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味のない蜜  作者: megu
7/10

雨音

―第7話―



私はその日、1日中上の空だったと思う。今朝の出来事が色々とショックで、何も手につかなかった。


何となく授業を受け、何となく1日が終わった。


学校を出ると、予報では快晴の筈なのに豪雨となっていた。まるで、私の心情をそのまま表したようだ。


「すごい雨だね…」


「うん…」


千穂と下駄箱の前で雨の様子を見ながら話していた。


「ひかる。あんた傘持ってないんじゃないの?」


「うん…持ってない」


「私、折り畳み傘持ってるから一緒に入ってく?」


そう言って、千穂はカバンの中から折り畳み傘を取り出した。


「少し小さいけど…」


「ごめん、いい…」


「えっ…でも…」


「家まで走ってくからいいよ。ありがとう」


「…あんたが平気ならいいけど…」


千穂が心配している。それは分かっている。


「じゃあ、また明日」


「うん…気をつけてねひかる」


けど…今は1人になりたかった。それくらいに、色々な事がどうでもいい。


雨に濡れながら、特に家路を急ぐこともなく、トボトボと歩いていた。


虚しい…そして惨めな気分だ。一ノ江くんに拒絶された事も辛いけれど、あの時一ノ江くんはクラスの全員から白い目で見られていた。


私が、明彦くんの忠告を無視したせいで…私のせいで、一ノ江くんを再び傷付けてしまった。一ノ江くんを悪者にしてしまった。


私は…一ノ江くんを傷付けた幼なじみの彼女と何一つ変わらない。私は一体何してるんだろう。


…いつしか歩みを止め、私はずぶ濡れの道路に崩れ落ちた。濡れたアスファルトが、異様に冷たい。


雨は一層強くなり、民家の屋根を雨粒が叩き、けたたましい音を発している。


このまま消えてしまいたいとは、良く言ったものだ。


私は雨に打たれながら、声も出さずに静かに泣いた。

自分が嫌になる。今こうしているのも、結局私が一ノ江くんを一方的に好きなためだけなのだから…


「私は…」


雨音にかき消されそうな声で言う。


「私は自分の事ばっかりだ…」


うつ向いて、雨に濡れた顔を涙で更に濡らして…

とにかく自分を呪った。


と、急に雨が止んだ気がした。誰かの気配を感じる。

顔を上げると、そこには私が片想い中の彼がいた。


「一ノ江くん…」


「傘がないなら誰かに言えばいいのに」


口調は無機質だが、一ノ江くんは私を自分の傘に入れてくれた。


「ビショビショだね…」


「…」


顔をまともに見れない…あんな事があった後では当然か。


一ノ江くんは、暫く考え込んだ後、こう言った。


「仕方ない…一回僕の家に来なよ」


「ええ!?」


私は驚愕した。今彼は何と言った?もう一度聞いてみよう。


「いいいいいい今、ぼぼぼぼぼ僕の家に来いって言った!?」


たどたどしい口調で尋ねる私に、彼は涼しい顔で答える。


「そうだよ。だって君、ビショビショだもん。このまま帰したら風邪引いちゃうよ」


…なるほど。理に適っている。…ってそうじゃない!!


「い、いいの?迷惑じゃない?」


「大丈夫だよ。このまま放っておく方が気分悪いし」


とりあえず私は、彼のお言葉に甘える事にした。


それにしても、この人の挙動は本当に読めない…



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