹事のあなたが扱う金額は大きくなります。

 あなたが仮に悪い人だった場合、あなたがこっそり横領できる金額も大きくなります。

 額が大きくなるにつれ、会計の明細を示さないと文句を言う人が出てきます。

 私が言いたいのは、予算の少ない企画の方が問題が生じにくいということです。


 政治家(官僚も?)の汚職や横領のニュースを昔からよく目にします。

 政治家が私たちの税金を着服して温泉旅行に行ったというのも誉められた話ではありませんが、マスコミがただ単に悪い悪いと主張したところで、これからも似たような横領事件はいくらでも起こるでしょう。

 決して減ることはありません。

 政治家や官僚は、罰則を厳しくするなど、規則を変えて横領事件の再発防止を試みますが、全くの愚の骨頂に思えます。

 規則を変えるのではなく、予算そのものを減らすことで横領事件の被害総額を減らす、という発想の方が賢明です。

 下手な規則を作り、プロジェクトの担当者が会合でコーヒー一杯も公費で飲めないとなると、かえって息がつまりますし、そんなことでは担当者もいい仕事ができなくなるでしょう。

 何が違反で何が違反でないか、つきつめると曖昧なところがあります。

 そんなことより、予算を小さくすれば、何をしても大きな問題にはなりません。


 無駄な箱物の建設、無駄なイベントをやめれば無駄な予算は削減できます。

 削減した分の税金は私たちに返却してもらいましょう。

 これが資本の分散です。

 また不必要な組織はなくしたり、縮小したりすることが賢明です。

 これも資本の分散です。

 


 ***********


 いかがでしょうか。

 やや取り留めもない話になってしまいましたが、あなたはどう思いますか?

 私は自分の考えをあなたに押し付けるのではなく、これを機にあなたが世の中の仕組みについて考えてくれるきっかけになってくれれば、という思いでこのエッセーを執筆しました。

 私たち一人一人が上からの押し付けでなく、自分の頭で政治や経済や社会について考える。

 これこそが『空気と日光の所有権を主張する人々』の支配から免れるための最良の方策だと信じます。



                                           (完)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ