それで充分…
―第10話―
私と一ノ江くんは、紆余曲折あって付き合い始めた。
本当はこの一行で済んだような話である。
あれから、私達が付き合い始めた事はクラスの皆に知れ渡り、皆の注目の的となった。そして…
「ひかる、あんた何組だった?」
「私は1組だよ」
「うわ~…残念。私3組だよ」
新学期となり、私達は2年生に進級した。千穂は、私とクラスが違う事に不満げ。
「千穂、もう私は大丈夫だよ」
「はぁ~…ひかるも遂に一人立ちする時が来たか…」
「そんな大袈裟な…」
それにしても、千穂には世話になったと思う。最終的な判断は自分でしたけど、私がくじけそうな時、千穂はいつもそばで話を聞いてくれた。本当に感謝している。
「ありがとうね千穂」
「いいのよお礼なんて」
「千穂も早く好い人見つけなよ」
「何それ嫌味?」
「ちっ…違うよ…」
「もう…あ、そう言えば、一ノ江くんは何組なの?」
「一ノ江くんは…」
と言おうとした時、私は後ろから一ノ江くんに声をかけられた。
「ひかる」
「一ノ江くん!!」
「ひかるも1組だったんだね。また同じクラスで嬉しいよ」
「うん!!また1年よろしくね!!」
「何よ~…あんたら何だかんだ言ってラブラブじゃない」
「えへへ…」
千穂の冷やかしに、私はだらしなく笑う。一ノ江くんも声に出してこそいないが、かすかに笑っていた。
「さあ、そろそろ始業式ね」
「うん。先生に言われる前に準備しとこうか」
私達は、体育館に入る準備を始めた。
「一ノ江」
「明彦…君は2組か…」
「ああ。お前は彼女と同クラみたいだな」
「うん…」
「おめでとう一ノ江」
「ありがとう…明彦にも世話かけたね」
「俺は別に何もしてねえよ」
「…」
「一ノ江くん!早く行こう」
「今行く」
「じゅあな」
「うん…」
一ノ江くんは、明彦くんから遠ざかり、私の所へとやって来た。私は、何を話していたのか聞いたが、何でもないとはぐらかされてしまった。
ただ、一瞬振り返ってみると明彦くんはまだその場にいて、その表情は、どこか寂しげながら親友の門出を祝福するようなものであった。
さて、長々と語っていても仕方ないので、とりあえずこの物語に区切りをつけるとしよう。
ただ、これだけは言っておきたい。
一ノ江くんと一回だけ交わしたキスは、触れる程度の微かなものであり、そして…
少しだけ甘い味がした。今の私には、それで充分…
〔終わり〕
どうもmeguです。初投稿でしたが、いかがだったでしょうか。「味のない蜜」って言いながら充分味ありましたね。妄想全開ですみません(笑)
今度短編を書こうかと思います。またの機会までさよなら~




