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味のない蜜  作者: megu
4/10

悲しく見えて…

―第4話―



休日明けの月曜日、私は少し早めに学校に来た。特に理由があった訳ではないけれど、強いて言うなら一ノ江くんに早く会いたかったからであろう。


先日、彼から感じた違和感が頭から離れず、正直いても立ってもいられなかったのである。


しかし、さすがに早すぎたのか、彼は教室には居なかった。ただ、千穂が既に教室に居て、私に話しかけて来た。


一ノ江くんと街へ行ったことは彼女も知っている。私たちがどうなったのか気になり、早く来すぎてしまったのだと言う。


教室には、私と千穂を含めてまだ数人しか来ておらず、HRまではまだ30分以上ある。


千穂は早速、休日の私と一ノ江くんの模様について質問してきた。


「で?どんな感じだった?」


「普通に街を回って…お店とか行ったよ」


私は、休日の出来事をなるべく簡潔に話した。というより、簡潔に話さざるを得なかった。


脳裏には再び、あの淡白なやり取りが甦る。千穂はそれを、「ふーん」といった感じで聞いていた。


「あれ?それ何?」


千穂は、私がカバンに付けているキーホルダーを目にした。


これは、休日、一ノ江くんに買ってもらった物である。携帯に付けたらいいと言われたのだが、何となくカバンに付けてしまった。


まあ、よくよく考えれば携帯に付けると当たって傷付く可能性があったので、この方が良いだろう。


とりあえずこの事を千穂に話すと、彼女は顔をー輝かせた。


「何よ~…上手くいってるじゃん」


「そうかな?」


私は、いまいちピンと来ないといった具合に首を傾げる。千穂はそれにこう答える。


「そうだよ。だって告白するまではほとんど会話もしてなかったのに、デートに誘われたり、プレゼント買ってもらったり…どう考えても良好じゃない」


「でも、これはあくまで、チョコのお返しに、って事だと思うよ。」


私は、千穂の返答に返す刀でこう言った。


「…随分と疑心暗鬼だね。あんたの一ノ江くんに対しての惚れ具合を考えれば、もっと喜んでも良さそうな

もんだけど…」


「私もそう思うよ…」


「?」


私が感じた違和感…。一ノ江くんは話し方に感情がなく、表情も乏しい。


けど、決して冷たいだとか、意地悪な訳ではない。これだけならば、人との接し方が極端に不器用なだけなのかもしれない。


そういう人ならば、それほど珍しくはない。彼の特異な点は、男子とは普通に話していることから、単純に人付き合いが苦手なのではなく、女子にたいして奥手ということが考えられる。


ただ、こういったタイプの人間も、それほど珍しくはない。


私が言いたいのは、彼にはもっと複雑な事情がある気がしてならないという事だ。


私は最初、彼は元来、あんな喋り方なんだと思っていた。けど、1日一緒に過ごしてみて、そうではないような気がしてきたのだ。


彼は確かに、感情も表情も、人より欠如しているように思える。ただ…どこか悲しく見えた。


何かを…抱え込んで押し殺そうとしているように…


考えている私のところに、1人の男子が近付いてきた。彼は明彦くん。一ノ江くんとよく一緒にいる男友達である。


「おはよう明彦くん!!」


人懐っこい千穂が元気よく挨拶する。しかし彼は、千穂には目もくれずに、私に話しかけてきた。


「笹川さん、あんた一ノ江に告ったんだって?」


「あ…うん…」


私はオドオドしながらも頷く。すると…


「悪いことは言わない。あいつはやめた方がいい」


「!!?」


突然の理不尽な要求に、私は言葉を失ってしまう。


「いきなり何を言い出すの?」


千穂がすかさず問いただす。が、その質問には答えず、彼は「それだけ言っておくから」と、その場を去っていった。


「…」


私は、開いた口が塞がらなかった。


「何なのよあれ…」


千穂は不平をこぼしながら私に、


「大丈夫だよ。気にすることないって。ひょっとしたら明彦のやつ、ひかるの事が好きで嫉妬してるのかもしれないよ」


と、軽口を織り混ぜながら励ましかけてくれた。


でも、明彦くんの顔は真剣だった。千穂が言っているように嫉妬しているものとも違う。


「明彦くん、教室から出てったよね?ちょっと話してくる」


「ちょ…あんまり関わらない方がいいよ」


千穂の制止を振り払い、私は明彦くんのあとを追った。ひょっとして彼なら、一ノ江くんの事を何か知っているかもしれないと思ったからだ。


明彦くんに追い付くと、当然、先ほどの言葉の意味を伺った。


「明彦くん…「一ノ江くんはやめた方がいい」ってどういう事?」


すると明彦くんは、ばつが悪そうに答えた。


「ごめん…あんな言い方して悪かった。でも、このままじゃ良くないと思ったんだ。あんたにとっても…一ノ江にとっても…」


「…何でそんな…」


「あいつの性格はもう知っているね?」


「うん…」


私は、この辺りから一ノ江くんの過去に何かがあった事を悟った。


「あいつは、根っからあんなに無愛想だった訳じゃないんだ…」


「…何かあったんだね?」


私の問いに、彼は無言で頷く。


「あいつは…」


そしてゆっくりと語りだした。


「あいつは「良い人」すぎたんだ」


とても意味深な言葉とともに…


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