小さな追跡者
「・・・愚かな」
男は地面に倒れている。
「うむ。運動をしたら腹が減ったな。さて次はどれを―――」
―――クイクイ―――
裾が引っ張られる感じがした。
「ん?」
「・・・・・・」
視線を下に下ろすと、先ほどの子供が引っ張っていた。
「何だ。まだいたのか?」
「・・・・・・」
「かたちはどうあれ、お前を助けたことになったな。よかったな」
「・・・・・・」
「お前は自由だ。どこへでも行くがいい」
「・・・・・・」
魔王は人混みの中を歩き始めた。
「亭主。これをくれ」
「まいど。嬢ちゃん見てたよさっきの。いやー強いね!何か武術でもやってたのかい?」
「・・・まあな」
「嬢ちゃんぐらい強かったら魔王も倒せそうだな」
「(その魔王が余なんだがな)」
「はい。お待ちどうさん!それでその子には?」
「その子?」
「ああ。隣にいる子」
「隣?」
そう言われ隣を見ると
「・・・・・・」
また、先ほどの子供がいた。
「・・・知らんな。連れでもない」
「・・・・・・」
「そうかい?その子ずっと嬢ちゃんの事見ているが・・・」
「知らんな。金はここにおいて置くぞ」
亭主にそう言い店から離れた。
なぜついて来ている?
後ろを振り返る。
「・・・・・・」
子供は後をついて来ていた。
少し歩く速度を速める。
後ろから足音が聞こえる。
さらに速める。
まだついて来る。
「・・・仕方がない」
魔王は走り始めた。