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魔王と少女の物語  作者: 春
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魔王と少女の気持ち

街を散策していると突然リーシャの足が止まった。


「どうしたリーシャ」


「・・・・・・」


指差す方を見ると山があった。


「山に行きたいのか?」


―――コクリ―――


山か・・・。


懐かしいな。


昔は人間の街を侵略する時や戦争する際はよく山に布陣したな。


それで私が先陣をきって突っ込むと、リュードによく怒られたな。


「・・・・・・」


裾を引っ張られた。


「・・・そうだな。行くとするか」


―――コクコク―――


魔王とリーシャは山に行くことにした。





「・・・・・・」


「もう少しだ。まだ歩けるか」


―――コクリ―――


頷いてはいるが、人間の子供には少々きつかったか。


余の歩幅に合わせてよく付いてきたものだ。


「頂上に着いたら休憩しよう」


「・・・・・・」


「余が疲れたのだ。いいだろう」


「・・・・・・」


―――コクリ―――


「では行くぞ」


「・・・・・・」





「空気がうまいな」


あの頃の時には感じなかったことだ。


今思えば、当時は戦う事しか考えていなかったな。


一日でも早く魔族による国の統一。


今でもその気持ちは変わらん。


だが少し疲れた。


だから今ここにいる。


・・・こうやって休暇を取っているとわかるな。


余には・・・余裕がなかったんだ。


「・・・・・・」


「どうした?」


姿が見えないと思ったら・・・。


昨日みたいにぬしに出会ったのかと思った。


「・・・・・・」


「動きがおかしいぞ」


山登りで疲れたかのか?


それとも怪我か?


怪我なら治癒魔法で治せる。


「・・・・・・」


後ろに何か持ってるな。


「リーシャ何を持っている」


「・・・・・・」


「見せてみろ」


「・・・・・・」


「どうした。見せられないn」


「・・・・・・」


頭に何を乗っけたんだ。


帽子か?


頭に乗っている物を取り外した。


「・・・これは」


花の冠か。


「お前が作ったのか?」


「・・・・・・」


―――コクリ―――


恥ずかしそうに頷いてからに。


冠か・・・。


王の象徴。


威厳・威信・威圧・優雅・財力が入り混じっている。


だが、この花の冠にはまったく感じない。


同じ冠なのに、感じるのは。


優しさ・温もり・生命・愛・平和を感じる。


ここまで違うのか・・・。


「リーシャ」


「・・・・・・」


「ありがとう。褒美は何がいい」


「・・・・・・」


リーシャは頭を差し出した。


「・・・これか?」


リーシャの頭を撫でてやった。


「・・・・・・」


嬉しそうに笑った。


「・・・そうだ。リーシャ」


「・・・・・・」


「これだけじゃたりん。褒美をやる」


―――フルフル―――


「安心しろお前も気に入る」


「・・・・・・」


「見てろ」


魔王は立ち上がり詠唱を唱え始めた。


「これでいい」


「・・・・・・」


「すぐにわかる」


「・・・・・・」


目の前に妖精が現れた。


「どうだ。驚いたか?」


―――コクコク―――


「この者はお前の従者だ」


妖精はリーシャの肩に乗り笑っていた。


「こやつもリーシャの事が気に入ったみたいだな。仲良くしろ」


―――コクリ―――


リーシャは妖精と一緒に遊び始めた。


「もう少し登ってみるか」


魔王は崖の方まで歩いた。


「・・・いい景色だ」


ここからなら街全体が見渡せるな。


それにここまで来るのに一本道だ。


余だったらここに布陣するな。


真っ赤に燃え上がる街。


さぞ美しいんだろうな。


この目で見られないのが残念だ。


この街も後四日か。


「・・・・・・」


「どうした」


余の裾を握って引っ張ってるな。


―――フルフル―――


「何かあったのか?」


目を瞑って必死になるとは。


怖いものでも見たのか。


もしくはまた襲われそうになったか。


だが、人の気配も獣の気配も感じない。


「妖精。なぜリーシャは恐れている」


妖精は魔王の耳元で囁いた。


「・・・・・・愚か者」


リーシャの頭を撫でてやった。


「余が飛び降りると思ったのか」


―――コクリ―――


「安心しろ。この程度の高さから落ちても余は無傷だ。死ぬことは絶対ない」


「・・・・・・」


―――フルフル―――


「なぜ泣く」


―――フルフル―――


わからん。


リーシャはなぜ泣いている。


余は死なないと言ったはずだ。


なのになぜ涙を流す。


「妖精。わかるか」


妖精はリーシャの頭に手を当てた後、魔王耳元で囁いた。


「・・・・・・なるほど」


―――フルフル―――


魔王はリーシャの背丈に合わせてしゃがんだ。


そして、抱きしめた。


「安心しろ。リーシャは余の従者だ。離れるはずないだろう」


「・・・・・・」


「せっかくの可愛い顔が台無しだ。顔を向けろ」


「・・・・・・」


顔を向けたリーシャの顔を布で優しく拭いてやった。


「帰るぞ」


―――コクリ―――


魔王とリーシャと妖精は山を下りた。





「お帰りなさい」


「うむ。戻った」


宿に帰ると女将が出迎えてくれた。


「どうかしたんですかマオ様」


「何がだ」


「お連れさん後ろで寝ていますが」


「・・・山に行ってな。はしゃぎすぎて途中で寝てしまった」


「そうだったんですか。楽しまれたのですね」


「満喫した」


「ところで、その小さな方はお連れさんですか?」


「ああ。私の連れだ。よろしいか」


「ええ。結構ですよ」


「では、部屋に戻る」


借りている部屋に戻りリーシャをそっとベッドに寝かしつけた。


「・・・わからんな」


なぜあの時リーシャは泣いた。


余は死なないと言ったら安心しなかった。


だが、離れないと言ったら安心した。


なぜだ?


どちらも余がいることに変わりがないのに・・・。


どこに違いがある。


まさかな。


魔王である余が悩むとはな。


「人間とはまったく不思議な生き物だ」



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