表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅する子ウサギ  作者: 生吹
第二章 クリスマス
7/10

ボザ

 ボザはひとり考えていました。

 栗の木の下でポッシュに言われたことが、どうしても頭から離れなかったのです。


 

 彼女は、今まで誰にも自分の絵に興味をもたれたことがありませんでした。ほめられたことすらありませんでした。

 彼女の描く絵はとても個性的で、変わったものだったからです。おまけに、彼女の前住んでいた村には、もうひとりのすぐれた芸術家がいました。ボザは、だんだん自分がその芸術家よりすぐれていないのではないかと不安に思いました。

 わたしもあのひとも、やっていることはまるっきりおんなじなのに、どうしてこんなことになるのかしら。まわりからほめられない芸術なんかに、何か意味があるのかしら? もしかしたら、いまわたしが夢中で取り組んでいることは、まるでムダなことなんじゃないかしら?

 しかし、彼女は絵を描くことをやめられませんでした。何度も何度も、キャンバスを燃やそうとしました。何度も何度も、絵の具を捨てようとしました。

 けれど、やっぱりだめでした。

 どこかに、どこか遠くに、わたしが自由に絵を描ける場所はないのかしら?

 彼女は一晩中考えたあげく、いままで自分がなれ親しんだ村をあとにしたのです。



「わたしの絵が見たいですって......」


 ボザはぽつりと自分に言って聞かせました。

 彼女にとって、それはとてもうれしい言葉のはずでした。しかし、なぜだか素直に喜ぶことができませんでした。

 自分の描いた絵をかかげ、「これはわたしが描きました」と、胸を張って言えなくなっていたのです。


「どうせ、わかるはずないわ。あんなこどもに」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ