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味のない蜜  作者: megu
3/10

休日のひととき

― 第3話―

土曜日の午前11時、場所は駅前で。待ち合わせの

内容はこうである。私は約束の10分前に待ち合わせ場所に到着したが、彼は既にそこにいた。


「やあ」


「ごめん…待った?」


「全然。今来たところだよ」


そのやり取りはさながら恋人同士のよう。実際は告白して一週間も立っていないのだが…


「どこ行こうか」


と、彼はいつもの淡白な口調で私に言う。最早この

無感情な言葉も聞き慣れてしまった。私は、「一ノ江くんが決めていいよ」と答える。


「じゃあ、僕がよく行くお店でいい?」


「いいよ」


私は少し微笑んでそう答えた。


「行こうか」


こうして、私たちは「一ノ江くんがよく行くお店」に

向かった。街は家族連れやカップルでにぎわっている。

休日なのに加えて、天気もよく、絶好の行楽日和だった。


大通りから脇道に逸れ、小さな雑貨店にやって来た。どうやらここが一ノ江くんの行きつけのお店らしい。


「ここ?」


「そうだよ」


彼はそう言うと、店内へと入っていく。私も一ノ江くんに続いて店内へ…


「いらっしゃいませ」


店員が優しい声で出迎える。内装は簡素ながらもどこか懐かしいような、ホッとするような雰囲気である。


彼は店内のアクセサリーを扱うコーナーに、私を案内した。


「この間のお礼に、好きなのを1つ買ってあげるよ。」


「えっ…そんなの悪いよ…」


「このくらいの事はさせてよ」


どうやら彼は、根は親切なようだ。いや、前にも感じた事だけれども、本来ならこの状況はとても喜ぶべき

ことなのである。


しかし、以前から好きだった気持ちと、バレンタインデーの時に受けた衝撃とがごっちゃになり、複雑な気分になっていた。


「い…一ノ江くんが選んでよ」


「…君が欲しいのでないと意味がないんだけど…」



暫し、気まずい沈黙がながれる。告白したあの日、彼が返答をするまでの長い一瞬にさも似たりだ。


「仕方ない…君がそう言うなら…」


一ノ江くんは軽くため息をつきながら言うと、1つのキーホルダーを手に取った。何やら小さな宝石のような物がついている。


小さいながらも緻密な加工が施されたその石は、綺麗な青色に輝いていた。


「綺麗…」


「女の子の好みはよく分からないけど、これなんか良いんじゃないの?携帯につけても良さそうだし」


どうやら彼いわく、何となくな感じで決めたらしい。それにしては、やけに迷いなくこの石を手にしたようにも見えたけど…。


結局私はその石を買ってもらった。


「ありがとうね。一ノ江くん」


「いいよ。お礼するのは当たり前の事だし」


と、やはり淡白な口調で答える。


その後は特に当てもなく街を周り、たわいもない話をした。好きな人との初デート、しかも向こうからのお誘いだというのに、やはりどこか味気なかった。


それと同時に、徐々に彼に違和感を感じるようになっていた。告白した時のことを考えれば、何を今さらと思うかもしれない。


だが、言葉では言い表せないが、何かこう…最初に話した時とは微妙に雰囲気が違うような気がする。


好意的になった、という事でもないが…とにかく、よく分からない。何かモヤモヤする。


夕方、それぞれの帰路につく。帰り道でも、私は彼の違和感が頭から離れなかった。


ちなみに、彼が買ってくれた宝石を調べてみると、

トルマリンという物だった。宝石言葉は、「健やかな愛」。


彼がこの事を知っていたのかは分からない。


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