ボザ
ボザはひとり考えていました。
栗の木の下でポッシュに言われたことが、どうしても頭から離れなかったのです。
彼女は、今まで誰にも自分の絵に興味をもたれたことがありませんでした。ほめられたことすらありませんでした。
彼女の描く絵はとても個性的で、変わったものだったからです。おまけに、彼女の前住んでいた村には、もうひとりのすぐれた芸術家がいました。ボザは、だんだん自分がその芸術家よりすぐれていないのではないかと不安に思いました。
わたしもあのひとも、やっていることはまるっきりおんなじなのに、どうしてこんなことになるのかしら。まわりからほめられない芸術なんかに、何か意味があるのかしら? もしかしたら、いまわたしが夢中で取り組んでいることは、まるでムダなことなんじゃないかしら?
しかし、彼女は絵を描くことをやめられませんでした。何度も何度も、キャンバスを燃やそうとしました。何度も何度も、絵の具を捨てようとしました。
けれど、やっぱりだめでした。
どこかに、どこか遠くに、わたしが自由に絵を描ける場所はないのかしら?
彼女は一晩中考えたあげく、いままで自分がなれ親しんだ村をあとにしたのです。
「わたしの絵が見たいですって......」
ボザはぽつりと自分に言って聞かせました。
彼女にとって、それはとてもうれしい言葉のはずでした。しかし、なぜだか素直に喜ぶことができませんでした。
自分の描いた絵をかかげ、「これはわたしが描きました」と、胸を張って言えなくなっていたのです。
「どうせ、わかるはずないわ。あんなこどもに」